Messiah

嘉禄(かろく)

Playful nightmares

「…やめろ、この戦闘狂!」

自分の叫んだ声で俺は飛び起きた。
PCの前で作業していたいつきがとても驚いたようで飛び跳ねてこっちを恐る恐る向いてくる。

「びっくりした…どうしたの?」
「いや…とてつもなくふざけた夢を見た。」

現実では起きないだろうが、起きてもおかしくはない夢…起こしたらあいつぶっ飛ばすが。
それを聞いただけでは内容を理解できなかったんだろう、いつきが首を傾げて再び問いかけてくる。

「涼、汗かいてる。どんな夢を見たの?」

いつきがタオルで汗を拭いてくれたが、俺はその手を握りながら思い出しつつ話し出した。

「…夢に瑠衣が出てきた。任務の夢だったんだが…敵が俺の目の前にわんさかといてな。これは骨が折れるなと思っていたら、そこに瑠衣が降りてきて『大丈夫だよ有賀さん、こんな事もあろうかと…見て!』つって手に持ってたボタン押したんだよ。したら一直線に整列した爆弾が爆発して…俺たちには届かなかったからいいものの…『凄いでしょ、爆弾の花道!』って…」

完全に思い出して俺は頭を抱えた。
それを聞いたいつきはうわぁと言わんばかりの顔をしたあと俺の頭を撫でた。

「それはやだね…よしよし。」

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「…やめてよ百瀬さん!」

手合わせを終えて仮眠を取っていた俺は自分の叫んだ声で慌てて飛び起きた。
隣で横になっていた長谷部もビクッとして目を開く。

「…どうした、百瀬さん呼んで。変な夢でも見たか?」
「うん…そうなんだよ…」

怖かった…現実には、裏切らない限りあれはやられないと思うけど…。
余程青ざめていたのか、長谷部が心配そうに俺を見ながら落ち着けるように頭を撫でる。

「大丈夫だ、こっちは現実だ。…けど、お前がそんなに青ざめるなんてどんな夢を見たんだ?」
「あのね…夢の中の俺が何をやったかは知らないけど、気づいたら広い部屋の真ん中で椅子に拘束されてて…百瀬さんが笑って近づいてくるの。で、ナイフやら刃物構えて『あら、起きたのね。一度君のこと可愛がってみたかったのよ、とびきり痛くしてあげるから君の悲鳴と痛みに歪んだ顔を見せてちょうだい』って…そこで目が覚めた。」
「…それは恐ろしいな。」



『一体なんなんだ…』

悪夢を見た俺たちがこの時同時に呟いたことを誰も知るはずはなく、空中に虚しく消えていった。

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