Messiah

嘉禄(かろく)

Missing lapis lazuli





…どれくらい走り続けただろう?
俺たちの組織が襲われて、俺たちは逃げた。
すぐに追っ手が追いかけてくる、俺たちはどんなに息が苦しくても逃げて逃げて…逃げ続けた。

途中で何発も撃たれた。
それでも捕まったら明日はないと直感していた、だから痛くても食いしばって走った。


どれくらい走って逃げただろう、出血で自分の手が冷たいのが分かる。視界が時々暗くなる、それでも片割れがいたから耐えられた。


「大丈夫だからな、璃斗…璃斗?」


支え合っていた双子の兄に呼びかける。
返事が無いのを不審に思って見てみると、さっきまで力は弱くともしっかり俺につかまっていた体は俺に全体重をかけてだらんとしていた。


「…璃斗、なあしっかりしろよ!大丈夫だよ、もうすぐ撒けるって!だから落ち込むなよ!
…璃斗、なあ起きろよ…璃斗!!」


今目の前で起きていることを信じたくなくて、敵に場所を知らせてしまうのも気にせず呼びかけた。
でも、聞き慣れた…いつも一緒にあると信じて疑わなかった声はもう聞こえてこなかった。


「な、んで…なんでだよ、くそ!!!」


悔しいのか、悲しいのか…心がぐちゃぐちゃになる、それでも足は止まらなかった。

もうすぐ追いつかれる、その時に正面から銃声が響いて追っ手が全員倒れた。
目の前には、殺しには相応しくないスーツに杖をついた男がいた。


「君、生きたいですか?
双子の兄を救いたいですか?」
「…なに、言ってんだよ…璃斗はもう…」
「我々の元に来れば生き返らせることが出来ます、もし私が約束を破ったと感じた時は、この銃口を私に」


いやに慇懃な口調の男は俺に銃を手渡した。
つい俺が受け取ると、ついてこいと言うようにそいつは歩き出した。
何が何だか分からないまま、俺はついて行った。



その頃から考えると、俺も璃斗も強くなったとしみじみ思う。


「なにぼーっとしてるの、瑠衣?もう出る時間だよ?」
「分かってる、行くか!」


俺は璃斗の隣に立って、一緒にチャーチを出る。

二度と失わない、俺がお前を守るんだって決めたことは、今でも忘れないしこれからも忘れないだろう。

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