異能学園のアークホルダー
俺は証明してみせる、俺自身を!
錬司が指を弾く、瞬間、信也は完全な暗闇に包まれていた。これでは接近できない。
「こい、エレメント・ロード!」
しかし信也はエレメント・ロードに切り替え光と音を操った。直後視界が晴れ渡り錬司の姿を確認する。
「やってくれるな」
だが、そこにいる錬司は未だに余裕の表情だった。
「止めてくれ錬司! 俺は、本当にお前とは戦いたくないんだよ!」
「なら力づくで止めてみな」
錬司は止まらない。変わらない。それを悔しく思いながらも信也はどこか納得していた。この男は決めたことはやり通す。そういう男だからこそ信也は彼に憧れたのだ。
「こい、ガンスリンガー!」
信也は青いジャケット姿へと姿を変える。その手にはサブマシンガンを二つ握っており錬司に向ける。しかしすぐには撃てなかった。相手は憧れの錬司だ。撃つのに一瞬躊躇う。
それでも覚悟して信也は発砲した。銃声が鳴り響く。急所を外し、いくつもの猛威が錬司へと叩き込まれる。
「なに!?」
だが、すべての弾丸が錬司の前で軌道を変えていた。真っ直ぐ飛んでいた弾丸は床や天井に着弾し錬司に当たったものは一つもない。
「この程度か信也? ランクAってのはこんなもんなのかよ」
錬司から突風が吹き荒れた。その猛威は台風さながらで信也から体の自由を奪う。もし樹が植えてあれば根本から引き抜かれていただろう、気を緩めた直後吹き飛ばされそうだ。
「エレメント・ロード!」
信也はなんとか変身すると突風をかき消した。全身に受けていた強風が消え脱力するがすぐに気を引き締めた。
「待ってくれ錬司! 俺は、俺は!」
言うか迷った。昔から抱いていた想いを伝えることを恥ずかしいと思う。それでもこの状況で、二人の戦いを止められるならいいと信也は言った。
この二年間、抱いていた夢を。
「お前に憧れていたんだ! いつも諦めないお前に! だから、お前とは戦いたくないんだよ!」
ずっと憧れていた。なにも出来ない自分にはいつだって錬司は輝いていた。何度も救われたし、教えられた。
諦めなければ道は開ける。諦めない心、人間の可能性。
そして思ったのだ。
自分でも、いつかは錬司のような人間になりたいと。
「ハッ」
しかし、その夢は本人によって笑われた。
「そんなんだから、お前は駄目なんだよ信也」
錬司は右の手の平を胸の前で上に向けた。すると手の平の上でバチバチと火花が散っていたのだ。なにもない空間でなにが起こっているのか普通ならば分からないだろう。
しかし信也には分かる。元素を極めた今の信也なら。
「嘘だろ……」
エレメント・ロードの信也が見たもの。
それは、錬司の手の平の上で粒子が高速で動き粒子同士が衝突しているものだった。粒子がぶつかり壊れる。それによって生まれる新たな粒子。
反物質の生成。ランクCの芸当だ。
「俺は証明してみせる、俺自身を!」
錬司は叫んだ。それに呼応するように小さな火花が増えていく。
信也は再び放心状態へと陥っていた。憧れの人と戦うことも、そして、彼が行なっているめちゃくちゃも。
姫宮は言っていた。獅子王錬司はランクFだと。しかしこれはなんだ? これのどこがランクF? 誰だって思うはずだ、ふざけるなと。信也も思った。
(ふざけんな、なんだそれ。ランクFが光学迷彩に音波の遮断、風向操作に果ては反物質の生成だと? 全部ランクC相当じゃねえか!)
混乱していた。破綻していた。この男の所業に、アークホルダーの限界を超えた異能(アーク)に。
分からない。どうしてそんなことが出来るのか。
――どうして、戦わなければならないのか。
そんな信也に錬司は叫ぶ。
己の想いを。信也もよく知っている彼の渇望を。
「俺は、特別になるんだよぉお!」
そして錬司は右手を信也に向けた。反物質を解き放ち物質と接触、結果生まれる膨大なエネルギーに指向性を持たせ信也を襲ったのだ。
さきほどの突風など話にならない。空間が震撼した。床はひび割れ天井は震える。信也のみを狙い撃った爆発の奔流。
「うおおおおお!」
「こい、エレメント・ロード!」
しかし信也はエレメント・ロードに切り替え光と音を操った。直後視界が晴れ渡り錬司の姿を確認する。
「やってくれるな」
だが、そこにいる錬司は未だに余裕の表情だった。
「止めてくれ錬司! 俺は、本当にお前とは戦いたくないんだよ!」
「なら力づくで止めてみな」
錬司は止まらない。変わらない。それを悔しく思いながらも信也はどこか納得していた。この男は決めたことはやり通す。そういう男だからこそ信也は彼に憧れたのだ。
「こい、ガンスリンガー!」
信也は青いジャケット姿へと姿を変える。その手にはサブマシンガンを二つ握っており錬司に向ける。しかしすぐには撃てなかった。相手は憧れの錬司だ。撃つのに一瞬躊躇う。
それでも覚悟して信也は発砲した。銃声が鳴り響く。急所を外し、いくつもの猛威が錬司へと叩き込まれる。
「なに!?」
だが、すべての弾丸が錬司の前で軌道を変えていた。真っ直ぐ飛んでいた弾丸は床や天井に着弾し錬司に当たったものは一つもない。
「この程度か信也? ランクAってのはこんなもんなのかよ」
錬司から突風が吹き荒れた。その猛威は台風さながらで信也から体の自由を奪う。もし樹が植えてあれば根本から引き抜かれていただろう、気を緩めた直後吹き飛ばされそうだ。
「エレメント・ロード!」
信也はなんとか変身すると突風をかき消した。全身に受けていた強風が消え脱力するがすぐに気を引き締めた。
「待ってくれ錬司! 俺は、俺は!」
言うか迷った。昔から抱いていた想いを伝えることを恥ずかしいと思う。それでもこの状況で、二人の戦いを止められるならいいと信也は言った。
この二年間、抱いていた夢を。
「お前に憧れていたんだ! いつも諦めないお前に! だから、お前とは戦いたくないんだよ!」
ずっと憧れていた。なにも出来ない自分にはいつだって錬司は輝いていた。何度も救われたし、教えられた。
諦めなければ道は開ける。諦めない心、人間の可能性。
そして思ったのだ。
自分でも、いつかは錬司のような人間になりたいと。
「ハッ」
しかし、その夢は本人によって笑われた。
「そんなんだから、お前は駄目なんだよ信也」
錬司は右の手の平を胸の前で上に向けた。すると手の平の上でバチバチと火花が散っていたのだ。なにもない空間でなにが起こっているのか普通ならば分からないだろう。
しかし信也には分かる。元素を極めた今の信也なら。
「嘘だろ……」
エレメント・ロードの信也が見たもの。
それは、錬司の手の平の上で粒子が高速で動き粒子同士が衝突しているものだった。粒子がぶつかり壊れる。それによって生まれる新たな粒子。
反物質の生成。ランクCの芸当だ。
「俺は証明してみせる、俺自身を!」
錬司は叫んだ。それに呼応するように小さな火花が増えていく。
信也は再び放心状態へと陥っていた。憧れの人と戦うことも、そして、彼が行なっているめちゃくちゃも。
姫宮は言っていた。獅子王錬司はランクFだと。しかしこれはなんだ? これのどこがランクF? 誰だって思うはずだ、ふざけるなと。信也も思った。
(ふざけんな、なんだそれ。ランクFが光学迷彩に音波の遮断、風向操作に果ては反物質の生成だと? 全部ランクC相当じゃねえか!)
混乱していた。破綻していた。この男の所業に、アークホルダーの限界を超えた異能(アーク)に。
分からない。どうしてそんなことが出来るのか。
――どうして、戦わなければならないのか。
そんな信也に錬司は叫ぶ。
己の想いを。信也もよく知っている彼の渇望を。
「俺は、特別になるんだよぉお!」
そして錬司は右手を信也に向けた。反物質を解き放ち物質と接触、結果生まれる膨大なエネルギーに指向性を持たせ信也を襲ったのだ。
さきほどの突風など話にならない。空間が震撼した。床はひび割れ天井は震える。信也のみを狙い撃った爆発の奔流。
「うおおおおお!」
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