ぷかぷか孤島になっちゃった?

睡蓮

レイスの進化

「お帰りなさいませ。あら? 何か買ってきたんですか?」

「おかえり。主、それってレイス?」

 俺達が宿に戻るとシャルルとヤミが出迎えてくれた。

「そうだよ。ルーちゃんが気に入ったからかってきちゃった」

『青いのがいっぱい動くのー!』

 ルーちゃんはレイスではなく青い液体の方を気に入っているみたいだが、、、

 俺としてはこのちっちゃな骸骨達が可愛いから結構気に入ってる。でも青い液体から出しても大丈夫か分からないのでまだ瓶に詰めたままの状態だ。

「はぁ、レイスですか。ルプルも珍しいものを好きになったんですね」

「レイスは見えないからペットとしての価値はない。でもアンデッドの餌になるから安値で売ってる」

 そもそもアンデッド自体の需要がないと思うんだけどなぁ。

「・・・世界には色んな人がいる」

 まぁ、確かにアンデッドをえげつないほど好きなお金持ちがいても不思議じゃないか。いや、不思議だな。だってめちゃくちゃ臭いもん。

「それでそのレイスはどうするつもりなんですか?」

「ん? ブルーホース飲ませて観察しようと思って」

 俺がそういうとシャルルの顔が曇った。

「ご主人様、レイスの観察とは? この青い液体が動いているのを観察するのですか?」

 あっ、そういやレイスが見えるのは俺だけだったな。

「俺にはちゃんとレイスの姿が見えるから大丈夫だよ」

「レ、レイスの姿が見えるのですか、、、それはなんとも」

「元々妖精が見えてた主だったら見えててもおかしくない。いや、やっぱりおかしい」

 まぁ、幽霊が見えてるようなものだし珍しいのは仕方ないよね。

「それじゃあ早速ブルーホース上げてみよ!」
 
 俺はびんの蓋を開ける。すると今まで眠ったようにぷかぷか浮いていた2匹の骸骨が勢いよく飛び出してきた。

「キューーーっ!」
   
「ミューーーっ!」  

 2人の骸骨は瓶から飛びてたと同時に俺に胸に飛び込んできた。

「おっ? どうした?」
 
「ミュミュミュー」

「キューキュキュー!」

 う、うーむ、わからん。何言ってんのかさっぱりだ。俺はヤミに視線を向ける。

「・・・なに? どうしたの?」

 ヤミも見えないものの心は読めないようだ。
 
『あれ? 青いの動かなくなっちゃった』

 うん、ルーちゃんもダメそうだな。

「キュー! キュキュッキュー!」

「みゅみゅぅ! ミュミュミュー!」

 ここは自分で何とかするしかなさそうだな。
 ま、まずはブルーホースを飲ませてみよう。もしかしたら交信のスキルを覚えてくれるかもしれない!

「あっ、ご主人様! さっき言いましたよね!不用意に魔物にその薬を飲ませたらいけません!」
 
「い、今緊急事態だからさ! 許して!」

「き、緊急事態ですか? 今のレイスの状態はご主人様にしか確認できませんしね。分かりました。でも今回とスフィアだけですよ?」

 ふぅ、良かった。シャルルの許可も出た。次はお前達だぞ。レイス! 頼むから何かコミュニケーションの手段を手に入れてくれよ。

「ほら、お飲み」

「みゅー?」

「きゅー?」

 俺がレイス達にブルーホースを差し出すと2匹は首を傾げて薬の水面をチョンチョンし始める。

「ミュー!」

 やがて片方のレイスがブルーホースの中に飛び込んだ。
 
「キュー!」

 もう片方もほぼ同時に飛び込む。

 え、えーーー、、、飲み方おかしくない? それともさっきの青い液体と勘違いしてる?

 レイス達がブルーホースの中に飛び込んでから数分たったがなんの音沙汰もない。起こったことといえばスーちゃんがブルーホースが動く様子に釘付けになったくらいだ。

「うーん、ブルーホースじゃ進化しない魔物も居るんだなぁ」

「そんなはずありません。この薬は強制的に魔物を進化させる薬です。魔物ならば確実に進化します。それにまだほとんど薬が減っていません。1晩したら進化す」

 パリーン!

「「「「えっ?」」」」

「いやーーー! 生き返った気分だぜぇーーー!」

「こら、弟。煩い。主様の前で騒ぐのは禁止」

「はぁ? 弟だと? お前が妹だろ? さっきそう決めたじゃねぇか!」

「ジャンケンで勝ったのは私。私が姉。お前は弟」

「あぁ? じゃあもっかいやるか?」

「望むところ」

 えっ? えっ? えっ? 

 いきなり部屋に現れたのは漆黒のローブを羽織り身の丈ほどの大きな鎌を持った男女?2人。

 男性の方は完全な骸骨で、頭蓋骨の片目の所に切り傷がある。かなり長身で足はなく、ぷかぷか浮いている。

 女性の方はなにやら骸骨の仮面を被っている。身長は今の俺とほとんど同じくらい。ちゃんと地面に足をつけている。

 あ、あのー、どちら様でしょうか? いきなり宿に入ってきてジャンケンし出すとか、、、
 てかどっから入ってきたの?

「こ、これは、、、レイス?」

「そ、そそそ、そうみたいでござるな。あ、主殿。拙者はしばしの間厠に行ってくるでござる。ではっ、さらばぁ!」

「ふおぉおぉ! レイス! レイスが見えるぅ!」

 シャルルは困惑。半蔵ビビって、ヤミは大喜び。

「ほら、私の勝ち。私が姉」

「ぬぐぉぉぉぉ!!! 俺が、俺が弟になるなんてぇぇぇ!!!」

 な、なんだこのカオスな状況・・・

 と、とりあえずこの2人に事情を聞こう。   

「あ、あのぉ、どちら様ですか?」

 そう尋ねるとさっきまで言い争っていた男女2人は急にビシッと気をつけをして恭しく頭を下げた。

「えー、この度はぁ、俺たち姉弟を解放して下さってありがとーございます! 俺たちはァ死ぬまであなた様にお仕えさせていただきたいとォ思っておりマァス!」

「ありがと。ちなみに私達は瓶に閉じ込められてたレイスだよ」

 な、なんだ? キャラが濃いな。って! あのレイス達の進化体かよ!

「レ、レイスって進化すると喋るの?」

「カーハッハッハッハッ! 喋るわけないだろぉ! 俺達が特別ってもんよ!」

「そう、普通のレイスはゴーストへと進化するよ」

 そ、そうなんだ。

「で、2人は何に進化したの?」

「おう! よォくぞきいてくれたっ! 俺達は死神に進化したんだ! ちなみに俺の方が魔術などを中心に戦うんだぜ!」
  
「私は物理。だから弟の鎌は飾り」

「うっせぇ! 俺の鎌はちゃんと杖としても作用してるっての!」

 し、死神かぁ! ・・・俺たち死なない?

「主様を殺すなんてとんでもない。というよりも不可能。お仕置きくらいなら」

「俺はお仕置きすら出来ねぇな!」

 お、お仕置きって、、、

 でも俺と一緒にこれから行動するってことだよね。じゃあ名前聞いとかないとね。

「じゃあ2人のお名前は?」

「ねぇな」

「ないよ」

 む、むぅー。これは俺がつける流れか? よし付けちゃおう!

 死神は確か英語でグリムリーパー、だったりデスって呼ばれてるんだよなぁ。や、ヤバい。思い浮かばんぞ? ええい! なるようになれ!
 
「じゃ、じゃあ姉の方がリリス、弟の方がクリスだ!」

 うん、そっくりそのままクラスターアマリリス、彼岸花から取ってきた。べ、別におかしくないよね? 大丈夫だよね?

「主様が名前を付けてくれた! 嬉しい!」

「名前か、、、確かにいいもんだな!」

 二人とも喜んでるからいいよな? いいよね? 

 しかし俺には2人について1つ知りたいことがある。

 パカっ!

「にゃ!にゃにをぉう! にゃにをすりゅんでしゅかぁぁぁぁ!」

「カッハッハッ! お前仮面取られてやんのー!」

「うにゅーー!」

 そう、俺が知りたかったのはリリスの素顔だ。
 ちなみにめっちゃ可愛かった。
 あどけない顔立ちなのにめっちゃ顔が整ってんの。なんで顔隠してるんだろ。

 リリスは今、俺から仮面をなんとか取り返して自分の顔につけている所だ。

「主様ひどいっ! リリスの仮面は大事なの! だから取らないで!」

「えぇー、リリスの顔また見たいなぁー」

「・・・気分が乗ったらみせてあげる」

 おっ? デレた。あんまりツンツンしてないけども。

「アッハッハッハッハッ! デレデレじゃねぇか!」
 
「う、うるさいっ! 主様は後でお仕置き!」
 
 うんうん、これだけ明るいメンバーなら島のみんなとも馴染めそうだね。

「な、、、レイスが? し、死神・・・? 喋る・・・? えっ?」

「レイスっ! 喋るレイス! 凄いっ!」

『ねぇー、ルーもお話したいー!』

「あ、アンデッド、、、こ、怖いでござるぅ」

うん! 早速馴染めるか不安になってきたぞぅ!

 というか半蔵気絶してんじゃねぇか!
 


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