Messiah
Rain of the jet black
「…行ってくる、ゆき」
部屋にある写真立ての中で笑うゆきに声をかけ、俺は今日も任務に出る。
移動する間、メサイアがいた頃に思いを馳せる。
2年ほど前、俺は半身を失った。
任務の中で分かれて行動せざるを得なかった。
俺の方は殲滅を終え、ゆきは終わったかと通信を入れた。
「ゆき、こっちは終わった。
そっちはどうだ?…ゆき?」
いくら問いかけても反応は無い。
端末を取り出すと、ゆきの現在地を示す光が点滅していた。
それを見てその場所に向かう。
─けれどゆきはいなかった。
代わりにあったのは血が付着したゆきの端末。
拾い上げると、それは壊れて使い物にならなくなっていた。
嫌な予感が頭を過る。
それを打ち消すように、俺は現地を探し回った。
「…ゆき、どこだゆき!」
探し回る中で、どこに隠れていたのかと思うほど敵が出てくる。
けどそんなのに構ってる暇はない、俺は時に防ぎ時に負傷しながらひたすらに探した。
…ゆきは見つからなかった。
諦める頃には無傷だった俺の体は傷だらけで出血が多かった。
多量出血でぼんやりする思考で、ゆきは死んだと思うしか無かった。
「…メサイアを、ゆきを救えなくて何がメサイアだ…」
ここで死ねばゆきのもとに行ける…そう思ったのに、俺は死ななかった。
目覚めたあと、俺はメサイアを与えられず一人で戦い続けてきた。
─それでも構わない、いつかゆきに会えるなら
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