適当過ぎる勇者召喚に巻き込まれ、適当に割り当てられたスキルが《神調整》とかいう、もはやスキルとは呼べない神の力だった物語。

しみずん

3 牢屋の中で

「いたたた……」

 俺は念願の勇者召喚に巻き込まれそして、ボロクソに卑下されたあげく、牢屋に蹴り込まれてしまった。

 お尻をさすりながら思う。

 俺の夢は叶ったが、あちらの期待には応えられなかった。

 望まれない、お呼びではない存在の俺。

 喜びと悲しみ。

 この何とも言いようのない虚しくも儚い今の気持ちに名前をつけなければ……。

「…………」

 よし。

《勇者召喚大爆死のジレンマ》と名付けよう。

 やっと選ばれた者の喜びと、期待はずれの悲しみが織り成す絶妙な板挟み。

 ……しかし。この場合はいったい誰が挟まれてるんだ?

 王様か? それとも、あの謎のお爺さん?

 まあ、いいや。なんでも。

 さて。勇者召喚における悲惨な事故についての正式な名前も決まった事だし、俺はいったい今から何をしよう。

 ふぅむ。

 召喚の間(恐らく)でのやり取りを思い出す。

『魔物の餌くらいにはなるだろう』とか言ってたな。じゃあ、まずはここから逃げるっていうのが俺の1番にやるべき事になるんだろうけど……しかしどうしたものか。

 床はひんやりとした石造りで、前方は鋼鉄が格子状になっていて、子供でも通れないような作りになっている。

 絶体絶命、脱出は不可能だった。

 それでも何とかならないものかと、考えを巡らす。

 普通なら脱出は不可能だ。

 だが、ここは異世界。そして今や俺は異世界人。

 何か策はあるはずだ。

 空っぽの頭をフル回転させて熟考する。

 そして、1番最初に頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してみる。

「ステータス!」

 すると目の前に若干以上のレトロさを感じてしまう半透明のボードのようなものが出現した。

「…………本当に出た」

 自分で言っといてなんだけど、まさか本当に出るとは思っていなかったので、かなりの驚きと感動が胸に押し寄せた。

 色々と思うところはあるが、今はステータス画面だ。

 俺は興奮を押し殺して、ステータス画面に視線を移す。

【☆】   1

【名前】 ルキア神調整

【LV】  1

【力】   12

【守り】  10

【速さ】  8

【賢さ】  0

【運】   5

【スキル】 ーー
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 ステータスが表示されたボードを指先でなぞると項目が左から右に流れていく。

 自分のあまりに控えめなステータスの値に苦笑いを浮かべて、召喚してくれた人達に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 
 だってこれ、スマホのゲームで例えて言えばレアガチャを引いたのにノーマルガチャのザコキャラが出たようなものなんだから。

 そりゃあ皆、あのテンションになるよ。投獄されるのも納得できるし、むしろあの場で殺されずに済んで良かったとさえ言える。

 もし仮に逆の立場だったら、たぶん俺はスクリーンショットを撮って、この奇跡のような出来事をSNSに投稿してから運営にクレームの連絡を入れてたんまりとお詫びを請求していると思う。

 うん、してるな。絶対。

 ふう。

 俺は複雑な心境で再びステータス画面に集中する。

 

 


 





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