NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第65話 #7 『娯楽と堕落の街カッポン』


(おいおい!やべーぞこりゃ!)ヒソヒソ

(どう聞いても今のは大魔道飯店の店主、ミンギンジャン氏の話だ)

(娘を誘拐するって、マリーナちゃんがこの街に居るのってとんでもない事ですよ!)

 今の現状を大体理解した勇者達は、とてつもなく焦っていた。

「んぐ…んぐ…ぷはぁ〜!あー美味かった!また今度一緒に飲もうや!じゃ、またな〜」

「「「お、おう…」」」

 アビーはいい酒を飲んで上機嫌になり、帰って行った。



「……よし、離れて行ったな?早速だがここから離れ…あれ?マリーナは?」

「え?そう言えばさっき、サイカさんと2人で離れて行きましたよ?」

「あまりの話の内容に全然気付かなかった。マリーナ嬢達が帰ってき次第、我々もこの街から離れよう。」








 しかし、しばらく待ってもマリーナとサイカは帰って来なかった。


「…おい、ヤバくねーか?」

「まだそうと決まった訳では無い!ヤンド殿、2人は何処に行くとか言ってなかったか?」

「いや、自分もそこまで気が回らなかったので…トイレに行ったとかは可能性ありますか?」

「ん、私見てくる。」

 アンジェラが素早く人混みをかき分けてトイレのある方向に向う。

「なぁ、もしかして二人共拐われたって事は無いよな?」

「たった数分でこの人混みの中から目的の人物を攫うなど不可能に近い。そもそも、叫び声の1つでも上げたらこの賭博場の黒服が飛んでくるだろう。」

「無事だといいですが…」


 そこにアンジェラが帰ってくる。


「トイレは無人だった。」

「「「マジか!?」」」

「温泉宿のフロアに戻って、女性が通ったか聞いてくる」

「頼むぞ!アンジェラ殿!!」

「こりゃあ…マジで一悶着有りそうだな!ちょっと荒事になっても良いように準備をしよう。」

「どうする?この地理情報が不確かなカッポンの街で人探しはかなり厳しいぞ??」

「いや、でもまだ誘拐って決まった訳じゃ無いですし…」

「アンジェラが帰ってきたなら手分けして探しに行こう、いいな?」



「ねぇ!!聞いてる!?」

「「「うお!!」」」

 振り返ると、そこに怒りをあらわにしたタリエルがいた。







「一体何があったのさ!なんでマリリーたん誘拐されちゃったの!?」

「まだ断定では無い!落ち着け!!」

 ちょうどそこにアンジェラが帰ってくる。

「フロントに聞いた。馬車に戻るって2人で出て行ったみたい。」

「馬車に!?なんでまた急に…」

「サイカが気付いてマリーナを避難させたと思う。」

「あ!そうですそれですよ!!温泉に入る前の別行動の時もサイカさんは凄く機転効かせてましたし!」

「なるほど…特に2人は慌てている様子は無かったのだろうか?」

「そこまでは分からない。ただ、後を追いかける様な人は居なかったらしい。」

「緊急で何かがあった時は馬車に集合にしてたし、取りあえず1度馬車に戻ろう!」

「「「おー!!」」」



「ちょいとお客人、失礼しやす。」

 今からマリーナとサイカを探しに行くと言うタイミングで、勇者達は謎の男に止められた。─勇者達は知らなかったが、この男は勇者達が街に入った後に後ろから目を付けていた男だ。

「先程の勝負、見事でござんした。…それでどうでしょう?『もっと上のランク』のお遊びなんかは如何ですかい??」

 どうやらこの怪しい男はここの賭博場を仕切っている側の人間らしい。

「なんだてめぇ今忙し「ダメ!!」」

 勇者を制するタリエル。目は真剣だった。



「賭けの場所までお願いします。」

「ふざけんなよタリエル!!」ガシィ

 勇者がタリエルの胸ぐらを掴む。



 ただ、それよりも本気の目で勇者を見つめ返す。

 タリエルは勇者の手を振りほどいて肩を引っ張る。同様にそこにいたハック、アンジェラヤンドを引っ張って顔を近付けさせた。

(ちょっと聞いて!!)ヒソヒソ

(何事だタリエル!)

(こんな時に賭け優先なんて怒るぞ!)

(違う!落ち着いて聞いて!)

(タリエルちゃん、何かあるのかい??)

(さっき、ディーラー側に500万ぐらい損させた!)

(((はぁ!?!?)))

(今はコイツらの言う事聞いて賭けのステップアップをした方がいい!)

(ふざけんなよタリエル!!)




(…こいつらが、マリリーたん達が居なくなった事に何も関わってないって確証は無い!!宿のフロントだってここと繋がってるんだから!)


(((………あ)))


 タリエルは、皆を守ったのだ。何故ならここで貸元の機嫌を損ねると、この賭博場に居る黒服達全員を敵に回す可能性があったからだ。

(今はとりあえず穏便に外に出る事を優先しよ!じゃなきゃ私達までやられる!)

(じゃあどうする?)

(次の賭けが何か分からないけど、誰かは負けなきゃならない。)

(はぁ!?)

(とりあえず速攻で賭けて、速攻で負ける、もしくはドロップする。)

(なるほど…義理を通す訳か。とりあえず、『1度はゲームに参加した』と言う体にして、そのまま負けて帰ると言う事だな!)

(そーいう事!これが安全に外に出るためのルートよ!)


「あ〜〜!!くっそ!!」ガシガシ

 勇者は頭を掻きむしる。




「…如何なされましたか?」

「いや!なんでもない!」


 どうやら諦めが付いた様だ。


「賭けに参加する。俺達を案内してくれ」


「畏まりました。どうぞこちらへ…」

 声を掛けてきた男は、ニヤリと笑いこちらを手招きした。






第65話 END

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