ぷかぷか孤島になっちゃった?

睡蓮

第32話 お偉いさんが来た!

 各国のお偉いさん方が来る当日となった。俺の仕事は料理を作るだけなのでとっても楽である。
 というより料理自体はもう完成していて、保管庫に保存してあるので実質やることなんかひとつもない。あとは盛り付け組にその料理を渡すだけなのだ! 
  

 一方でディースと海竜とムガルは明らかに不機嫌である。俺と顔を合わせる度に「お前ばっかり楽してんじゃねぇよ」みたいな顔で見られるので少し居心地が悪い。


 ディアンヌ、ルージュ、マーシーの3人は手順の最終確認やドワーフ達がこの日の為に作った宿泊施設などの確認をしていた。


 宿泊施設施設といっても会議室みたいな場所もあるし、お偉いさん方が揃って会食を行う部屋などもあるのでとても大きい。なのにも関わらず飾りにも工夫が凝らされている。この建物をドワーフ達は1日で仕上げたのだ。やっぱり凄い。


 ちなみにリーフィアとアイネは俺と同じで今日はとことん暇だ。なのでダンジョンでスーちゃんと戯れたりしてのんびり暮らそうと思っている。 
 それを聞いたときのディースの顔は少し面白かった。


 「はぁ、では迎えに言ってくるでの」


 「おう、いってらっしゃい!」


 海竜がため息をつきながらお偉いさん達を迎えにいった。


 「いやぁ、海竜さん達には悪いことしましたねぇ」


 ルージュがそう呟く。それにくってかかるのはドワーフとディースであった。


 「そうじゃぞ! そもそもハルが自ら出向いて居ればこんなことにはならんかったのじゃからな!!」


 「そうですよ!! ハルさんだけなにもしないなんて不公平です!! このニートめ!」


 「はぁ? 俺はお前らに出来ない料理をしただろ! あと俺はニートじゃねぇ!!」


 まったく、失礼な奴らだ! でも確かに俺ほとんどなんにもしてないよな? いーや! 家事だって立派な仕事なんだ。それなら俺もしっかりと仕事をしていることになる。そういうことにしておこう。


 「まぁ、ご主人様を前に出せないのは性格に難アリってのが一番の理由ですからねぇ」


 「ぶふふ! ハルさん!性格に難アリですって! ふふふ!」


 ルージュの言葉を聞いてディースが俺を指さして笑う。うっぜぇ。


 「なにが難アリなんだよ!」


 ルージュがため息をついて答える。


 「ハルさんがもし話し合いに参加したとして妥協点探るってことしないですよね?」


 「する必要ないし。一方的に飲んでもらうんじゃダメなの? 正直、ブリクストの問題は解決したけどそれ以上に大きな問題降りかかりそうだから建国のこと白紙にしたいんだけど」


 「いや、流石にそれはダメですって! それこそ他の国が攻めてきたりしますよ!」


 「撃退すればよくね?」


 「いや、それブリクストの時より悪化してますから!」


 「むむむっ!」


 確かにそれならブリクストのことを軽くあしらい続けるだけで良かったもんな。


 「私たちが望んでるのは不干渉。つまり鎖国です。正直この島はこの世界全てを巻き込んだ戦争の種火といっても過言ではありません。
 ならばその戦争を防ぐという名目で完全なる鎖国を実現させます。
 幸いこの島にはかなりの戦力が整っているため、最悪数カ国と戦争になっても負けることはないでしょう。その戦力を誇示しつつ鎖国、最悪でも各国の王族、貴族以外の島への出入り禁止までは持っていくつもりだとディアンヌが言っていました!」


 うん、よくわかんね。まぁ、あれだな。「お前らうちを取り合って戦争する気やろ! なら俺は誰とも手を組まん! えっ?攻めてくる? よっしゃかかってこい!」って感じだろ?


 「終盤がまったく違います。例えるなら瓦割り見せて相手を脅す感じです」


 ディアンヌが俺の心を読んで返事をしてくる。


 むむむ、難しいなぁ。やっぱり俺には政治とか無理だわ。


 「とにかく! ご主人様は余計なことをしなければいいんです! あとは私達がうまーく終わらせておきますから」


 うーん、なんか腑に落ちない感じはするけどここはみんなに任せて、俺はスーちゃんとフリスビーでもして遊んでいよう! それがいい!


 俺はそう思い込むことにして、リーフィアとアイネとスーちゃんを連れて赤い裂け目のダンジョンへと向かった。


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 あの後お偉いさんが帰るまで俺がダンジョンから出たのは食事を盛り付け組へと渡す時だけであった。島の警戒眼にも反応はなかったし、多分上手くいったのだろう。


 俺はマーシーに呼ばれたので3人と1匹でダンジョンを出た。当たり前といっちゃ当たり前だが、そこにはダンジョンに入る前と何一つ変わらない光景があった。


 「マスター、おはようございます。話し合いは予定通りこちらの鎖国を認める形で幕を閉じました。
 エルフやヒューマンの国が移民を受け入れろなどと言っていましたがそれも却下させて頂きました。
 ですが、この島に最も近い多民族国家からの貿易の取引は引き受けました。条件として日帰りで帰ること、貿易は月に2回まで、貨幣を使った取引は認めずに物々交換のみでの貿易となりました。
 こちら側の求めるものとしては家畜、植物の種が中心となります。向こう側に輸出するのは作物と鉱物と海産物です。取引の相場としてはこちら側が有利な貿易と言ってもいいでしょう。」


 まぁ、鎖国っていっても完全にシャットアウトする必要はないしね。しょうがないか。


 「そして、その取引を行うのはマーシーを主とした今回給仕として働いた妖精達です。
 この子達はとても頭が良いらしいので上手くやってくれると思いますよ。」


 そう言うと5人の男女交じった妖精がディアンヌの後ろから現れてぺこりと頭を下げる。
 確かに礼の角度も揃っているし、みんな少しおとなっぽい雰囲気を出している。この子達なら大丈夫だろう。


 「あと、一つだけ残念なお知らせが。多民族国家の中にはエルフも居て、アイネが少し気分を害してしまう恐れがあります。
 エルフは入島禁止とする訳にも行かなかったのです。申し訳ありません。ですから今後はアイネは出来るだけ港の方へ近づかないで頂けると助かります」


 後ろで聞いていたアイネは大層不安げな顔をしながらも首を縦に振った。


 「大丈夫よ。私もハルも皆もそんなことになってもちゃーんとアイネのこと守ってあげるから。心配しないで」


 いつになくリーフィアが優しい声でアイネを慰める。こういう時のリーフィアは凄く頼りになる。お姉さんって感じでどこか安心できる気がする。


 「ディアンヌ! あと一つ忘れてるわよ!」
  

 ルージュが慌てて付け足す。


 「あっ! そうでした! あの監禁していた勇者たちはヒューマンの統一国家に引き取られていきました。
 これは私たちのいない所で決まったものでしたので拒否することも出来たのですが、めんどくさかったので引渡しました。」


 「その見返りは?」


 「かなりのお金を頂きました。しかし、使い道が全くないため今のところは貯蓄という選択になるでしょう」
  

 「まぁ、見返りとしてお金貰ってるんだったらいいか。でもなぁ、なんかいやな予感するんだよなぁ」
  

 俺はそんな気味の悪い予感に後ろ髪を引かれながらも大きな問題がすっぱりと解決したことに安堵の息を漏らした。

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