異能学園のアークホルダー
誰かが人間の可能性を否定している気配がしたからさ
見上げる少年の顔つきが変わる。今までの少し陰の入った表情ではなく、やる気の入った力強い顔。
ランクAというだけで特別だというのに、そんな人が言う特別とはなんだろうか。
「俺にとっての特別っていうのは、どんな不利な状況でも絶対に諦めないこと。自分を信じる心。人間の可能性、それが俺にとっての特別なんだ」
「へえ~」
感心した。こうも大々的に言うことに。それだけに彼の強い想いを感じた。
「人間の可能性かぁ」
その言葉は不思議と姫宮の胸を惹きつけた。姫宮自身夢を追いかけてアークアカデミアに入学したからかもしれない。
なりたい自分になるために自分の可能性を諦めず進んでいくこと。
その覚悟と情熱なら、姫宮も持っていたから。
「すごくいいよ! わたし、立派だと思うよ!」
「ほんとに? これ言うと普通笑われるんだよな、変なのって」
「ううん! そんなことない。わたしの胸にビビっときたもん!」
「はは、そっか」
信也は小さく笑う。そんな彼に「うんうん、そうだよ」と姫宮は頷いた。
「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったけ!? 私姫宮詩音! 今年入学する一年生!」
「ああ、俺も入学生だよ」
「そうなの!? でもどうして信也君はここにいたの? それで私は助かったんだけど」
正門前は時間もあって誰もいない。それに用もなければ普通立ち寄らない場所だ。どんな事情があってこの彼はここにいたのか。
「ああ、そんなことか」
姫宮の疑問に信也は当然のように答えた。
「誰かが人間の可能性を否定している気配がしたからさ」
「…………」
(どんな気配だろう)
姫宮一生の謎が生まれた。
「それよりも姫宮さんは」
「あ、姫宮でいいよ。私、キャラ的にさんって感じじゃないしねー」
「じゃあ姫宮、どうして姫宮はこんな場所に?」
「わたし?」
「うん、だってもう遅刻だぜ?」
「あ!」
信也からの言葉に慌てて腕時計に目を落とす。すると時刻は入学式の時刻をとっくに過ぎていた。
時計の長針はうさぎとかめのかけっこよろしく姫宮を追い抜いていたのだ。
「しまったぁあああああああああああ!」
「今からでも急ごう、体育館に直接行けばまだ間に合うかもしれない」
「よっしゃあ! 私の心に火をつけろ姫宮エクストリームダッシュを見せてやるんだ! どりゃああああ!」
「速い!?」
そうして、慌ただしい事件こそあったものの無事終わり、イノシシのように走る姫宮の後を信也が追いかける形で二人は入学式に向かって走っていくのだった。
*
第三アークアカデミアでは入学式を待たず一つの噂が学園内をざわつかせていた。
誰が聞いたのか誰が言ったのかはっきりとはしないが、それは生徒たちの関心を惹きつけるには十分なネタだった。
「おい聞いたかよ。今年の入学生にランクAがいるって話」
「マジかよ!?」
「あ、それ私も聞いた。二年ぶり? ランク開発でAが出るの」
「ランクAっていうと次元の超越だろ? 空間転移とか?」
「中身までは知らないなぁ」
「気になるわよね」
高校球児がプロ野球に食いつくように彼らの意識は謎のランクAで持ちきりだ。気にならないはずがない、ランクは彼らのいわば中心だ。
「でも」
そこで誰かが言った。
「もし本当にランクAがいるのなら、今年の入学生の代表挨拶は間違いないな」
「ええ、そうでしょうね」
彼らの目つきが変わる。謎のランクA。それが誰かは分からないが特定は出来る。
新たなランクAがいったいどんな奴なのか、みな関心を瞳に宿して噂話は広がっていった。
ランクAというだけで特別だというのに、そんな人が言う特別とはなんだろうか。
「俺にとっての特別っていうのは、どんな不利な状況でも絶対に諦めないこと。自分を信じる心。人間の可能性、それが俺にとっての特別なんだ」
「へえ~」
感心した。こうも大々的に言うことに。それだけに彼の強い想いを感じた。
「人間の可能性かぁ」
その言葉は不思議と姫宮の胸を惹きつけた。姫宮自身夢を追いかけてアークアカデミアに入学したからかもしれない。
なりたい自分になるために自分の可能性を諦めず進んでいくこと。
その覚悟と情熱なら、姫宮も持っていたから。
「すごくいいよ! わたし、立派だと思うよ!」
「ほんとに? これ言うと普通笑われるんだよな、変なのって」
「ううん! そんなことない。わたしの胸にビビっときたもん!」
「はは、そっか」
信也は小さく笑う。そんな彼に「うんうん、そうだよ」と姫宮は頷いた。
「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったけ!? 私姫宮詩音! 今年入学する一年生!」
「ああ、俺も入学生だよ」
「そうなの!? でもどうして信也君はここにいたの? それで私は助かったんだけど」
正門前は時間もあって誰もいない。それに用もなければ普通立ち寄らない場所だ。どんな事情があってこの彼はここにいたのか。
「ああ、そんなことか」
姫宮の疑問に信也は当然のように答えた。
「誰かが人間の可能性を否定している気配がしたからさ」
「…………」
(どんな気配だろう)
姫宮一生の謎が生まれた。
「それよりも姫宮さんは」
「あ、姫宮でいいよ。私、キャラ的にさんって感じじゃないしねー」
「じゃあ姫宮、どうして姫宮はこんな場所に?」
「わたし?」
「うん、だってもう遅刻だぜ?」
「あ!」
信也からの言葉に慌てて腕時計に目を落とす。すると時刻は入学式の時刻をとっくに過ぎていた。
時計の長針はうさぎとかめのかけっこよろしく姫宮を追い抜いていたのだ。
「しまったぁあああああああああああ!」
「今からでも急ごう、体育館に直接行けばまだ間に合うかもしれない」
「よっしゃあ! 私の心に火をつけろ姫宮エクストリームダッシュを見せてやるんだ! どりゃああああ!」
「速い!?」
そうして、慌ただしい事件こそあったものの無事終わり、イノシシのように走る姫宮の後を信也が追いかける形で二人は入学式に向かって走っていくのだった。
*
第三アークアカデミアでは入学式を待たず一つの噂が学園内をざわつかせていた。
誰が聞いたのか誰が言ったのかはっきりとはしないが、それは生徒たちの関心を惹きつけるには十分なネタだった。
「おい聞いたかよ。今年の入学生にランクAがいるって話」
「マジかよ!?」
「あ、それ私も聞いた。二年ぶり? ランク開発でAが出るの」
「ランクAっていうと次元の超越だろ? 空間転移とか?」
「中身までは知らないなぁ」
「気になるわよね」
高校球児がプロ野球に食いつくように彼らの意識は謎のランクAで持ちきりだ。気にならないはずがない、ランクは彼らのいわば中心だ。
「でも」
そこで誰かが言った。
「もし本当にランクAがいるのなら、今年の入学生の代表挨拶は間違いないな」
「ええ、そうでしょうね」
彼らの目つきが変わる。謎のランクA。それが誰かは分からないが特定は出来る。
新たなランクAがいったいどんな奴なのか、みな関心を瞳に宿して噂話は広がっていった。
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