異能学園のアークホルダー
姫宮詩音なんですけど!
「お前、吹き飛ばされてもいいのか?」
「それは嫌だけど~、でも~、それはわたしに力がないからいけないってことでもあるし~」
「怒らねえんだな」
「それに、わたしじゃ錬司君には敵わない」
「知ってんのか俺のこと」
「中学同じだったもん」
「そいつは悪かったな」
「ホントだよ! 人の名前を知らないとか失礼なヤツだな君は! 最低だよ!」
「どこにキレてんだこいつ……」
「でも、わたしは見捨てない。友達を、わたしは見捨てないから」
姫宮の表情が変わる。真剣な目つきに変わりまっすぐな眼差しで錬司を見上げる。
彼女の雰囲気に当てられたように、錬司も真剣な雰囲気になっていく。
「お前、ランクは?」
「Fです」
「F?」
しかし、姫宮の答えを聞いた途端破顔した。
「はっはははは! いいなお前、気に入った。ランクFでその根性、見事なもんだよ。はっはははは!」
「????」
突然笑い出した錬司に姫宮は小首を傾げている。
「そうだ! ランクなんて関係ねえ、誰に否定されようが関係ねえ。自分を誰よりも自分が信じてやればいいのさ。誰もお前の決意を変えられないようにな」
姫宮はなにを言っているのか分からない顔をしていたが錬司は満足そうだった。豪快な笑い声が廃墟に響き渡る。そして一通り笑い終わると踵を返し歩き始めたのだ。
すかさず信也が聞く。
「どこに行くんだ、錬司?」
「気が変わった、見逃してやる。やろうとしてもそこの女がうるさそうだしな」
「姫宮詩音なんですけど!」
「だがな」
すると錬司は足を止め、凄みを含んだ声と顔で振り向いた。
「もしまた俺の前に出てみろ。その時は必ず仕留めてやる」
「錬司……」
横になりながら信也は錬司の顔を見つめていた。友人だった男からの宣告に、心からの疑問を投げかける。
「何故だ、どうしてこんなことをするんだ? 教えてくれ錬司! 錬司ぃいいいい!」
悲痛な叫びが廃墟に響き渡る。
けれど、錬司は答えなかった。
錬司の周囲が歪んでいく。気づけば錬司の姿は消えていた。
「どうして……なんで……」
「信也君?」
錬司が姿を消した空間をずっと見つめ続けていた。まだそこに彼がいるように。
ずっと憧れていたのに、その人は自分の敵になってしまった。
自分を倒すと、そう言った。
気づけば信也は泣いていた。悔しさか、悲しさか、判別つかない感情は涙となって溢れてくる。
「なんで……なんでだよぉおおおおお!」
諦めなければ道は開ける。己を信じる心、人間の可能性。
しかし、それを教えてくれた人はもういない。
信也の泣き声だけが木霊する。
*
「あー、今年からこの中学に入ることになった獅子王錬司だ。俺は俺で好きにやらしてもらうんで、お前らも好きにしてくれ。以上だ」
信也と錬司が再会するより二年前。信也のいた中学から転校した錬司は新たなクラスメイトの前で自己紹介していた。新しい学校に新しい仲間、本来なら緊張したり期待を抱くものだろう。
しかし、錬司が抱いた感想はそのどちらでもなかった。
(やっぱり変わらねえ。どこも始まりの村みてえだ)
簡素な印象、空虚な感情が胸を埋めていく。
(不思議だ、俺以外の人間が全員ゲームのキャラクターみたいに見える)
転校初日から、錬司はこんなことを思っていた。
(俺の居場所はここじゃねえ)
それから錬司は数人の男子に呼び出され体育館裏へと連れていかれていた。どうも錬司の自己紹介が気に入らなかったらしい。
それから十分後。
「があ!」「ぐは!」「て、めえ……」
背後で倒れている数人の男子を余所に、錬司は青空を見上げていた。
(つまらねえ)
勝利の余韻など存在しない。まるで勇者がスライムを倒したような作業的疲労しか感じない。
「俺は違うんだ」
「それは嫌だけど~、でも~、それはわたしに力がないからいけないってことでもあるし~」
「怒らねえんだな」
「それに、わたしじゃ錬司君には敵わない」
「知ってんのか俺のこと」
「中学同じだったもん」
「そいつは悪かったな」
「ホントだよ! 人の名前を知らないとか失礼なヤツだな君は! 最低だよ!」
「どこにキレてんだこいつ……」
「でも、わたしは見捨てない。友達を、わたしは見捨てないから」
姫宮の表情が変わる。真剣な目つきに変わりまっすぐな眼差しで錬司を見上げる。
彼女の雰囲気に当てられたように、錬司も真剣な雰囲気になっていく。
「お前、ランクは?」
「Fです」
「F?」
しかし、姫宮の答えを聞いた途端破顔した。
「はっはははは! いいなお前、気に入った。ランクFでその根性、見事なもんだよ。はっはははは!」
「????」
突然笑い出した錬司に姫宮は小首を傾げている。
「そうだ! ランクなんて関係ねえ、誰に否定されようが関係ねえ。自分を誰よりも自分が信じてやればいいのさ。誰もお前の決意を変えられないようにな」
姫宮はなにを言っているのか分からない顔をしていたが錬司は満足そうだった。豪快な笑い声が廃墟に響き渡る。そして一通り笑い終わると踵を返し歩き始めたのだ。
すかさず信也が聞く。
「どこに行くんだ、錬司?」
「気が変わった、見逃してやる。やろうとしてもそこの女がうるさそうだしな」
「姫宮詩音なんですけど!」
「だがな」
すると錬司は足を止め、凄みを含んだ声と顔で振り向いた。
「もしまた俺の前に出てみろ。その時は必ず仕留めてやる」
「錬司……」
横になりながら信也は錬司の顔を見つめていた。友人だった男からの宣告に、心からの疑問を投げかける。
「何故だ、どうしてこんなことをするんだ? 教えてくれ錬司! 錬司ぃいいいい!」
悲痛な叫びが廃墟に響き渡る。
けれど、錬司は答えなかった。
錬司の周囲が歪んでいく。気づけば錬司の姿は消えていた。
「どうして……なんで……」
「信也君?」
錬司が姿を消した空間をずっと見つめ続けていた。まだそこに彼がいるように。
ずっと憧れていたのに、その人は自分の敵になってしまった。
自分を倒すと、そう言った。
気づけば信也は泣いていた。悔しさか、悲しさか、判別つかない感情は涙となって溢れてくる。
「なんで……なんでだよぉおおおおお!」
諦めなければ道は開ける。己を信じる心、人間の可能性。
しかし、それを教えてくれた人はもういない。
信也の泣き声だけが木霊する。
*
「あー、今年からこの中学に入ることになった獅子王錬司だ。俺は俺で好きにやらしてもらうんで、お前らも好きにしてくれ。以上だ」
信也と錬司が再会するより二年前。信也のいた中学から転校した錬司は新たなクラスメイトの前で自己紹介していた。新しい学校に新しい仲間、本来なら緊張したり期待を抱くものだろう。
しかし、錬司が抱いた感想はそのどちらでもなかった。
(やっぱり変わらねえ。どこも始まりの村みてえだ)
簡素な印象、空虚な感情が胸を埋めていく。
(不思議だ、俺以外の人間が全員ゲームのキャラクターみたいに見える)
転校初日から、錬司はこんなことを思っていた。
(俺の居場所はここじゃねえ)
それから錬司は数人の男子に呼び出され体育館裏へと連れていかれていた。どうも錬司の自己紹介が気に入らなかったらしい。
それから十分後。
「があ!」「ぐは!」「て、めえ……」
背後で倒れている数人の男子を余所に、錬司は青空を見上げていた。
(つまらねえ)
勝利の余韻など存在しない。まるで勇者がスライムを倒したような作業的疲労しか感じない。
「俺は違うんだ」
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