Messiah
A wing of the death is a thing to lose
─あれほどこっちに来るのを防いであげたのに、あんな無茶するなんてどういう了見?
その問いかけで俺は目を覚ました。
灰色で、何も無い世界に一人座っていた。
けれどあたたかい、どうして…
─俺がそばに居るからに決まってるでしょ、馬鹿
「…律?」
─気づくの遅いよ、やっと起きた。それより、なんでいつもいつも死ぬようなことする訳?死にたいの?
「なわけないだろ、けど俺はサクラだ。覚悟しなきゃいけない時だってあるさ」
─それしか生き方知らないもんね、可哀想
「お前だってそうだったろうが」
ったく、ああ言えばこう言うところは全く変わってない。
けれど不快ではないのが俺達だ。
前は守れなかった後悔ばかり覚えていた、でも今はそうでもない。
─勝手に感傷に浸らないで、あんまり時間無いんだから
…ここ、考えてること全部筒抜けになんのかよ。
思わず突っ込んだところで、その二言目に疑問を覚えた。
「時間無いってどういうことだよ?」
─あのね、ここあの世とこの世の境目なの。
長く居すぎると向こうに引き込まれるからさっさと帰って
「…お前、もしかして今までも…」
─そーゆー勘のいいとこ嫌い。ほらさっさと身体に戻ってよ、君のメサイアの○○が待ってるでしょ
…俺のメサイア。
確かにいた、でも名前が聞き取れない。
確かにいたのに、思い出せない。
─めんどくさいな、いいから早く行く!
「ちょ、おい!」
─二度と来ないで、その時が来るまで
俺は何らかの大きな力によって弾き出された。
気づくと目を開けていて、目の前に真っ白な天井があった。
「…雪?雪!」
懐かしい声が聞こえる。
聞いていて落ち着く、慣れた声。
長らく聞いていなかった気がする。
「…尋」
顔を見なくても分かる。
思い出せなかったはずの名前は、さらっと出てきた。
声のした方を見ると、その目から大粒の涙が流れていた。
「…起きないかと思ったぁ…」
「…なわけないだろ」
この感覚だと、数ヶ月は寝てたな…声が出しづらい。
「…悪いな、死にかけたみたいで」
「ほんとだよ…失うかと思った…」
泣き続ける尋の涙を拭ってやる。
俺はお前の笑顔が世界で一番好きだけど、俺のために泣いてくれるならそれも悪い気はしないな…と、密かに思った。
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