アリスゾンビ

ノベルバユーザー250968

3戦 おかえり。

「無事帰還したぞー」
「にしては、行った人数の半数がいないんだがな」
 行った人数が確か、300とか言ってたな。
 確かにこの人数じゃ無事とはいえないな。3人。
「お姉ちゃんが無事ならいいの!」
「そういうわけにもいかないだろうリーファ。ただでさえ人員が不足してる中、ここまで減ると……」
 確かになあ……。
 あの政府に反抗の意志を持つ人間を集めても1000にいかない人数しか集められなかったし、これはまずいかもな。
「よし、第1地区までいって増員してくるか!」
「人攫いは無しだぞ」
「攫わねぇよ、勧誘だよ勧誘」
 変な宗教とかに見せかけて政府打倒を掲げれば入るやつもいるだろう。
「変な宗教とかに見せかけて政府打倒を掲げる、とかは無しだ」
「じゃあ諦めよう」
「お姉ちゃんそんなこと考えてたんだ……」
 なんだ、悪いか?
 あ、なんか忘れてると思ったらこの兵士達だ。
「おいお前ら、シャワーなりなんなり浴びてこい。血の匂い撒き散らすはやめておけ、あたししか喜ばないから」
『はいっ!』
 うわぁ、変な走り方でシャワー浴びに行ったぞ。
「お前も行け」
「一応あたしも女なんでな、男と一緒に浴びるのはちょっと──」
「違う、誰が一緒に浴びろなんて言った。お前の家の風呂に浸かってこい、リーファが沸かせておいてくれたからな」
 あー、そういう事か。
「一緒に入ろうね♪」
 嗚呼、そういう事かぁ……。


「あ゛あ゛ーいい湯だァー」
 おっさんくさいと言われるかもしれないが、あたしはむかしっからこういう感じだから気にするな。
 いやぁでも風呂はいいな。体の疲れを取ってくれる。
「お姉ちゃん入るよぉ♪」
 待て、体の疲れを取ってくれてる中、リーファが、来たら……。
「お姉ちゃぁぁぁぁん」
 ああ、ルイス、あたしのヘソクリで兵士掻き集めてくれよ……。


「背中流すね」
「ああ」
 普通にリーファが入ってくれたおかげで疲れが本当に取れた。背中流してくれたりしたし、なんなら髪まで洗ってくれた。
 あたしの髪は軍にいたからという事で機械類に髪を持っていかれないように、短くしてある。それからの習慣か、あたしは短い方が楽だ。
 軍にいた時のことを思い出していると背中にフニっと何かが当たった。
「……?」
 前に手が回ってきたので、リーファが抱きついてきたのはわかったが、なぜこのタイミングで?
「お姉ちゃん、帰ってきてくれて、ありがとう」
「……」
「私ね心配だったんだ……。お姉ちゃんが戦いの中で死ぬわけないって思ってても、半年も帰ってこないから、もしかしたらって……」
「…………」
「でも、そんなことなかったね。お姉ちゃん帰ってきてくれたもん」
 リーファ…………。
「こっそりと下腹部に手を持っていくのやめてもらえるか?」
「フツフッフッ、ここは密室、ここなら誰も来ないからしっぽりできるね、お姉ちゃん」
「待て、姉妹でしっぽりするってなんだ!?」
「ほら、こんなにビンビンさせて──」
「どっちかと言うとビクビクしてるぞ!?」
 ヤバい、取り敢えず逃げないと──っ!?
 ちょ、待ってくれ! リーファの腕の力がハンパない!
 筋トレさせたの間違いだった!!
「ヌオアアアアアアアアアアアアアアアア」


 ……。
 …………。
 ………………。
「あたし、女としての、姉としての尊厳守れてるよな、母さん」
「何言ってんだい、軍にいたからって女じゃなくなるわけないじゃないか」
「そうだよな……、そう、だな」
 あの後、まあどうにかして逃げたが、どうも心につっかかりがあるというか、なんというか。
 リーファは何もなかったかのように飯を食べてるし、父さんはなんかホッコリしてるし、正直言って家族の温かみを忘れかけてたあたしにはちょっと懐かしくも怖い感じが……。
「まだ、アリスは銃を持ってるのか?」
「ん? そうだが?」
 な、なんだ? いきなり。
「もう銃を持つのは辞めて、結婚したらどうだ」
 盛大に吹きだした。
「ゲホッ! ゲッホッ! 何を言い出すんだ父さん!?」
「ほら、ルイスくん、彼ならぁイイぞ?」
 いやイイぞってなんだ!? リーファといい父さんといい、なんか変だぞ!?
「か、母さん。このあたしの父親は何を言ってるんだ?」
「久しぶりの家族団らんが嬉しくて思考がおかしくなってるだけだよ」
「なるほど、つまりリーファも同じような感じというわけか」
「いやあ、あの子は前々からあんなんだよ」
 あ、あれ? そうだったか?
 半年間の実験であたしは脳までやられたのか?
 それとも今朝撃たれたからか? だとしたらあの二人組を見つけて殴ってやる。
「取り敢えず、家族を代表してあたしが言うってんならね」
「ん? お、おう」
 ど、どうしたんだ母さん? いきなり真剣になって?
「おかえり。よく無事に帰ってきたね」
 そう言って母さんはあたしを優しく包み込んだ。
 なんだろうか、凄く久しぶりにこうしてもらった気がする。温かい家族の優しさを受けた気がする。
「アリス、おかえり」
「お姉ちゃんおかえり!」
 二人も、にこやかな笑みでそう言ってくれた。
 なんだよ、涙が出そうだよ。
 だがココはグッと堪えて……。
「ただいま。…………あたしは、まだ銃を置かないし、結婚もしない。でもそのかわりに、みんなに平和を持ってくる。あたしはそれを約束するよ」
 なんて、らしくないことを言ってしまったよ。
 いやに神妙な雰囲気になっちまったな、こりゃ。
「じゃ、あたしは寝るからな」
 そう言って食器を片して、あたしは自分の部屋に向かった。


「約束したからには、平和な国にしないといけないな……!」
 ベッドの上でそう呟き決意し、あたしは目を閉じた。

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