Messiah

嘉禄(かろく)

Memory of the death to rotate



私は気づけばあの日に戻されている。


『…ごめんね、伊織』
『気にしねーよ、これが俺の運命ってだけだ』
『...ちょっと寝てて。...またすぐに会えるから…』


この会話を最後に、全てがブラックアウトする。
俺が衛を殺そうとし、衛に殺された日。
逃れたくとも逃れることを許されない、許さない記憶。

薄れていく意識の中で、衛の泣く声が微かに耳に届く。
泣かないでくれ、そう言おうとしても私の声はもう出ない。


『…どこが現実で、どこが夢?
私は…俺は、本当に生きてるのか?』


あの日の恐怖が私の心と身体を縛り付ける。
また衛を殺そうとしたらどうする?俺はまた衛に殺されるか?

─またあの恐怖を味わうのか

どこからともなく知らない声が響く。


『嫌だ!思い出したくない、聞きたくない!
二度と呼びかけるな、出ていけ!』


何も無い暗闇の中で私は蹲って耳を塞ぐ。

いつになったらこの暗闇は晴れるのか?
いつになったらこの恐怖から解放されるのか?


─逃れたければ、死ねばいい
「黙れ!!!!」


その声で飛び起きた。
衛が驚いたように私を見る。


「…またあの夢?」
「は、い…すみません、衛…」


衛がそっとタオルで汗を拭ってくれる。
俺が怯えていることを悟ってか、衛は以前より優しくなった。
それがかえって申し訳ないと思うこともある、けれどそれは私自身に余裕がある時だ。


「…大丈夫、伊織には俺がいる」
「そう、ですね…」


抱きしめられてもあの時の記憶が鮮明に蘇る。
それを振り払うように、私はいつも衛の背中を掴むのだ─



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