適当過ぎる勇者召喚に巻き込まれ、適当に割り当てられたスキルが《神調整》とかいう、もはやスキルとは呼べない神の力だった物語。
18 出版社のイリヤさん
サンドイッチをご馳走になった俺は精一杯に感謝の気持ちを表す。
「本当に……本っっっ当にありがとうございました。こんな見ず知らずの俺に声をかけてくれて、しかも食事まで食べさせて貰って。あなたのご……威光……ごこおい……になってしまい……ました」
やっべ、こういう時ってなんて言うんだっけ。
「……ん? ああ『ご厚意』ですね。本当にそんな気にしないで下さい。私も助けて貰った身ですから」
ご厚意か。また一つ恥をかいたな……。
【賢さ】の値、もう少し上げとけば良かった。
「俺はただサンドイッチをご馳走になっただけで、あなたを助けただなんてそんな……」
そこで彼女は急に思い出したみたいに、
「あ、そうか。自己紹介がまだでしたね。私はイリヤといいます。近くの出版社で記事を書く仕事をしてるんです、そして今はお昼休み中なのです」
『あと、歳は秘密です』と、にこりと彼女、イリヤさんは笑う。
ついついイリヤさんの笑顔に見惚れてしまっていたが、俺も慌てて自己紹介を済ます。
「俺は神ーーーールキアです」
普通に日本名で答えようとして修正する。
「カンルキア……さん?」
「あ、違います。ルキアです」
「ルキアさんーーーーですね。響きがいい素敵なお名前ですね」
言って、イリアさんはにこりと笑う。
「ルキアでいいです。さんづけだなんてそんな……ガラじゃないって言うか……その……。そうだ、イリヤさんはーーーー」
「私だってイリヤでいいですよ」
ぬぅ。
しかし、初対面の異性に対していきなり呼び捨てするのは……どうにも抵抗がある。しかし俺もさっきルキアで良いと言ってしまっているので、自分だけ呼び捨てにさせるのも悪い気がする。
さすが異世界。刺激的だぜ。
……地球でも同じか。
「じゃあ、その……イ……イリヤ……は、どうして働いているの?」
困惑気味の俺は、会話をなんとか続けようと話題を探し回り、結果ありきたりな質問に行き着いた。
俺の質問に対してイリヤは空を見上げながら、どう答えたらいいものかといった感じで答える。
「う~ん。その質問はどっちの意味かなぁ……。なぜ働くのか。ーーーーうん。分からないから両方に答えよう」
イリヤは腕組みしながらそう言って、そして。
「普通に考えれば、仕事をしないと生活できないから働く、かな。あとは記事を書いたりするのが好きだから働く、かな」
俺が聞きたかったのはたぶん普通の方だ。俺と同い年くらいの可愛い女の子ーーーー可愛いは余計か。とにかく、子供も働かないとここでは生活出来ないのか。
もしかして、生活が苦しいから親を助けるために働いているとか?
質問をした事で逆に謎が増えちゃったけれど、変な詮索はやめておこう。
よそ様の家庭の事情に他人が勝手に首を突っ込むべきではないのだ。
そうなると、話題がかなり絞られてしまって何を話せばいいのか分からなくなった。
だから、
「あ、あの……」
俺はバッグから財布を取り出しサンドイッチ代を支払おうとお金を差し出した。
「これは……?」
が、イリヤは不思議そうにそれを眺めていて状況がよく理解出来ていない様子だった。
そんなイリアの様子を見て、日本のお金を渡した自分の馬鹿さ加減にようやく気付いた。
「あ……それは……その……俺の故郷のお金なん……だけど」
「へぇ……紙で出来ているのは同じなのに、書いてある文字とか絵とかは全然違うんですねぇ。私てっきり美術品か何かかと思いました」
イリヤはそう言って俺の渡した紙幣(1000円)を俺の手元に戻してきた。
「あ、いやこれ。サンドイッチ代支払おうと思って……」
再度、お金を渡そうとする俺にイリヤは胸の前でバツ印を作りながら、
「いりません。私はサンドイッチを売った訳ではないですから」
「でも……俺としても何かお礼をしたい」
俺の言葉にイリヤはまたも腕組みをして空を仰ぎ見ながら、
「お昼休みの間、ずっと私の話し相手をしてくれた。そのおかげで私はいつもより楽しいお昼休みを過ごせた。これでいいんじゃないですか?」
今日一番の笑顔で言って、
「あ……そろそろ仕事に戻らないと!」
イリヤは慌てて立ち上がり、さっき来た道を小走りで戻っていく。
「ルキアさん! 私、お昼休みはだいたいここにいますから、また話し相手になって下さいね!」
そう言って、イリヤはブンブンと右手を大きく振って路地に消えていった。
「いっちゃった……」
結局、お礼もまともに出来ずじまいになってしまった。それにしても、
「ルキアさんねぇ……」
作りすぎたサンドイッチといい、なんだか上手い事やられたっていうか、一本取られたっていうか……なんだか複雑な感じだなぁ。
四角のサンドイッチを斜めに三角形に切ったのなら、作り過ぎる事などある筈がないのだ。
まあ、ここにはよく来るって言ってたし、お礼は今度でいいかな。
イリヤへのお礼は何がいいか考えながら、俺も路地へと歩をすすめた。
陽だまりの広場には誰もいなくなった。
「本当に……本っっっ当にありがとうございました。こんな見ず知らずの俺に声をかけてくれて、しかも食事まで食べさせて貰って。あなたのご……威光……ごこおい……になってしまい……ました」
やっべ、こういう時ってなんて言うんだっけ。
「……ん? ああ『ご厚意』ですね。本当にそんな気にしないで下さい。私も助けて貰った身ですから」
ご厚意か。また一つ恥をかいたな……。
【賢さ】の値、もう少し上げとけば良かった。
「俺はただサンドイッチをご馳走になっただけで、あなたを助けただなんてそんな……」
そこで彼女は急に思い出したみたいに、
「あ、そうか。自己紹介がまだでしたね。私はイリヤといいます。近くの出版社で記事を書く仕事をしてるんです、そして今はお昼休み中なのです」
『あと、歳は秘密です』と、にこりと彼女、イリヤさんは笑う。
ついついイリヤさんの笑顔に見惚れてしまっていたが、俺も慌てて自己紹介を済ます。
「俺は神ーーーールキアです」
普通に日本名で答えようとして修正する。
「カンルキア……さん?」
「あ、違います。ルキアです」
「ルキアさんーーーーですね。響きがいい素敵なお名前ですね」
言って、イリアさんはにこりと笑う。
「ルキアでいいです。さんづけだなんてそんな……ガラじゃないって言うか……その……。そうだ、イリヤさんはーーーー」
「私だってイリヤでいいですよ」
ぬぅ。
しかし、初対面の異性に対していきなり呼び捨てするのは……どうにも抵抗がある。しかし俺もさっきルキアで良いと言ってしまっているので、自分だけ呼び捨てにさせるのも悪い気がする。
さすが異世界。刺激的だぜ。
……地球でも同じか。
「じゃあ、その……イ……イリヤ……は、どうして働いているの?」
困惑気味の俺は、会話をなんとか続けようと話題を探し回り、結果ありきたりな質問に行き着いた。
俺の質問に対してイリヤは空を見上げながら、どう答えたらいいものかといった感じで答える。
「う~ん。その質問はどっちの意味かなぁ……。なぜ働くのか。ーーーーうん。分からないから両方に答えよう」
イリヤは腕組みしながらそう言って、そして。
「普通に考えれば、仕事をしないと生活できないから働く、かな。あとは記事を書いたりするのが好きだから働く、かな」
俺が聞きたかったのはたぶん普通の方だ。俺と同い年くらいの可愛い女の子ーーーー可愛いは余計か。とにかく、子供も働かないとここでは生活出来ないのか。
もしかして、生活が苦しいから親を助けるために働いているとか?
質問をした事で逆に謎が増えちゃったけれど、変な詮索はやめておこう。
よそ様の家庭の事情に他人が勝手に首を突っ込むべきではないのだ。
そうなると、話題がかなり絞られてしまって何を話せばいいのか分からなくなった。
だから、
「あ、あの……」
俺はバッグから財布を取り出しサンドイッチ代を支払おうとお金を差し出した。
「これは……?」
が、イリヤは不思議そうにそれを眺めていて状況がよく理解出来ていない様子だった。
そんなイリアの様子を見て、日本のお金を渡した自分の馬鹿さ加減にようやく気付いた。
「あ……それは……その……俺の故郷のお金なん……だけど」
「へぇ……紙で出来ているのは同じなのに、書いてある文字とか絵とかは全然違うんですねぇ。私てっきり美術品か何かかと思いました」
イリヤはそう言って俺の渡した紙幣(1000円)を俺の手元に戻してきた。
「あ、いやこれ。サンドイッチ代支払おうと思って……」
再度、お金を渡そうとする俺にイリヤは胸の前でバツ印を作りながら、
「いりません。私はサンドイッチを売った訳ではないですから」
「でも……俺としても何かお礼をしたい」
俺の言葉にイリヤはまたも腕組みをして空を仰ぎ見ながら、
「お昼休みの間、ずっと私の話し相手をしてくれた。そのおかげで私はいつもより楽しいお昼休みを過ごせた。これでいいんじゃないですか?」
今日一番の笑顔で言って、
「あ……そろそろ仕事に戻らないと!」
イリヤは慌てて立ち上がり、さっき来た道を小走りで戻っていく。
「ルキアさん! 私、お昼休みはだいたいここにいますから、また話し相手になって下さいね!」
そう言って、イリヤはブンブンと右手を大きく振って路地に消えていった。
「いっちゃった……」
結局、お礼もまともに出来ずじまいになってしまった。それにしても、
「ルキアさんねぇ……」
作りすぎたサンドイッチといい、なんだか上手い事やられたっていうか、一本取られたっていうか……なんだか複雑な感じだなぁ。
四角のサンドイッチを斜めに三角形に切ったのなら、作り過ぎる事などある筈がないのだ。
まあ、ここにはよく来るって言ってたし、お礼は今度でいいかな。
イリヤへのお礼は何がいいか考えながら、俺も路地へと歩をすすめた。
陽だまりの広場には誰もいなくなった。
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