NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

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第114話 #3「剣」の、達人(カルガモットsub)





「ふぅ…ふぅ…」



 荒い息で森を歩くカルガモット。


ポタ…ポタ…


 その姿は頭のてっぺんからつま先まで全身血塗れになっていた。



「…お?あったぞ」

 やがて小さな川を見つけ、そこに…


ドボンッ


 思いっきり飛び込んだ。


「ぷはぁっ!…大分血塗れになってしまったな。これではまさに『鮮血』そのものではないか。」

 髪や身体についた血を荒い落とす。

 川から上がった時、カルガモットの身体には『傷ひとつ付いていなかった』

 美しい長い髪を絞り、濡れた身体から水分を落とすと、来た道を帰って行く。

 しばらくすると、小さなキャンプが現れた。カルガモットが修行用に前から設置していたものだ。既に先程火は起こしてある。


…そして



「ふむ…そろそろ頃合いか。では」

 火にくべてあった『熊の肉』、これも既に準備済みであった。





 カルガモットは鮮血の人喰いグリズリーに勝利していた。それも、『無傷』で。


 倒したモンスターの肉で腹ごしらえを終わらせると、カルガモットは剣の手入れを始める。

 所々刃こぼれは出来たが、ロングソードはまだまだ健在だ。


「…太刀数は128。うちクリティカルは…26、か。補正が無ければこんな物だろう。」

 カルガモットは剣をしまうと横になって休み始める。





「必ずある筈だ。クリティカルに関するスキル。その条件さえ掴めれば…なぁ。」


 カルガモットは並の冒険者とは比べ物にならない程の経験を積んでいる。だからこその勘が働くのだ。


『いずれ剣の攻撃値には限界が来る』と。



自らのレベルを上げ、攻撃力の底上げをした。

それなりの武器を手に入れ、更に強度を高めた。

複数のパッシブスキルを手に入れ、更に補正を加えた。




 カルガモットが次に目指すのは、『クリティカルの発生』を高める事。それこそまさにカルガモットにとっての次の新天地だ。


「まだまだ先は…長いな。」


 腕枕を組んでウトウトと眠りに入る。



だが…







ピピィ…




「!?」ガバァッ


 疲れたカルガモットを休ませてはくれなかった。


 かなり微かだが、小鳥の声が聞こえた。その声にカルガモットは機敏に反応する。

 寝ていた場所か飛び起きると、姿勢を低くし剣に手を伸ばす。


「………………。」





サァァァァー


 風のそよぐ音しか聞こえない。




 だが、今聞こえたのは…



バタバタバタ…


 カルガモットの頭の上を2匹の小鳥が飛び去っていく。赤い鳥と青い鳥だ。


 何かを感じ取り、カルガモットはまるで鬼の様な形相になって森の奥を睨みつける。




「『クラス付き』!!もう一体居たのか!?」

 カルガモットは素足のまま、キャンプ地に起こした焚き火を蹴り散らす。

 そのまま後方へ飛び上がり、木々の後ろから森の奥を注視する。





だが、何も見えない。

耳にも届かない。

鼻に障るものも無い。





 しかし『居る』。それもかなり『強烈な何か』が。




「……クソッ!」ピィィィッッ


 隠れる事を諦めたカルガモットはこちらから攻勢に出る。指笛を鳴らし、『最も信頼のおける仲間』を呼ぶ。






「来いッッ!『キレイホース』ッッ!!主の元へ駆け戻れ!!」






………ダ…ダダダッ…ダダダッダダダッ





 遠くから蹄の音が聞こえるや否や、森の中からとても真っ白な馬が飛び出してきた。カルガモット曰く、『異国の言葉で美しい馬』という名を冠したファステ領一の名馬『キレイホース』

 カルガモットの最も信頼する『仲間』だ。

「行くぞキレイホース!急がねば間に合わなくなる!」

 一声ブルルンと嘶くと、キレイホースは森の中を全力疾走で駆け抜けた。


第114話 END

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