Messiah
Memory not to need
『一嶋係長、貴方は私の…!』
『父親だとでも思いましたか?
…本当のことを教えてあげましょう。君は私のクローンです』
引き寄せられて耳打ちされたその言葉が未だに脳内に響く。
私だけにしか聞こえない音量なのに、しっかりとこの耳に残っている。
─私が、一嶋係長のクローン。
   普通の人間ではなく、クローン。
   衛と同じ…造られた人間。
戦いの最中、それを聞かされた時は訳が分からず呆然とするしかなかった。
徐々に理解して、いやせざるを得なくて…すると今までにない怒りが湧き上がってきた。
私はその怒りをそのまま一嶋係長にぶつけた。
『俺は貴方の駒じゃない…貴方は絶対死なせない…一生俺から恨まれながら生きるんだ、罪を悔いたってもう遅い…!』
私に過去の記憶がない理由。
人の温もりを知らなかった理由。
それは経験が無かったから。
生まれが他の人間と違うから。
…あの人に記憶を消されたから。
私の他にもクローンがいたこと…彼らは人体実験の最中崩壊していったこと…私も同じく実験を受けさせられて苦痛を味わったこと…けれど私は崩壊する前に実験が中止となったこと…一嶋晴海のクローンだというだけで。
生まれてきた時からこうなる運命だったと言うなら、運命などくそくらえだ。
一嶋晴海の敷いたレールの上は二度と歩まない、二度と信用しない…私は私の自我に従って生きる。
─どうだ、これが貴方の作り出した人形の意思だ─
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