Messiah

嘉禄(かろく)

Soliloquy of God



「…暇だなぁ、嵐の前の静けさってやつかな。
雛森さんは未だ動けない、衛は北方。あの怪我で無茶だよねぇ。
で、他のサクラも大体草薙くんにやられて使い物にならない。
卒業していった先輩たち使わないと日本なんて太刀打ち出来ないって、ワールドリフォーミングが破棄された世界なんてさ」


僕は独り言を言いながら、チャーチの中を何をするでもなくうろうろしていた。

照る日の杜で信者に殺されて、気づいたらここにいて…でも、ここは僕にとっては生きづらい。
ここだけじゃない、下界はどこも穢れている。
あの山は澄んでいて静かだった。
時には気まぐれで下りたこともあったけど、戻ると必ず体調を崩した。
外に憧れて、外の食べ物を体に取り入れても受け付けなかった。
その空気は僕に合わないことは分かっていた。

でも、僕がここにいる理由はただ一つ。
照る日の杜で神様やってても、誰も幸せに出来なかったから。

僕は本物だった。
神として、大体がお飾りで古参の駒として扱われる中で…僕だけは神だった。
未来が見えて、気まぐれだけど神託を与えたこともある。
それは外れたことは無く、神託を求めて多くの政界の重鎮が来たっけ。


「…ま、そんなことしたって満たされることは無かったんだけどね…」


僕がどうして神になったか?
過去の御神体は、どうして神になったか?
そんなのは決まっている。


「…神であれば、人々を幸せに出来ると思ったから」


照る日の杜に入信した人々は、皆笑顔だった。
神託を与えれば、皆喜んだ。
僕に会うだけで、嬉しそうだったんだ。
だから神様を続けた。
…辛いことがあっても、それを僕が乗り越えさえすれば幸せを与えられると思っていた。


─ただの傲慢に過ぎなかったというのに。

僕は人々を幸せにしたかった。
苦しんでいる人々を救いたかった。
その一心で死ぬような思いをして、御神体になった。
けれど、途中で気づいた。
僕が幸せだと信じていたものは、彼らにとっては幸せではなかったと。

杜に与えられた力で信者を操り、押さえつける。
僕も信者も…いや、今までの御神体全員…違う、御神体になり得なかった子供たち…全て、北方連合のモルモットだった。

だったら、僕がこの体を犠牲にして神を務めた意味はなんだ?
元々弱いこの体は力を使う度、ボロボロになっていくのに。
僕は、自分の未来を知っていた。
先は長くないということを。


「…残された少ない命で、どれだけの人を救えるかな…一人でも多くの人を救いたいな…なんて、自己満足にも程があるかな」


ぽつりと呟いて、僕はそのまま歩いていった。



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