Messiah

嘉禄(かろく)

Poker of the shiver



ある日、俺は一嶋がいる時間帯に係長室に行った。
一嶋が俺に気づいて目線を上げる。


「おや、呼んでいませんが?
それとも君から来てくれたのですか、雛森くん」
「気色悪い言い方すんな…聞きたいことがあってきた」
「何でしょうか?」
「…あの日、俺が律に撃たれた時。
律が裏切ると知ってたんじゃないのか」


俺が問いかけると一嶋は黙った。
ただでは教えない、か。
まあそんな簡単に聞き出せるとは思ってない。


「…いつものだんまりか。
けど俺は引き下がらねーぞ、じゃあこれで俺が勝ったら全て教えろ」
「ポーカーですか…私は強いですよ?」
「知ってるよんなことは」


俺は一嶋の前にポーカーを出した。
カジノでも使われるポーカーだ。
それの意味するところは、イカサマと読み合いの戦い。
そこで後ろの扉が開き、百瀬が入ってくる。


「ディーラーは百瀬くんですか」
「そういうことだ」


一嶋の前に座ると、百瀬がカードを取ってシャッフルを始め、俺と一嶋に配る。


「ベットイン。
俺は、律が裏切った日の真実」
「コール、貴方の戦う理由を」
「…レイズ。
律が裏切ることを知っていたのか」


賭ける額が決まったところで、百瀬が合図を出す。
それに合わせて、俺はカードを一嶋より先に開けた。


「オープン…ストレートフラッシュ、ハートの9-13」
「…残念、私の負けのようです」


一嶋がカードをオープンすると、同じくストレートフラッシュながらクローバーの6-10で俺の勝ちだった。
勿論お互いにイカサマだ。


「…じゃあ聞かせてもらおうか」
「…知りませんでしたよ、彼が裏切ることは。
ですが、水面下で何か企てているのは気づいていました。
それが吉と出るか凶と出るか、見定めている間にあの件が起きたんです」


…信じられるか、と聞かれたら信じられない。
けれど負けてこの期に及んで嘘をつくとも思えなかった。


「…そうかよ。
それで納得しといてやる、じゃーな」


俺は溜息をついて係長室を後にした─



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