NIGHTMARE in Church

嘉禄(かろく)

Crow having eyes of the ice 1

メモを見た俺は、医務室を飛び出して情報部に向かった。
勢いよく入りすぎたか有明と前谷が驚いて振り向いたがそんなのを気にしているどころの話じゃない。


「黒咲さん、どうしました?
そんなに慌てて、何がありました?」
「雪斗が…PC借りるぞ!」
「は、はい?」


俺は現在活動中の組織を全て洗い出した。
何故こんなに慌てているか?
それはあのメモに書かれていた内容のせいだった。


『梓音へ
ごめんな。俺のせいで死なせて。さよなら、俺の愛した人。俺もすぐに行くから』
『銀雪斗は預かったよぉ?早く来ないと死んじゃうよぉ?リシンでねぇ?』


リシン、それはかつて俺がくらって一度死んだ原因の毒物。
解毒剤は未だ発明されていない、三日で死に至るという厄介な代物。
つまりリミットは三日、それ以内に見つけ出せなければアウト。
だけど俺なら割り出しなんて余裕だ。
そう思いつつ洗い出しをしていた俺はすぐに手を止めた。

…何かが違和感だ、雪を連れ去ったのは本当に実在するのか?
怪しい組織なんか山ほどある、でもその中には雪はいないと脳が訴えてきた。

なら監視カメラを当たろう、履歴を遡れば連れ去った方向や場所の特定が出来る。


「…ヒット、こいつだ」


黒塗りの車、追跡すると途中でカメラの範囲から消えた。
…ありえない、チャーチのカメラの範囲から外れるのは不可能だ。
けど方向は割れた、あとは俺の足で探す。


「百瀬さん、雪が連れ去られた。場所は割れてないけど方向だけは分かってる、探しに出る。
迎えの車頼む。」
『わかったわ、気をつけてね。』


連絡をしてから俺はチャーチを出て車が走ったのと同じルートを辿り、消失ポイントまで来た。
ここら一帯は工場地帯、怪しい雰囲気なんか山ほどあるが全部あたるのは時間の無駄だ。
俺は辺りを見回して手がかりを見つけた。


「…タイヤ痕、あれと型が同じだ。」


道路の一部にしゃがんで痕をなぞる。
よく見ると各所に痕がある、誘われているようだけど追わない手はなかった。

痕を追いかけて、比較的新しめの建物に到着した。


「…着いた、待ってろよ雪」


物音を立てずに中に入り、気配と建物の構造を探る。
そしてすぐに俺は不審に思った。


「…気配が全くない」


どれだけ進んでも誰とも会わない、不気味なほどに静寂が包む。
ある程度階を下ると感じたことのない気配がして、俺の周りを仮面を被ったやつらが取り囲んでいた。


「…お前達か、銀雪斗を連れ去ったのは」
「そうだ」
「居場所は」
「ただで教えるとでも?」


その返答に俺は溜息をついた。


「…何が望みだ」
「チャーチの情報を」
「…沈黙を守る。
俺が負けたら引き出せばいい、勝ったら銀雪斗の居場所を」
「いいだろう」
「契約成立、俺を舐めるなよ」


相手方と俺は同時に動き出し交戦に入った。
正直そこまでの手練はおらず、主格らしきやつの動きを封じて背後から首元にナイフを突きつける。


「…これが鴉か。その氷のような瞳、恐れ入るよ」
「…銀雪斗の在り処を」


今の俺はだいぶ機嫌が悪い、自覚はある。
きっと一般人が見たなら声と目…いや気配に震え上がるかもしれない。
それくらい俺はいつもより低い声を出していた。目が鋭いのも分かっていた。
相手が口を開く気配を感じて待つと、違う声が聞こえて鈍い衝撃が俺を襲った。


「そう簡単には辿り着かせないよぉ?」


気に障る異様に高い声。
自分を見下ろすと、相手ごと剣で串刺しになっていた。
目を上げると、気色悪い笑みを浮かべた奴が俺を見ていた─


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