NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第101話 #1 『見よ、勇者は帰る』




「せーのっ!!」

「「「とうちゃ〜く!!」」」



 勇者達は一斉にジャンプしてファステの門をくぐる。

 長かった温泉街での冒険を終え、ついに勇者一行は懐かしいファステの街へと帰りついた。

「ここまで長かったねぇ!」

「色々あったが…慣れ親しんだ街はやはり良いものだ。」

「うむ、錬金術師の言う通り。ここが我々の故郷だ」

「さて、街に着いたけど…これからどうするの?勇者君?」



「まずは行く場所決まってるだろう…いくぞっ!!」ダッ


 勇者は一目散に駆け出した。皆もそれに1歩遅れて着いていく。

「待ってよ!マルたーん!!」

「リーダー!?どこへ行くんですかぁ??」

「うーん。大体予想出来る。」




 そして着いたのが…



『大魔道飯店』ドンッ


「いいか?今まで散々ここの風評被害に俺達まで苦しめられたんだ!やり返さなきゃ気がすまねぇってもんよ!!」

「え!?ウチの店に何するんですかっ!?」

「「「決まってるだろう?」」」

 マリーナ以外はニヤリと笑う。


そして勇者は店の扉を思いっきり開けて中に飛び込み、皆と声を揃えて大声で叫んだ。



「「「たっだいま〜!!『人喰いブッチャー』と『山賊狩り』共!!」」」




 店の中にいたいつもの常連達は、ポカーンとしていた。




「…あれ?反応薄いな?」

「ゆ、勇者のあんちゃん?」

「おうよ!!今しがた帰ってきたぜ!ミンギンジャン居るか?」

 その時、厨房の奥から面倒くさそうな表情をした本人が現れた。

「…ったく、うるせぇ〜奴等が居なくなって静かな毎日を送ってたってのに。テメェらもう帰ってきたのか?」

「パパ!ただいま!!」

「戻ってきました、料理長。」

「おう。おかえり」

「あぁ〜もう良いから!ほらみんな座れ!!」

 勇者は勝手に1番大きなテーブル席に陣取る。

「昼飯はミンギンジャンの奢りだ!みんなでたらふく食って英気を養おう!!」

「はぁ!?お前ついに頭がイカれちまったのか!?」

 サイカがコソッとミンギンジャンに近づき、耳打ちする。


「ヒソヒソ…」
「…なんだと!?本当かっ!?」


 ミンギンジャンは驚き勇者を見る。どうやらサイカはマホガートの一件について話したらしい。

「どうだ?俺達に奢りたくなっただろ??」ドヤァ

 勇者はそれに答えるように満面のドヤ顔で返す。







「…仕方ねぇな!その代わり全部残さず平らげろよ!!ゴラァ!」


「「「やっったあぁぁぁ!!」」」


 と、言うことで大魔道飯店でプチ打ち上げ会となったのだった。







─小一時間後。


「うぅ、もぉ食えねぇ」

「衝撃的なメニューの連続だったな。うっぷ」


 勇者とハックはお腹を擦りながら店の暖簾をくぐってきた。続いてその他の面々も満腹な笑顔で店から出てくる。

「しかしタリエルよ。ソナタもう少しアレは何とかならんのか?」

「えー?何ー??」

「とぼけおって…タダなのをいい事に原価の高い食材を使った料理ばかり口にしていただろう。」

「うぐっ!なんの事かなぁ〜??」ギクリ

「まぁ!タリエルちゃん随分好き嫌いがあるのねと思っていたら!そんな理由で食べてたのね!」

「ち、違うもん!!たまたま今日食べたかったのが高級食材の料理だったってだけだよ!」

「それ…いつもの事だろ?」

「「「あっはっは!!」」」

「しかし店主も常連客もてんで自分達がそんな噂されているのを知らなかったのは驚きだな。」

「ウチのお店に他の街からのお客さんがあまり来なかったのって…やっぱり『ブッチャー』の悪名のせいだったんですね…ショックです」

「なんせ人喰いと山賊狩りが協力してる店だもんなぁ。そりゃ肉料理出されたら抵抗あるよな」

「笑い事じゃありませんよ!マルマルさん!」ムゥ

 勇者達がそんな話をしているとミンギンジャンが暖簾をくぐって出てきた。

「おうトンマ!!また後で詳しい話聞かせに来いよ!いいなぁ!!」

「そう怒鳴ら無くても…ハイハイ分かりやしたよ〜っと!」

「リーダー、この後はどうするんですか?」

「うーん…とりあえず個人の荷物片付けもあるし一旦解散にしないか?」

「それがいい。私も少し家の用事がある。」

「じゃあ解散と…」

「まってくれ!」

 ハックが解散を止める。

「今日の夜にはもう一度錬金術工房に集まって欲しい。事後の計画について話合わなければならないからな。」

「あ、そう言う事!了解!じゃあ夜になったらハックの家に集まろう。それまで一時解散!」


「「「はーい!!」」」



 それぞれのメンバーは手荷物を持って帰宅した。














──そしてその日の夜、いつもの錬金術工房にて──





 夜の8時を過ぎた辺りからチラホラとメンバーが集まりだした。いつもの工房内には今日は珍しく少し良さげな料理とブドウ酒が準備されている。


「なぁ…この雰囲気って…」

「マルたんもそう思った??」

「まさかとは思いますが…」

「ハック導師、何だか張り切ってますね。」

「うん?なんだ?何が起きるのだ??」

「多分…『いつもの』奴です。」

「酒もーらいっ!!」

「アンジー、乾杯してから飲みなよぉ〜」





「皆集まったかな?ゴホンッ!!それではこれより!第5回賢人会議を執り行う!!」



「「「やっぱりなぁ…」」」


 開催する度に何かが起こる、不運の象徴とまで言われたハック主催の賢人会議が執り行われてしまった。


第101話 END

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