Messiah

嘉禄(かろく)

Encounter with the original 3


研究室に戻って作業を始めようとすると、ノックのあとに扉が開いた。


「お、無事で何よりだ」
「昴さん…おはようございます」


この人は私のいる研究室の主任で、何かと私のことを気にかけてくれる人だ…結構長いことそばにいるが、未だにこの人の全ては掴めない。
掴ませてもらえない、と言った方が正しいか。


「珍しいですね、ご自分の研究室から出てこられるなんて」
「まあな、まあいつもの用事だ。
分かってんだろ?」
「まあ薄々は」


そう答えた私に、昴さんは中身がどっさり入ったビニール袋を渡してきた。
中には大量の錠剤が入っている。
これは私の常備薬だ、これが無いと私は体調を崩す。
対処法が分からず困っていたら、昴さんがそれに気づいて薬をくれたのが始まりだ。
最初は効き目が薄く、そこから改良を重ねて今に至っている。
今でも改良中らしいが…。


「眠くならないようにしておいた、前のはかなり効果が強かったがその代わり眠気が酷かったみたいだからな」
「相変わらず私のことよく見てますね…いつもありがとうございます」
「気にするな、じゃあな」


昴さんは軽く答えると手をひらっと振って出ていった。


「…考えてみれば、不便な体だ。
慣れっこ、というよりは諦めに近いかな…他の人間と比べて欠陥品みたいだ…なんて、卑下したところで治ったりしないけど」


半ば愚痴を言いながら薬を取り出して水で流し込む。
一回二錠、形状はカプセル。
私は薬を飲み込むのが苦手だった、そしたら出来るだけ小さく飲み込みやすい形状にしてくれた。
昴さんには頭が上がらない、あと気づきすぎてあの人は怖いレベルだ。
本人には言わないけど。


「…さて、今日も研究に精を出しますか」


私はいつも通り研究を始めた。



やがて昼休憩を知らせる音で集中がちょうど切れた。
いつも通り研究室のデスクで軽い昼食を済ませる。
手作りのサンドイッチを食べていると、朝に私を助けてくれた人のことが頭を過ぎった。


「…少し探ってみるかな」


食べながらPCの操作を始める。
指紋ではヒットしなかったので、監視カメラを洗うことにした。


「…いた、この人だ」


片腕のないその人は、会社から出ると黒塗りのバンに乗って走り去っていった。
追跡を続けたけど、途中で見失った。
まるで追われているのを想定して撒くような動きをしていたから、やはりどこかの組織の人間だろうと思った。
組織に探りを入れてもいいけど、厄介事に巻き込まれても面倒だし何より組織の数は多い。
骨が折れそうなのでそこで探るのはやめた。


「…どうして私を守ったか…謎は深まるばかりになっちゃったな…」


ため息をついて、休憩がてら研究室を出たのだった─



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