NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第103話 #3 『見よ、勇者は帰る』
「「「か、解散…ですか。」」」
「誤解するなよ!?今は1度個人の準備時間が必要だからそうするんだからな??このままずーっと解散って訳じゃないからね!?」
「でも…その言葉を聞くと…やっぱり重いですね」
ヤンドが寂しそうに言った。他の皆も同じような表情だった。
「ま!仕方無ないよ!こう言うの『後の先を譲る』って言うんだっけ??先の事考えたら出発するまでにやらなきゃいけない事なんだしさ。」
「そう…そうですね!」
「うむ、暗くなる必要は無い。二度と会えなくなる訳では無いのだからな。」
「まぁ…もしかしたら俺はそうなるかも…だけどさ。ははっ」
勇者は乾いた笑い声で笑った。そのせいで皆もっと暗くなってしまった。
「…こぉんのバカカモ!それにマルたんも!!」バコンッ
「「いてっ!!」」
「余計な事言わないでよ!!お葬式見たいな空気になったじゃんか!!」
「「す、すんません…」」
「そうだぞ皆の衆、それぞれの出発が決まったんだ。これは祝うべき事なのだからな!」
「そうですよ!皆さんでもう一度飲み直しましょ!ね!」
「…あー、すまん。飲み干した」
「「「ええぇぇ!?」」」
「アンジーどんだけ飲むのさ!」
「前から思ってたけど、ハックは酒の趣味が良い!あとタダ酒だし!!」ドヤァ
「そこドヤる所と違うでしょ!しかも『ケチ』キャラは私のものよ!!」
「「「え、ええぇぇぇ」」」
「あ、すまないが会費は頂くぞ。ここ最近まともな収入がないからこの工房もカツカツなのだよ。」
「「「ええぇぇぇ…」」」
「ふむ、仕方の無い奴らだ。ここは私の秘蔵の1本を…」ゴトッ
「あ!自分もいくらかアイテムにお酒のストックあります!!」ゴトゴトッ
「お!カルガモットの酒美味そうだな!俺にもくれよ!」
「待てユーシャ。私が先」
「「「散々飲んどいてまだ飲むのかいっ!」」」
「うふふ、皆いつもの調子に戻ってきたわね!よーし『今日は』サイカ母さんも飲んじゃうぞ〜!!」
「うん?『今日は』??」
「え!?な、なんでも無いわよ!オホホ!」ドキッ
「私知ってる。」
「何を知ってるんだよアンジェラ?」
「サイカはこの前昔の忍装束がキツくて入らなかった事を気にしている」ジャーン
「ちょ!!アンジェラちゃん!!」
「え?サイカ太ったの?…って、昔と比べたらそりゃあ色んな所が『たわわ』に成長してるんだろうし昔の服が入らなくても…」
「なーに余計な事想像してんのよ!スケベ!!最低!!」ゴン
「いって!!だからなんでそこでお前が怒るんだよタリエル!!」
「たわわ…たわわ?…たわわ!?けしからんですぞ!!」ガダンッ
「あんたも止めなさいっつーの!ムッツリヤンド!」
「皆さん少し落ち着いて!!」
「はぁぁ。結局真面目な話してもこの空気になるのか…」
「おいハック。そういやあの隠密訓練の時マリーナと何があったんだよ?」
「「ウグゥ!!」」ギクリ
「なんかカルガモットの屋敷に潜入する時もそうだったが…怪しくないか?この2人?」
「な!何を言ってるのだ勇者殿!!」
「そうですよ!何もありませんでしたから!!パパに誓って!!」
「いやここでミンギンジャンに誓われてもな…」
「あ!そーだよマルたん!!あのシャイガルの宿に泊まった時!あの時マリリーたんとハックさん一緒の部屋だったよね!?」
「「「えっ!?」」」
「「うひっ!!」」
「こりゃあ…こいつら『一線』越えたなァ??」
「そんな!ハック導師!!信じていたのに!!!」
「すまない。まっったく話について行けないのだが?」
「あー、アンタはあの時キャッシュグールにぶん殴られて気絶してたんじゃない?あれ?違ったかな??」
「「なぁっ!?」」
「ち、チリードルさん!!あのズタ袋の上から一切の迷いなく殴りつけて来たのは貴女だったのか!?」
「さ、さぁ?なんの事かタリエルわかんなぁ〜い?」キャピ
「アレは全部ニセ勇者が殴って来たのだと思っていたのに…貴女と言う人は!!」ガシィ
「ちょ!やめて!!マルたん助けて!!」
「ふん。そんな都合のいい時だけ人に助けて貰おうったってそうは問屋が卸さねーよ。」
「あたしを捨てるのね!!弄ぶだけ弄んで!!!」ウワーン
「おーいヤンド!そっちの酒もくれ!」
「アンジェラ…君ゲロッキとの戦いを経てから随分と野性味を増してきたね…」
「そうか?でもこれが『普通』の私だ!」ドヤァ
それからしばらくの間は錬金術工房にて取っ組み合い、罵りあい、酒の奪い合いが続いていたのだった。
気付けばもう夜の12時を過ぎる少し手前程の時間になっていた。
「ふぅ。さて、ではそろそろお開きとしようか。」
「あ、私片付けまーす!」カチャカチャ
「私もやる!」
「偉いわね、アンジェラちゃん。皆で楽しんだから皆で片付けましょう!」
「「「はーい!!」」」
食器を洗い、机を整理し、空いた酒瓶を片付ける。
キャンプをした事によって皆はその一連の動作を迷いなく分担し、効率良く作業を進める。
「今日の賢人会議は何も無く終わったな?ハック。」
「やめてくれ勇者殿。まるで何か起こるフリに聞こえてしまうぞ。」
「そうか?あはは」
「しかし、皆しっかりと決意をもって今後の先を見据えられている事が分かってとても良い結果になったでは無いか。」
「そうだよな、いい仲間に恵まれてホント感謝してるよ。」
「しばらくは…私と二人旅になってしまうがそれでも構わないな?」
「…もちろんだよ、頼りにしてるぞ?名家育ちの錬金術師さんよ」グッ
「あぁ、任されたぞ!名も知らぬ異国よりの勇者よ!」グッ
「ねーハックさーん。これどこに仕舞えば良い?」
「あぁタリエル。それは向こうの1番上にしまってくれ」
「はーい!ヤンド〜肩車して〜」
「そんな事しなくても自分が仕舞いますよ。」
「えーやだ!私が仕舞いたいの!」
「オイオイそんな事してると落っことすぞ〜」
ブツンッ
「「「んぁ?」」」
皆は辺りを見渡した。その奇妙な音がした方向を探したのだ。自然とタリエルに目線が集まる。
「ち!違うわよ!!私何も落としてないもん!!」
「いや、今のは落としてなったような音では無いな」
「なんか気持ち悪い音でしたね?なんでしょう??」
「うーん…初めて聞いたような音だったわね?何の音かしら?」
「初めて?いや…なんかしょっちゅう聞いた事無いか??」
「「「え?」」」
「ほら、良くあるだろ?えーっと例えば………あ。」
「「「??」」」キョトン
勇者は言葉を飲んだ。何故なら今自分が例えようとした内容は、『ゲーム世界の住人』が聞いた事あるはず無い音だったからだ。
「や…ばい、のか?これ、もしかして」
「ん?どうしたのだ?勇者殿!?」
「きゃぁぁ!!みんな見て下さい!!」
台所で洗い物をしていたマリーナが窓を覗いて悲鳴をあげる。皆もその窓に殺到する。
「「「こ、これは!?」」」
勇者が先程例え話として言おうとしたのは、何かかしらのプレーヤー機器に再生したままイヤホンを繋げたような、電気的に何かが『接続』されたもしくは『切断』されたような音だった。
「ま、マジかぁ…」
勇者とその一行が見上げる夜空には…
いつもの満点の星空の変わりに、凄まじい数の『機械言語』や『プログラミング言語』のような英数字の羅列が夥しく点滅し、スクロールされていたからだった。
第103話 END
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