異能学園のアークホルダー

奏せいや

エピローグ 3

 大柄の男は顔をしかめるも錬司を睨んだ。

「てめえ、まさか自分なら自由だと思ってるんじゃねえだろうな? いいか、ここは力自慢のやつらがいる場所なんだよ。外しか知らない奴がでかい顔出来る程甘くはねえんだ。すぐに分かる、力のない者は俺に従え」

「くっくっくっ」

「なにがおかしい?」

 面と向かって言われる降伏の勧告にしかし錬司は笑い出した。

 面白いのだ。

 力がすべて? ルールは絶対?

 変わらない。意味がない。たとえどんな状況で、どんな場所であろうとも。

 獅子王錬司の生き方は変わらないのだから。

 錬司は男を見上げた。表情はいつものニヤついた笑顔で。

「よう先輩がた。お前らなにをした? 引き籠りの罪で捕まったか?」

「んだとてめえ!」「やんのかオラ!」

「てめらこそなに寝言言ってやがる。俺に諦めろだと?」

 錬司は両腕を広げ男に近寄った。見上げる男の眉間にしわが寄っているのが見えるが気にしない。

「俺がてめえに従え? するわけねえだろ、俺は俺の生き方を諦めない」

 そして、錬司は目つきを真剣にした。

「たとえどんな状況だろうが、どんなに不利な条件だろうが俺は諦めない。俺は特別なんだよ、てめらとは違ってな」

 誰に言われようと関係ない。自分は自分。それは変わらないのだから。

 彼は、いつだって自分らしく生きていく。

「俺の名前は獅子王錬司。てめえらがどんな生き方しようが勝手だが俺は好きにさせてもらうさ。ルール? 力? 知るかバカ、勝手にお前らだけでやってろよモブキャラやろう」

 錬司からの答えを聞き男も納得したようだ。

 言って利くやつじゃない。相当な自信家かただの馬鹿だ。男は静かに闘志を膨らませていくと一気に爆発させた。

「そうか、どうやら知りたいようだな。ならここで教えてやるよ、ここでのルールを!」

 男が拳を振り上げる。それはここ、ダウンフォールで男に質量を与えている力そのもの。

「ああいいぜ、見せてみろよ。お前の力」

 それを前にして、それでも錬司は動じない。

「見るがいい、そして知れ」

 自分の道を信じてる。

「お前らは雑魚だ、真の特別を教えてやろう」

 自分ならやれると確信している。

「俺はランクFアーク、無名のアークを発動! 俺のアークの効果! 念じたものを一ミリだけ動かす!」

 周りなど関係ない。

 何故ならば――

 己の人生シナリオの主役はただ一人!

「てめえの傲慢、俺が裁く!」

 ここはダウンフォール刑務所。異能と暴力の監獄だ。

 ここには夢も希望もない。

 だが、

 しかし、

 だとしても。

 錬司は己を証明するために立ち向かっていった。

 自分なら出来ると信じて。

 ダウンフォールに立ち向かう。

 ハイランクの優越に浸る罪人よ震えるがいい。

 生まれつきの才能に浮かれる愚者よ泣くがいい。

 ランク至上主義の終わりの時だ。

 これは、『ランクF』が時代を変える物語――

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