ぷかぷか孤島になっちゃった?

睡蓮

第20話 ぷかぷか孤島 vs 海竜の巫女と黒の勇者

 私は海竜の巫女。先祖代々ブリクスト大皇国に仕えている。私たちが代々仕えてこれた理由。それは私たちが海竜と交わした契約にある。
 私たちの祖先は大昔、海竜の子供を助けたことがあった。そして、それに恩義を感じた海竜は我が一族と契約を交わした。


 1、海竜は一族に代々伝承できる特別なスキルを付与すること。
 

 2、困っているときは貸し借りなどなしで協力し合うこと。
  

 3、一族が与えられたスキルを悪用してしまったと感じた時、そのスキルは海竜により取り上げられる。


 実に簡単な契約内容だが、この契約はとても重い。違反した場合、即座に命を奪われる。


 海竜が私たち一族に授けたスキル。それは『予言』 このスキルは自分の見たい未来。つまり楽しい事が見たければ楽しい事。金になることが見たければ金になるようなことの未来を月2回まで予言することが出来る。たまーに外れることはあるけど、でも的中率は80%を超える。


 私が今回見たのは国の富になるものの未来。そこでドワーフと楽園の孤島の予言を受けた。
 ドワーフの方は当たったか当たってないか微妙だったけど無理矢理当たったことにしておいた。実際富を得たのは事実だしね。


 しかし、楽園の孤島は別だ。調査隊を派遣したにも関わらず手がかりさえ見つからない。このままだと百発百中と名高い私の予言に泥がついてしまう! これは由々しき事態だ! なので、私自ら黒の勇者とともに楽園の孤島を探し出すことにした。


 黒の勇者とは我がブリクスト大皇国に仕える転生者である。光の神と闇の神が力を合わせて異世界から呼んできた転生者。その力は凄まじく、正に一騎当千、他国との戦争で戦況をひっくり返したり魔王と呼ばれる悪しきもの共の幹部を単独で討伐するなどの目覚しい活躍を誇っている。
 今回はそんな勇者を借りて遠征へ行くのだ。失敗は許されない。だが、そんな心配は無用。なぜなら私は歴代最高の海竜の巫女なんだから!


 「見えないですね。」


 黒の勇者が呟く。おかしい。そんなはずはない。私の予言はここら辺に楽園の孤島があると示している。しかし、そこにはただ海が広がるだけで水平線すらくっきりと見える。


 仕方が無いので私は当初の計画を実行する。


 「勇者よ。飛ぶ斬撃を撒き散らしなさい。」


 すると勇者は驚いたようで


 「良いんですか? 言っときますけど孤島に当たったら多分島は木っ端微塵ですよ?」


 「いいのよ! 私の予言が外れていないということさえ分かればそれでいいの!」


 すると勇者はやれやれといった感じで私のことを見る。仕方がない。自分でも自己中心的なのは分かっている。でも我慢ならない。私の予言が外れていると思われるのは我慢ならないのだ。
 

 「分かりました。それじゃ、行きますよ!!!」


 黒の勇者は腰についた鞘から長い細身の片刃の剣を振り抜く。すると黄色い半透明の斬撃がかなりの速さで飛んでいく。その斬撃は海を割り、随分遠くの方でふっと消えた。見えなくなっただけなのか斬撃が消えてしまっただけなのか分からなかった。そんな斬撃が無数に、そしてあらゆる方面に向かって飛んでいく。勿論味方の船は全く傷つけておらず、斬撃はカーブして味方の船を避けていく。


 ある程度撃ち込んだところで私はあることに気付く。さっきから前方の少し遠いところに1箇所だけ、全くと言っていいほど斬撃の及んでいない範囲がある。斬撃がそこを通過しようとすると斬撃はふっと消えてしまう。


 「見つけた!」


 私は嬉しくなって身を乗り出す。勇者は斬撃を飛ばすのを止め、私に尋ねる。


 「で、どこにあったんですか?その楽園の孤島とやらは。」


 「前方の少し遠いところにあるわ! 見てなさい!」


 私は斬撃の消えた場所に向かって魔法を放つ。巨大な氷塊をぶつける氷の魔法だ。するとその氷塊はさっき斬撃の消えた場所と同じ場所で消えてしまった。


 「あそこよ。」


 「確かに、あやしいですね。楽園の孤島でないにしろ、確実に誰かは居ますね。」


 「楽園の孤島以外ありえないわ!! さぁ!上陸するわよ!!」


 「大丈夫かなぁ。」


 私たちがそんな会話をしている時それは突然現れた。


 「別にそんな焦らなくてもいいじゃありませんか。というよりあの斬撃も氷塊も防ぐの大変でしたよ。まったく。」


 急に私たちの前に現れたそれは呆れたような目で私たちの顔をみて首を横に振っていた。それはピンク色の髪に白の猫耳としっぽ。そして何より胸に実った2つの果実が特徴的な少女だった。
 勇者はいきなり現れた曲者に斬撃を浴びせる。さっきよりも大分弱めだった。それを少女は顔色ひとつ変えずに避ける。避ける。避ける。


 「いきなり切りかかってくるなんて礼儀がなってないですね。」


 無駄口を叩く余裕さえ残している。勇者は一旦剣を鞘に収める。


 「お前は一体何もんだ。」


 すると少女は答える。


 「私はこの島の主ですよ。いや、島そのものの方が正しいですね。で、今日はどんな御用で? 海竜の巫女に黒い勇者よ。」


 随分と上から目線なのが頭に来るが、要件を尋ねるということはこの少女の島が楽園の孤島に違いない。


 「えぇ、今日は貴方に話があって来たの。」


 すると少女は目を細めて微笑む。


 「へぇー、私にお話ですか。嬉しいですね。最近出来たばかりの島で話し相手が少ししかいなかったので嬉しいですね。で、話とは?」


 これなら交渉も上手く行きそうだわ。少なくとも私はこの時点ではそう思っていた。妙に大人びてはいるが所詮は子供。それに新しく出来た島。そんな所に猛者がいるわけが無い。断られたら強引にでも傘下に加えよう。そう考えていた。


 「えぇ、今日はあなた達の島を我が国ブリクスト大皇国の下について頂きたく思い、参上しました。」


 「なるほど。ですが、残念です。私の島はどこの国にも属すことはありません。これまでも、これからもです。それが島民たちの願いですからねぇ。」


 生意気な。たかがちっちゃな出来たての孤島の主。どうせ力だって知れているだろうに。それにも関わらず私たちに楯突こうなんて。


 「残念です。ですが、そうなると私たちも手を出さざるを得ません。勇者。」


 私が勇者に合図を送ると、今日1番の斬撃を水平線へと飛ばす。いわゆる脅しだ。流石に少女もびびったらしく、目を見開いていた。


 「さぁ、どうします?」


 私は笑いながら問いかける。まぁ、答えはひとつしかない
  

 「拒否します。」


 はっ? この戦力差で? 子供1人でこの黒の勇者と海竜の巫女を相手しようっていうの? それだけじゃない。ここには10隻もの戦艦がいる。まず、数の暴力で押し切れるだろう。そこにプラス黒の勇者と海竜の巫女だ。


 「分かりました。そこまで言うなら見せて上げましょう。ブリクスト大皇国の力をっ!!」


 すると少女は笑い出す。


 「アハハ! そんな弱っちい斬撃で何が出来るの? 斬撃を飛ばすって言うのはね、こうやるんだよ。」


 突然、少女の両手の指の付け根から青い透明な三本の刃が生えてくる。それは指に沿って動いていて猫耳、しっぽも合わさってそれはもう猫のコスプレにしか見えない。


 スっ。


 少女が腕を振るう。すると海が割れる。勇者のように斬撃が飛んでいる訳ではない。ただ、海面が深く割れている。先程の勇者の斬撃の倍以上は深いだろう。


 「あなたは両手で振ってあの程度。私は引っ掻いただけでこれだけの威力。さて、見せてもらいましょうか。ブリ大根の力を。」


 腹の底から怒りが湧き上がってくる。こいつは我が国を侮辱した!! もう、いい。こんな島などどうだっていい!! 勇者も同じ気持ちのようだ。いつもはやる気のない目が今日は目の奥に炎が燃えているように見える。
 なら私も取っておきを使おう。先祖代々伝わる海竜の力。今借りずにいつ借りる。貸し借りなし。しかし、今まで助けを求めなかったのは助けを求める必要がなかったから。そして力を借りると儲けが少ない。つまりは跡形もなく始末してしまうので相手の国から取れるものが無くなる。


 だが、もういい。楽園の孤島はあった。私と予言は当たっていた。だからもういい。私は横笛を構えて吹き鳴らす。その音は横笛にしては力強い。その代わり上品さの欠片もない。この音を聞いていると地が揺れているような錯覚を覚える。


 私は笛を吹き鳴らす。


 私の体は青い鱗に包まれて足は人ならざるものの形に。顔の側面には大きくエラが刻み込まれる。その姿はまるで人魚。いや、海竜人と言った方が良いのかもしれない。なぜなら魚の中にはこんなに美しく、気高く、そしてなおかつ雄々しい鱗など存在しないのだから。


 あぁ、早くおわしませ。我が盟友海竜よ。我らが力となりてあの憎き島の主を潰してしまえ。


 やがて海竜が訪れる。それは伝説よりも大きく、そして偉大だった。思わず恐れてしまうほどの大きさ。水面に出てきているだけで十分に大きい。なのに水面下には収まりきらんとばかりに巻かれたとぐろが見える。そして美しい鱗。私の鱗がくすんで見えるほどの輝き、鋭さ。


 あぁ、すばらしい。これが強さ。これこそが強さなのだ。


 そして海竜はついに口を開いた。


 「我が盟友の子よ。汝らは何を願い。何を乞う。」


 私は迷わずに答える。


 「我々に力を! あの悪しき島の主を破るための力を!!!」


 海竜も迷わずこう答える。


 「ムリ!」
 


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