適当過ぎる勇者召喚に巻き込まれ、適当に割り当てられたスキルが《神調整》とかいう、もはやスキルとは呼べない神の力だった物語。

しみずん

1 回想、勇者召喚

「…………」

 今を生きる若者として俺の身に何が起こったのかは、まあ分かるんだけど。

 だけど、しかしさあ。

「適当じゃね……?」

 普通はもっとこう……あるじゃん。変わらない毎日の中で車に轢かれてとか、心臓発作とか、突然辺りが白に染まってとか。

 気が付いたらお爺さんか女神様がいて『間違えちゃった』とか『ごめんな急に呼んで』とか『お詫びに凄いスキルあげるね』とか。

 それが一般的な転生や勇者召喚ってやつだろう?

 それが俺が憧れていた、ずっと待っていた、勇者召喚ってやつだろう。

 なのに。

「超、適当じゃね……?」

 大事な初話が、3行って……。

 斬新すぎる。

 こんな超適当なまま始められるのは、どうにも我慢ならないので俺は無理矢理にでも自分のペースに持っていく事にする。

 まずは、自己紹介からかな。

 やっぱり。

 俺は#神田瑠希亜__かんだるきあ__#。どこにでもいる高校3年生だ。スマホのゲームが大好きで寝る間も惜しんで毎日毎日、夜遅くまでやってる。

 あと、スタミナ回復待ちになった時はライトノベルとかも好んで読む。ゲームみたいな、ああいう世界感が大好きで、自分もああいう世界で生きたいと思う。

 そんな俺は、高校の制服に着替えて今から学校に行くところだ。

 本当は行きたくないんだけれど、親が高校だけは卒業しろってうるさいんで、親の顔を立てるために仕方なく高校に通っている。(本当は学校行かないと毎月の課金分の1万円が貰えないからなんだけど……)

 まあ、とにかく俺は家のドアを開けて外に出た。

 玄関から一歩踏み出した俺の右足の下には見慣れた魔法陣があって、俺は密かにニヤリとしてその魔法陣のなるべく中央部を慎重に踏んだ。

 その瞬間に世界は白く染まり、俺の意識は途絶えた。


 ここからは、記憶がかなり曖昧になるけど覚えている限りを話そう。


 目を覚ますと例によって見知らぬ天井があってーーーーいや。正確には天井は無くて。

 かわりにと言うか、俺の寝ている横には白い大きな机があって、その上には成績表の棒グラフのように積み上げられたいくつもの書類の山があって、その山に囲まれるようにして謎のお爺さんがあたふたしていた。

「まったく昨今の異世界人と来たら、人間界からばかり勇者召喚しよってからに、少しは自分達の力で何とか問題を解決しようとは思わなんだか。まったく、まったく。これだから昨今の異世界人と来たらーーーー」

 謎のお爺さんは明らかに怒っている様子で、山から紙を1枚とってはさっと読み流してハンコを押してまた別の山の上に置いていく。

「はい、タケシ君。君はこの《生産系スキル》じゃ。工場長にでもなりなさい。じゃあ行ってらっしゃい」

「えー……君はスルガちゃん。君はこれ《命中100%スキル》じゃ。何か当てなさい。行ってらっしゃい」

 気付くと辺りには俺の他にも数十人の人がいて、皆おろおろとしていて明らかに状況を理解していないのに、次々と謎のお爺さんから何かを伝えられて光の球を1つ受け取って消えていく。

 その作業はとてもスピーディーにこなされていく。

「あー……君はこれ。行ってらっしゃい。で、君はこれ。君はこれ。はいはい、行った行った!」

 謎のお爺さんはもはや、やけくそのように一人一人送り出している様子で、そして。

 遂に問題の初話の部分に行き着く。


「あぁーはいっ、これスキル。じゃあ、行ってらっしゃい」
 

「え……ちょっ……」

 俺は皆と同じように光の球を受け取って、そして再び意識が遠のいていく中で、謎のお爺さんはかなり焦った様子で何かを叫んでいた。

 

 



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