NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第100話 #2『勇者先生の〇〇講座?』


「ハァハァ…大分落ち着いたよ。ありがとう。」


 ハックは普段よりももっと青い表情だが、呼吸は少し落ち着いてきた。

「よっ…と」

 いつもなら颯爽と持ち歩いている魔法の杖だが、今はその杖に全体重を乗せて立ち上がっている。まるで、産まれたての動物かのように足がガクガクと震えていた。

「さて済まなかった。…勇者殿に質問を続けよう。」

「大丈夫か?ハック??」

「問題…ない…」ガクガク

 震えるハックはこれ以上自分のせいで質問が長引いてはいけないと精一杯の強がりを見せる。

「そりゃ〜ハックさんにしたら、『魔法』が無いなんて自分の全てを失う様な話だもんね。そうなるのはトーゼンだよぉ」

「で、では、次の人リーダーに質問をお願いします。」

「あ!待ってくれ!さっきのハックの質問に付随するが、俺のいる現実世界と言うのは魔法は存在しないが、その代わりに『電気』…と言うエネルギーが流通している。その電気を使って『機械』を動かして、色々と生活の役に立ててるんだよ。これで皆納得出来るか??」

 ハックの震えがピタッと止まる。

「ふむ?それはつまり『雷属性』の魔法が流通していると言う事か?」

「いや、ハック。魔法じゃないんだ。科学的に電気を作り出して、それを溜め込んだ物をエネルギー源に使ってるんだよ。」

「そうか…ふむ…」

 ハックは考え込んでいたが、その表情は少しだけ明るくなった。

「これで分かったと思うけど、大陸こことは全然違う所なんだ。だから、それ相応の覚悟を持って質問して欲しい。あと、当然の事だけど俺は一般人だ。だから知らない事の方が多いし、答えられない事も沢山あるからな。それは分かってくれよ。」


「分かった。では次に私が質問させてもらおう。」

 カルガモットが1歩前に出た。

「先程、ニセ勇者は『モンスターが出ないから平和』と言っていたな?私からの質問は、『人間同士』の争いは無いのか?」


「あー…うん、ある。今のところ大規模な『戦争』は無いけど、少なからず各地で人同士の戦争は発生している。俺が言った『平和』ってのは、とりあえず俺の国では無い…と、解釈してくれ。」

「分かった。…やはり大なり小なり、民族や種族間での争いは何処にでもあるものなのか。」

「あ、すまん!種族ってのは違う!現実世界には人間しか居ないんだ。」


「「「へぇ??」」」

 皆はお互いを見合った。

「それは…絶滅して人間しか居ないって事なのかい?ブレイブハート?」

「や、違う。元から『人間』と言う種族しか世界に居ないんだ。まぁその人間同士でも人種によって様々だから、主義主張が異なってその延長で戦争は起こってるけどね。」

「「「ふぅん…」」」

「…何故この大陸を作った人達は多種多様な種族を生み出したのだろうか?元の世界に存在していないのに…」

 ハックの疑問は最もな事だろう。皆はその疑問に頷いた。

「憧れなんじゃないか?普通な人間である事より、優れた種族への妄想が始まりだと思うけどなぁ。」

 その答えを聞いた時、アンジェラがムッとした。

「おい、普通は悪い事なのか??」

「悪い事じゃないよ…そっかアンジェラは普通である事を望まれたんだもんなぁ。普通はいい事だよ」

「…分かってるじゃないか、ユーシャ」フンスッ

 アンジェラは鼻息荒く答えた。

「でも、普通で有り続ける事も大変なんだ。だからせめて大陸ゲームの中では普通じゃなく有ろうとするんじゃ無いのか??な?」


「「「ふぅん…」」」


 皆、分かったような分からないような顔をしていた。


「ハイ!ちょっと暗い感じになっちゃったけど、流れ変えましょ!みんなもっと楽しい事を勇者君に聞かない??」

「「「は〜い!!」」」

 サイカが機転を聞かせてくれたおかげで皆笑顔に戻った。

「じゃあ私からの質問ね!勇者君、向こうの食べ物ってどんな感じなの??一応元料理人だしちょっと気になるのよ!」

「食べ物…そうだなぁ〜一長一短はあるけど、現実世界の食べ物も美味しいよ!ここに居るとファーストフードが食べたくなるねぇ。」

「「「ファーストフード??」」」

「えーっとハンバーガーとかフライドポテトとか…色々あるんだけどさ。向こうでは手軽に食べられる物をそうやって呼んでるんだよ。」

「それってどんな食べ物なの??」

「んぁ?ハンバーガーは…パンに焼いた肉とかサラダが挟んであって、特性のソースがかかってる食べ物だよ。フライドポテトは…読んで字のごとく、油で揚げた芋だよ。それに軽く塩を振ってあるんだ。」

「へぇぇ!それなら大陸の食材使っても作れるわねぇ!」

「お!マジかよサイカ!今度作ってくれよ。」

「いいなぁ〜食べてみたい。聞いてただけで美味しそうだもんねぇ!!」

 皆は色々と聞いた事の無い食べ物についてあれこれ話始めた。

「じゃあ…次の質問は…」ズイッ

 アンジェラが前に出てきた。

「お、アンジェラ。何が聞きたい??」

「ん〜〜〜〜!!」

 アンジェラは腕を組んで頭を悩ませる。


「………無いっ!!」

「えぇ」ズコッ

「どうせ聞いたって行けないからな。みんなからの質問で満足したし!」フンッ

 何故かアンジェラはドヤ顔全開だった。

「なら次は…」

「はぁい!マルたぁん!」

「何だよ気持ち悪い声出して。タリエルは何が聞きたいんだ?」

「あのねぇ…すっごく大事な事聞くから、誠意を持って答えてよ?いい?」ニヤニヤ

「な、何だよ…」



















「………現実世界向こうに彼女とか、奥さん。居ないよね?」ギョロォ
















「…あ、うぁぁ……」サッ

 その、あまりのタリエルの迫力に、勇者は気圧された。

 瞳の奥は黒く濁り、勇者を見ているのか、はたまたその奥を見ているのか分からない。そんな表情でタリエルは質問してきた。



「いっ居ないよ…本当だ…」


「…………そ!なら良かったぁ〜」


 勇者だけではなく、他の何人かもタリエルの変わりようを見てドン引きしていた。


「さ!つ、次の人どうぞー!」

 あまりのタリエルの迫力に勇者は次の質問を促す。


「…あれ?最後は私ですか??」

 マリーナがキョロキョロと周りを見る。

「うんや、私がいるけど先に質問しておくれ。」

 ナユルメツに促されてマリーナはコホン、と咳をしてから質問を言う。


「あ、あの!勘違いしないで欲しいんですが、参考という事で質問させて下さい!ま、マルマルさんのいる世界では…その、『恋人達はどのような事』をして、過ごして居るのですか??」


ピクッ

 何人かが過剰に反応する。ハックとサイカが下品なニヤケ顔になり、タリエルは『しまった!その手があったか!!』という残念な顔をしていた。


「恋人ぉ?えーっとだなぁ…まぁ、普通にデートして…って言ってもダメか。映画見に行ったり、買い物したり、食事に出かけたり…二人きりでどこかに出かけるってのがオーソドックスな過ごし方になるのかな??」


「「「なるほどぉ〜〜!!」」」


「なんでそんなにみんなニヤけてるんだよっ」

「「「別にぃ〜」」」



「じゃ、最後は私の質問だねぇ?」

「おう、ナユルメツは何が聞きたい?」






「結局の所、『アンタ』はどっちの世界の人間なのさ??」


「「「え?」」」


 少しの間、沈黙が続いた。





「…今は、大陸こっち側の人間!それでいいか??」

「うん、分かったよ。ブレイブハート。」




「「「…………。」」」

「さ!もう寝ようぜ!!時間も遅いしさ!」


「…うむ、それがいい。皆寝よう。」

「「「…はーい。」」」


 ハックの返答により皆は寝床の支度を始める。特に会話も無く皆は寝始めた。



 寝袋に潜り混んだ勇者は、1人で反省し始める。ふと隣で目をつぶるハックが目に入る。



「…なぁハック。現実世界の事話したのって、不味かったかな?」

「…いや、良かっただろう。遅かれ早かれこの話題にはなるだろうし。でも勇者殿、これだけは1つ言っておくぞ?」


「なんだ?ハック。」

「皆勇者殿の事が好きなんだ。だからいずれ訪れる『その時』が、寂しくてたまらないのだよ。」


「…そうか、分かったよ。ハック。おやすみ」

「あぁ、勇者殿。おやすみ」






 長らく続いた質問も終わり、野営地にようやく静寂が訪れた。




第100話 END




 補助席からのお知らせ!

今回で100話達成しましたー!ありがとう!(通算ではもっと話数行ってますが)

100話達成記念に次の話はスペシャル回にします。ここまで読んでくれてどうもありがとう!

それでは、おつかれサマンサタバサ!!






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