NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第97話 #27ep『娯楽と堕落の街カッポン』


 突如温泉に現れたモンスター。

『温泉ウミウシ』


 泉質の成分を栄養にするが、稀に温泉に近寄る他の生物にも寄生し養分を吸い取る。

 そして、その対象としてより生命力の強いオスの生物を狙う兆候があった。


 そして勇者達の目の前に現れた『温泉ウミウシ』は1番大きな声を上げたワバズに向かって飛び上がり、頭の上から覆いかぶさってしまった。




「ぐぁああぁ!!」ぐじゅぁ


「ワバズゥ!!」「ワバズさん!」

 カシリアとマリーナ、サイカの面々が心配するもワバズは顔を押さえて悶えている。

「待ってろ!ワバズ!今助け…」パシッパシッ


「…ん?」

 助けに行こうとしたアンジェラの太ももを、誰かがタップした。



 普通、タップと言うのは何かかしらかの技の練習だったり、格闘技の絞め技を食らっている方がするものだ。

 …つまり、今アンジェラをタップすると言うのはアンジェラに何かしらか絞め技を食らっていると言う事になるのだが…





「うわぉぉぉおおぉぉ!?!?」



 カルガモットと激突してから良く確認していなかったが、カルガモットはアンジェラの下敷きになっている所では無く、アンジェラの股の間に頭がスッポリとハマっており、あぐらをかくような姿勢のアンジェラの両足で顔面を締め付けている体制のままだった。


「どわぁぁ!何やってんだよ馬鹿カモ!!てめぇ何処に顔突っ込んでんだ!!」


バシバシッ!!


 喋れないのかカルガモットは言葉は発しなかったが、仕切りにアンジェラの太股をタップし続ける。

「さっさとどけこの…」
「アンジーストップ!!」

 その股間絞め状態を解放しようとするアンジェラをタリエルが止める。

「今お股開いちゃ駄目!丸見えになっちゃうよ!!」

「え…うっく、それもそうか。」

「アンジェラちゃん!カモ君そのまま気絶させちゃって!」

「仕方ねぇ…覚悟しろカモ領主ゥ!」ギリリ…


バンバンバンバン!!!


 タップする手の勢いはドンドン強くなっている。


「オラァ!女の1番大事な部分で絞め落とされるんだから感謝しろ!」

「うがぁ!もがもがぁぁ!!」

「アンジェラちゃん!もうちょっと絞めるのに角度必要かも!」

「角度!?こうか?」クイッ



グギッ!!

「うぐっ!?」


………パタッ




 カルガモットのタップする手が床についた。






「…アレ、気絶ですか?」

「…うん。多分。」

 マリーナの問いかけに、有耶無耶に答えるサイカだった。







 一方こちらはワバズの背中にのしかかるように絡みついた温泉ウミウシをカシリアが必死に離そうとしていた。

「くっそ!!このぉ!ええぃ気持ち悪い!!」


「ぐわぁぁぁ!姉貴ィィ!は、離れろォォ!」

「ワバズ!大丈夫か!?」

 ワバズの身体は次第にピンクの粘液に侵食され、真っ赤に腫れ上がる。

 そこに…

「みんな!待たせたな!!」


 勇者が武器を持って脱衣場から飛び出して来た。

「必殺!!<スキル:悪鬼羅刹への道>!!」



 勇者の抜いた『無頼漢の短刀』が眩い光を放つ。

「さぁ…こいつで茶番は終わりだ。あの世に行きな!モンスター!」

 腰にタオルを巻いただけの勇者が、短刀を片手に飛び込む。


「ま!待て勇者殿!!」

 遅れて脱衣場からハックが出て来て勇者に声をかけるも、一足遅かった。


「でりゃああぁぁぁ!!」ダッ




「そのスキルは対人用のスキルだ!しかも温泉ウミウシはスライム系モンスター!刃物は効かないぞ!!」




 …と、言い終わる前に勇者は温泉ウミウシに突撃するものの、パシャっと軽い音を立てて温泉ウミウシの身体に短刀が突き刺さったが、特に効果は現れなかった。



「…へぃ!?」

「ぐおおぉぉ!!」どん


「うごぉ!?」バタ

 最早完全に理性を無くしたワバズが勇者にケリを放つ。ケリは鳩尾にモロに入り、勇者は力なくその場に倒れ込んだ。



「「「ダサッ!つっかえねぇ〜!!」」」



 期待させておいて勇者が一撃でやられるのを見て皆が嘆きの声を上げる。


「ぐわぁぁぁ!!」ガッ

「まずい!こっちに来た!」


 今度はハックに狙いを付けて男湯側に足を進めるワバズ。チャンスは今しか無かった。



(ワバズさんが背中を見せた!この状況を何とか出来るのは私しか居ない!!)


 完全にマークから外れたマリーナが1歩前に出る。

「マリーナちゃん!?」
「マリリーたん!?」



「はぁぁぁ…」シュウウゥ


 杖も持たず、ひたすらに集中して手のひらに魔力を溜めるマリーナ。


(ハック先生が言っていた事を思い出して!流れを上手く自分に巻き起こすのよ!)



シュワァァァ…


「「おおぉ!?」」

 掌に溜まった魔力の流れを指先に集中させる。


「最小限で、弱点に、最大限の効果を…」



 いつぞやハックの言っていた事を反芻し思い出す。山の頂上に行った時もかなりの回数ハックの使う魔力を身体を通して感じて来た。今なら出来る!!マリーナは強くイメージして心を解放した。


「てゃぁあああぁぁ!!!」


ズブゥ!!


「がぁ!?」



 マリーナはまず両手の人差し指の先一点に魔力を集中し、それから掌を合わせる様に握る事で魔力を安定化させた。


 次に自分の魔力では飛距離があるだけ威力が低下すると思ったマリーナは、その指先に溜まった魔力を直接相手に触れさせて魔力を解放させるべく相手の身体にその指を突き立てる。


 さらにそれだけでは足りないと思ったマリーナは、取り憑かれたワバズの身体を傷付ける事無く支配しているモンスターだけを倒す為に、ワバズの身体から先に魔力を流し込む事にした。ちょうど穴になっていて完全に人体の弱点になっている部分目掛けて一気に魔力を解き放つ!!





「「「う、うわぁぁ!?」」」



 その光景を見た皆は軽く悲鳴を上げた。


 …何故なら、マリーナのやった魔法を使うと言う『行為』は、傍から見たらただの『カンチョー』にしか見えなかったからだ。



「ぎゃあああぁぁぁぉぉおおお!?!?!?」ビリビリビリ



ドタン…



 電撃の魔法を受けたのだろう。ワバズは青白い光を放ちながら全力の悲鳴を上げた。

 そしてワバズに取り付いていた温泉ウミウシは焦げて灰になってしまった。



「…やった……勝ったわ!!うわぁ〜い!!」


 両手を上げて喜ぶマリーナに、サイカが後ろから近寄る。


「…マリーナちゃん、とりあえず、手、洗いましょっか。」



「…あ、ハイ。」






 こうして、温泉に現れたモンスターは倒され、マリーナは魔法使いとしてデビューを果たしたのであった。


 世にも珍しいカンチョー魔法の使い手として。



第97話 END

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