Messiah
Without a face only this love
─視界がぼやける。 
俺の命が消えゆく中で、ふと過ぎる笑顔と声がある。
『朝陽』
そう呼んで、彼は俺の方を振り向いて笑う。
幸樹、と彼の隣に立って呼んでいた時が既に懐かしい。
けれど、それは俺の偽の顔の一つでしかなかった。
と言うより、俺の顔など元から無かった。
何故死ぬ間際になって彼の顔を思い出すのか…俺自身が分からなかった。
「…俺にとって、支えでメサイアなんて…俺がそう思ってたなんて、そんなの有り得ないのに…何故離れない?」
『君の力を貸して欲しい、俺の目的が成就した後は俺の力を貸すと誓う』
吉良幸仁はそう言った、だがやはりあれは出任せだった。
最初から切り捨てるつもりだった、というだけだ。
…いや、俺が俺から解放されるのが俺ですら気づかなかった願いだったのかもしれない。
「…恐れ入るよ、吉良幸仁」
俺はふと笑みを浮かべて呟き目を閉じた─
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