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激しく補助席希望

第161話 #5『初級忍者最終試練』(サイカ、マリーナsub)




─試練開始から1日目


 この日はまず、これから1週間ばかり山篭りする為の住処を探した。



 とりあえず水の有る場所を求めてマリーナは歩き続けると、小さな小川を見つける事が出来た。


 しばらくその川沿いに歩いて行くと、岩壁に仏像が彫られた場所を見つける。里のニンジャだろうか。


 何かの修行の一環であると思われる、作りかけの仏像。数体は半分まで作りあげられて、完成した物は壁から切り取られる。そう言った形跡を見て居ると、すぐ脇に小さな洞窟を見つけた。


「ここは……この仏像を彫っていた人が使ってた場所ね?」


 最後に使われてから、何年も何十年も経過しているらしい。いくつかの木製食器等が、朽ち果てたまま並べられている。洞窟は自然に出来た物ではなく、完全に人工物だ。数メートル先に行くと、行き止まりになっていた。

 洞窟の奥には、仏像とは違う、可愛らしい地蔵が一体祀られていた。にこやかで優しい笑顔に、マリーナの心は癒された。


「………水も近い。雨風も凌げる。よし、ここを拠点にするわ」



 そうと決まれば早速、マリーナは準備に取り掛かった。まずは洞窟の中を綺麗にして、木や落ち葉を大量に集めて寝床を作る。

 次に、よく乾いた木や枝を見つけ、手早く火を起こす。そして、煙を洞窟に充満させた。



「うん、大丈夫。モンスターは居ない見たいね」



 洞窟やジメジメした湿地等は、スライムや虫系モンスターが隠れて居ることがある。岩の隙間に潜んで、獲物が油断するのを待ち構えているのだ。


 この、火と煙で燻す方法は、ヤンドにかつて教えてもらっていた。ヤンドは1人で旅をしなければならない体質なので、このような洞窟を利用したり、廃屋や廃寺のような場所で野営するなど数多くの経験を積んできた。


「ヤンドさん……ありがとうございます。あなたの教えのお陰です」


 その時は、ヤンドもマリーナ自身も、実際に自分1人でこれを行う事になるとは思っても見なかった。ただ、飲みの席での昔話の一環で、1人で冒険に出るにはという話題になっただけなのである。



 マリーナには、このような見聞が人より多かった。大魔道飯店に来る客は、大概が冒険者だ。そこでパタパタと働くマリーナが目を輝かせながら話を聞いて来ると、冒険者達は面白がって土産話や苦労話を聞かせる。

 それを、マリーナは覚えていた。今の川沿いを歩いて探索する方法や、山歩きで水を確保する方法。食べられる動植物の見分け方や、危険な兆候などを判断する基準。



 数多くの酔っ払いやゴロツキ、そして、仲間達からマリーナは聞いていたのだ。

 だから今は、それを実践するだけ。


 里に着いて修行する際も、他のニンジャ達を驚かせたのだ。『一般人の筈なのに、野外での適応能力が高い』と。



 マリーナが今持っているのは、武器である短刀とシュリケン。回復薬と毒消しが1つづつ。それと、いつも持ち歩いている基本的な調味料や数種類の調理器具、そしてスパイス袋だ。ミンギンジャンが厳選した、キャンプに持って行くべき必要最小限の調味料。料理人として、常にこれだけは持ち歩けと言われて育ってきた。


「さて!」


 寝床の確保が比較的簡単に終わった。だが、やる事はまだまだ山積みだ。


「まずは木材ね、その後で食料にしましょう」



 自分の力量で切り倒せるそうな木を選び、次々に分解しては木材に生成する。細めの枝も集め、組み合わせてカゴにする。途中、木の実があればそれも回収し、使えそうな物はなんでも拾った。


 こうして、夜を迎える頃には立派な拠点を構える事が出来た。


 次に狩りを行う準備をする。昼間集めていた木材、岩壁で採取出来た石の破片。これらを使って簡易的な罠を作る。レベルの高いモンスターやら山賊の類にはバレてしまうかもしれないが、野生動物を捕まえるには充分だ。拠点を基準に、そう遠く離れて居ない地域に複数仕掛ける。


 これは、敵意のある者の接近を防ぐ為でもある。何者かが近寄って来たとしても、罠が仕掛けられて居ることを知れば警戒する。しかも、マリーナの今の耳なら、それらの音も聴く事も出来る。逃げて時間稼ぎするなり、回り込んで迎撃するなりが可能だ。


 木の実をかじりながら、床に着く。やる事はまだまだ沢山あるが、時間は無限にある訳では無い。クリアしなければならない課題もある。後7日後に向けて……


「……あぁ!!巻物!!」


 課題と言う言葉でマリーナは思い出した。使う食材が指定されていたのだ。


「迂闊だったわ〜。あまりに忙しくてすっかり忘れてたわ」


 長老に渡された巻物を開く。全部で4種類の食材がそこに記されていた。


「……えっ」


 その、どの食材も知っていた。強烈なイメージで、しっかりと脳裏に焼き付いていた。



 幼い頃、ミンギンジャン育ての親が口酸っぱく教えてくれた、料理人としての基本中の基本。絶対に知らなければならない知識。











『エリオンキャロット』


『フラーウッドヤムイモ』


『オオゴケオニオンドラ』


『マダラ毒ウシ豚』






 指定された4つの食材。それらは全て、『猛毒』として一般的に広く知られている食材だった。



第161話 END

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