Messiah

嘉禄(かろく)

HINAMORI of the certain day

とある冬の日、俺雛森雪は珍しく日本での任務についていた。

基本違う国の空の下にいる俺にとっては本当に珍しいことで、しかも今回はもう一つ珍しいことがある。

俺に言い渡される任務はかなりの確率で長期なり短期なりの潜入が多い。
だが言い渡されたのはただの殲滅、労いのつもりなんだろうか休暇まで言い渡された。
…まあ、おかげで日本にとんぼ返りする羽目にはなったけど尋に会えるから良しとする。

指定された組織の近くで車から降りて様子を伺う。
今のところ俺に気づいたり怪しんだりしている様子はない、俺は警戒しながらも余裕で中に潜り込んだ。

常駐している雑魚どもが多少警戒しつつも会話している、その手の組織にいても不満は付き物らしい。
…ま、んな警戒くらいじゃ俺には気づくはずもないけどな。

監視カメラに気を配りつつまずは二人を倒す。
音は立ててない、が倒れてるのを見つければ侵入には気づくだろう。
騒がれる前に終わらせたいところではある、と思いながらも俺は奥へと足を進める。
怪我するのは俺としては別に問題ではないが、俺のメサイアにとってはそうではないらしい。
重傷でなくとも、軽く切られただけでも説教が飛んでくる。


『雪、何度も気をつけて下さいと言ってるでしょう!』


…正直耳タコだけど、鬱陶しくないのはメサイアパワーだろうか。
まあいつも軽く流してはいるが気を使ってない訳でもない。

…にしても人気が少ない、しかも見つけるのは下っ端ばかり。
手練や上層はどこにいる?

疑問を抱きつつも奥へ奥へと進み続けると、突然大勢に囲まれた。
俺はわざとらしく見回すとふと口角を上げた。


「やーっとお出ましか、チョロいのばっかで手応え無かったんだよ。
お前らは多少は粘れよ?」


俺の発言が終わる前に全員で俺に襲いかかってくる、数に物言わせるなんて芸がない…なんて、俺も芸があるわけでもないけどな。

俺は不敵な笑みを浮かべてる自覚をしながらも的確に敵を倒していく。
手応えはあるが、楽しめる程ではない。
多少落胆しながらも殲滅を続けていると、突然どこからか弾が飛んできた。
直前になって気づいた俺はすんでのところで避ける。
避けなければ今頃右目は失明だっただろう、右頬が切れただけで良かった。


「いって…んだよ、スナイパーか?」


動いてる俺相手に弾を命中とは、なかなかやるじゃねーか…恐らく今俺と対敵してる奴すら気にせず撃つだろう、味方もお構い無しって訳か。


「…楽しくなってきた、本気出しても良さそうだな」


俺はニヤッと笑うと両手に持ったハンドガンを構え直し、周囲の敵を一掃して先にいるであろうスナイパーの元へ駆ける。

一瞬シルエットと銃口が見えて、俺は瞬時に伏せた。
俺の真上を弾丸が通り過ぎていく、少し掠ったが服が破れただけで済んだ。


「怪我だけじゃなく服もやってくれるなんて、百瀬にも文句言われんだろーが!」


スナイパーの元まで辿り着くとすぐに銃身を蹴り飛ばして丸腰にさせる。


「俺を本気で倒したいなら、接近戦に持ち込むべきだばーか」


俺はそう言ってからスナイパーを倒した。


「…残るはトップと精鋭くらいか?」


俺が呟いた次の瞬間、最奥から大きな音が響き次いで建物が大きく揺れた。


「…なんだ?煙の匂い…まさか、自爆しやがったな!
くそ、崩壊に巻き込むつもりかよ!
自殺はお前らだけでやれクソが!」


俺の予想は当たっていて、奥から砂埃を立てて建物が崩壊していく。
巻き込まれないように出口まで走り、なんとか外に飛び出すと完全崩壊した。
俺が来ることが分かっていて、はなからそのつもりだったのか…真偽は定かではないが流石にヒヤッとした。


「…黒丸は精鋭と共に自爆、恐らく建物の崩壊に巻き込まれて死んだと思うがあとは頼んだぞ」
『分かってるわよ、ほら帰ってきなさい』


百瀬に報告を入れて久しぶりのチャーチに帰還すると、尋が待っていた。
俺が着くのを今か今かと待っていたようで、俺を見た途端表情がぱっと晴れた。


「おかえりなさい、雪!
…って、頬切れてるじゃないですか!」
「ただいま尋。
悪いな、油断した。」
「油断した、じゃないですよ!
ほら手当てしてもらいますよ!」


尋に手を引かれて半ば強制的に歩き出す。
…久しぶりに会う尋。
偶になら、説教も悪くないかと密かに思いながらチャーチに入った。

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