異能学園のアークホルダー
ここアークアカデミアは選定するだろう、真の特別を
アークを得られるのは可能性に満ちた子供の間だけ。まるで大人は行けない子供の楽園のようだ。
そんな夢のような話を、けれど彼女は厳然と言う。
「しかし」
だから、その後に続く彼女の言葉に唐突さはなかった。
「君たちは知ることになるだろう。上には上がいるということを」
絶対の真実を語るように、上級生である生徒会長は新入生に告げる。ここでの掟を。
「社会は弱者に甘くない。それが現実だ。君たちがなにを求めてアークアカデミアの門に足を踏み入れたのか私には分かる。
理想の実現。夢の追求。布団の中で思い描いた妄想の続き。表現はなんでもいいが、それらを求めて君たちはアークを欲したはずだ。
君の世界を楽園に変える箱舟だ。しかし、本当に楽園へ行けるのは一握り。ここにいる全員が今やアークを持っている。
ならばアークとはもはや特別でもなんでもない。私たちの中では。そう、君と同じ者など、いくらでもいるのだよ」
特別を求めた者たちへ告げる、それはあまりにも夢も希望もない言葉だった。
「すべての者が特別になるということはあり得ない。故に、ここアークアカデミアは選定するだろう、真の特別を」
特別も百人集めれば凡人に成り下がる。その群れの中で、さあ、輝けるかと彼女は言った。
「我々が求めるのは真の特別のみ。現実に理想が入り込む余地などない。夢でも妄想でもない、今こそ現実を直視しろ。そして知るがいい。生まれ持ったランクこそが、特別への切符なのだと」
ランク。アークを区分けするもの。
「入学生の諸君。ようこそ、現実へ。すべての者が特別になれるなど、そんな可能性はどこにもない」
生徒会長の女性は会釈するとマイクから一歩下がった。壇上を去っていく後ろ姿は強烈で、入学生はもとより上級生すら唖然と彼女の背中を見送っていた。
そこに、反論しよう者など一人もいなかった。
――彼以外は。
「そんなことはない!」
「ん?」
彼女の足が止まる。その足を止めた大声、その人物に視線が集まった。
「人間に、可能性はある!」
「信也君?」
姫宮も列から顔を出し声の主を見つめた。そこにいたのは神崎信也。
信也は列を掻き分け檀上へと近づいていく。その猛然とした歩みに前の人から道を開けていった。
「おい、なんだあいつ?」
「なにをする気だ?」
信也の行動にざわざわと話し声が聞こえ始める。
信也は檀上の下にまで辿り着いた。見上げる先には冷たい刃を思わせる生徒会長。
けれど、信也は瞳に情熱を宿して言った。
「人間の可能性を否定する奴を、俺は認めない!」
目の前で可能性を否定した生徒会長へ、信也は食いついた!
「誰しもが自分の夢を成し遂げ、理想を実現する可能性がある!」
「そんなものはない」
「ある!」
「ない」
「ある!」
「ない」
「俺は知ってる!」
「私は知らん」
「人間に可能性はある!」
「そんなものはない」
「ある!」
「ない」
「ある!」
「ない」
「ならば証明してやる、人間の可能性を!」
「お前が?」
「俺がだ!」
「名前は?」
「神崎信也」
「ランクは?」
「Aだ」
「ランクA? あり得ん」
「あり得る!」
「あり得ん」
「あり得る!」
「あり得ん」
「あり得ーるだろ!」
「あり得ん」
そこで初めて鉄仮面のような生徒会長の眉が動いた。
そんな夢のような話を、けれど彼女は厳然と言う。
「しかし」
だから、その後に続く彼女の言葉に唐突さはなかった。
「君たちは知ることになるだろう。上には上がいるということを」
絶対の真実を語るように、上級生である生徒会長は新入生に告げる。ここでの掟を。
「社会は弱者に甘くない。それが現実だ。君たちがなにを求めてアークアカデミアの門に足を踏み入れたのか私には分かる。
理想の実現。夢の追求。布団の中で思い描いた妄想の続き。表現はなんでもいいが、それらを求めて君たちはアークを欲したはずだ。
君の世界を楽園に変える箱舟だ。しかし、本当に楽園へ行けるのは一握り。ここにいる全員が今やアークを持っている。
ならばアークとはもはや特別でもなんでもない。私たちの中では。そう、君と同じ者など、いくらでもいるのだよ」
特別を求めた者たちへ告げる、それはあまりにも夢も希望もない言葉だった。
「すべての者が特別になるということはあり得ない。故に、ここアークアカデミアは選定するだろう、真の特別を」
特別も百人集めれば凡人に成り下がる。その群れの中で、さあ、輝けるかと彼女は言った。
「我々が求めるのは真の特別のみ。現実に理想が入り込む余地などない。夢でも妄想でもない、今こそ現実を直視しろ。そして知るがいい。生まれ持ったランクこそが、特別への切符なのだと」
ランク。アークを区分けするもの。
「入学生の諸君。ようこそ、現実へ。すべての者が特別になれるなど、そんな可能性はどこにもない」
生徒会長の女性は会釈するとマイクから一歩下がった。壇上を去っていく後ろ姿は強烈で、入学生はもとより上級生すら唖然と彼女の背中を見送っていた。
そこに、反論しよう者など一人もいなかった。
――彼以外は。
「そんなことはない!」
「ん?」
彼女の足が止まる。その足を止めた大声、その人物に視線が集まった。
「人間に、可能性はある!」
「信也君?」
姫宮も列から顔を出し声の主を見つめた。そこにいたのは神崎信也。
信也は列を掻き分け檀上へと近づいていく。その猛然とした歩みに前の人から道を開けていった。
「おい、なんだあいつ?」
「なにをする気だ?」
信也の行動にざわざわと話し声が聞こえ始める。
信也は檀上の下にまで辿り着いた。見上げる先には冷たい刃を思わせる生徒会長。
けれど、信也は瞳に情熱を宿して言った。
「人間の可能性を否定する奴を、俺は認めない!」
目の前で可能性を否定した生徒会長へ、信也は食いついた!
「誰しもが自分の夢を成し遂げ、理想を実現する可能性がある!」
「そんなものはない」
「ある!」
「ない」
「ある!」
「ない」
「俺は知ってる!」
「私は知らん」
「人間に可能性はある!」
「そんなものはない」
「ある!」
「ない」
「ある!」
「ない」
「ならば証明してやる、人間の可能性を!」
「お前が?」
「俺がだ!」
「名前は?」
「神崎信也」
「ランクは?」
「Aだ」
「ランクA? あり得ん」
「あり得る!」
「あり得ん」
「あり得る!」
「あり得ん」
「あり得ーるだろ!」
「あり得ん」
そこで初めて鉄仮面のような生徒会長の眉が動いた。
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