Messiah

嘉禄(かろく)

炎の中に舞うサクラ



─これが最期だとしても、俺は…


俺が久々のオフで休んでいた時のこと。
ワールドリフォーミングの加盟国は今や数国しか残っておらず、事実上の破棄となり嵐の前の静けさが世界を包んでいた。
オフ、というのも…俺が北方連合に出てフォークス機関の本部を潰す任務で重傷になっただけなんだが。
休んでいるのもどうかと思うが、百瀬と尋に動くのを止められたのだから仕方がない。
確かに傷が痛み、動くのもままならないのは事実だ。
ドクター二人に痛み止めの処方をするかどうか聞かれたが、断っておいた。
結局あいつら痛み止め置いていきやがったけど。

痛みを堪えつつ横になっていると、非常音が鳴り響いた。
それが示すところは、襲撃。


「おいおい、嘘だろ…!」


こんな時にタイミングが悪い、と思ったが思い直した。
この世界では、いつ戦争が起きてもおかしくない。
つまり日本のどこも安全では無いのだ…このチャーチは尚更。
痛む体に鞭打ってメサイアのコートを着て武器を装備した。


「…まさか痛み止めが役に立つとはな」


ドクター二人にあとで礼でも言いに行くか…なんて、生きてたらだけどな。
尋を、自分のメサイアを救うため俺は部屋を出た。
尋は多少戦闘は齧ったようだが元は非戦闘員。
確か任務で指示出しをしているはずだ、ということは情報部にいる。
あそこにはチャーチの情報が詰まっているから他のところより強固な造りになっている。


「無事でいろよ、尋…」


傷を押さえて走り出し、情報部に向かうと尋が隠れていた。


「…尋、俺だ。
今すぐ逃げろ、出来るだけ奥へ。
それからこれを」
「雪…これ…銃と弾?」
「チャーチでさえもう安全じゃない、いざとなったらこれで身を守れ。
きっと奥には有明や他の非戦闘員もいるはずだ、武器を持たされて。
…終わったら迎えに行く、待ってろ」
「…わ、かった…」


尋が一瞬抱きついて、銃と弾を持って出ていった。
その姿、見納めになんかしてやらない。
見送ったあとインカムをつけると、百瀬からの通信が入った。


『雛森!』
「百瀬、敵は?」
『正面突破よ、今神代くんと任務から戻ったばかりの皇浦くんと浅葱くんで抑えてるけどいつまで保つか…!』
「わかった、向かう」
『雛森!バカ言わないで、貴方まだ重傷者でしょう!』
「そんなこと言ってる場合じゃない!
…命令を寄越せ、こんなところで死ぬ訳にはいかないんだ」
『…分かったわ、あの時と同じにはしない…雛森、敵を迎え撃って!』
「…了解」


そう答えて俺は通信を切った。

例え俺が死んでも、あいつだけは生き延びることを願って炎の中へ身を投じた─



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