NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第56話 『アンジェラ先生の馬術講座』
「今日は私が馬術や馬車の動かし方について教える」
「…なんか、アンジェラの授業って、心配だな。」
「アンジーちょっと素っ気なさすぎだもんね。なんて言うか、最低限の事しか話さないし。」
ピシッ
アンジェラが馬術用の鞭で地面を叩く。
「…そこ、無駄口は許さない。」
「「は、はいぃぃ〜」」
「今は私が先生。従って貰う。」フンスッ
アンジェラは鼻息荒く腕を組んで、「教師」という様な姿勢を取っている。
(アンジェラさん、結構気に入っている見たいですね…)
(あぁ、あまり教える側に回った事が無いのだろうな。)
ギロリ
さっと前を向くハックとマリーナだった。
「これより、<可もなく不可もなく>のアンジェラが授業を行う。とりあえず、馬車用の馬2体があるから、乗って。」
「えぇぇ!?そんないきなり?」
「女戦士よ。私の愛馬も使うといい。」ピィーッ
カルガモットが口笛を吹くと、宿営地から白い馬が走ってきた。
「ファステ領イチの名馬、『キレイホース』だ。」
「「へぇ〜〜」」
勇者は吹き出しそうになるのをグッと堪えた。
「なんでも、父が知人の地主から譲り受けた馬なのだが、『美しい馬』という意味の名前らしい。」
「「はぇ〜〜」」
「…ぐっ…ぷぷ……」
「ん?どうした?ニセ勇者?」
(…プッ!ぎゃははは!キレイホースってまんまの名前じゃねーかうはははは!残念な馬だなホント!!)
「…いい、名前だね。」
「…うん?うむ、その通りだと思う。」
勇者は必死に耐えていた。
「じゃあ私がキレイホースに乗るから、他の人は馬車の馬に乗って。」
「乗るって…乗ってどうするんだ?」
「しばらく一緒に走ってれば、初級のスキルは解除されるから。」
「あ、そういう事…」
皆で話をして、最初は勇者とハックが乗る事になった。
「ちなみに、この馬には名前ついてるの?」
「ん?あぁ。馬は買った時に持ち主が付けるから、どの馬も付いてるよ。」
「へー、どんな名前?」
「馬車から向かって左側が『レフト』右側が『ライト』だ。」
「ぶふっ!!うわははは!もう耐えられんなんだその変な名前はぁ〜!うひゃひゃひゃ…あれ?」
皆は変な顔をして勇者を見つめる。
「ど、どうした?みんな?」
「「「○○って名前の奴に言われたく無いよ!!」」」
「グハァッ!!!!」
最大級のブーメランが、勇者を襲った。
一通りのメンバーが交代して、スキル:初級馬術を習得した。
「ん。次は馬車。コレは時間かかる奴だから、これから毎日馬車を操縦してスキルを習得してもらう。」
「アンジェラ殿、長距離移動を繰り返してそれで習得すると言うのはどうだろうか?」
「んー…うん、採用!」
「え!?じゃあ皆でお出かけするの??」
「ちょうど良かった!買い出しとか飲水の調達がしたかったのよねぇ!」
「えーっと、何処行きます?ファステの街に戻るのはちょっと近すぎますよね?」
「私の屋敷はどうだ?」
「す、すいません…あまり良い思い出が無いのでちょっと…」
「う、うむ。そうだな。別の所にしよう。」
「あら?ハック君とマリーナちゃん、カモ君のお屋敷で何かあったの?」
「「な、なんでも無いです!」」
「そう??」
「…あぁ、あの話か!衛兵に聞いたが、夜分遅くに屋敷に侵入して破廉恥な行為に及ぼうとした若いアベックがいたと聞いていたが…まさか錬金術師と給仕見習いの事だったとはなぁ。」
「「「は?」」」
「だぁぁ!なんで言っちゃうんですか!!この残念領主さま!!」
「違う、違うんだ皆の衆!!」
「…ウチらが必死こいて弟さんと交渉バトル繰り広げてる間に…」
「けしからんですぞ!!導師さま!自分達だって悪酔いしながらも必死に店長さんと腕相撲勝負してる間に…」
「私だってその間必死にカモ君が目覚めないように気絶技かけたりしてたのに…」
「「「ジロォ〜〜〜」」」
「うう、うわぁぁぁ〜〜ん!!だから私あんな所入るの嫌だったのにぃぃ〜!!」
「こ、こらマリーナ嬢!ここでそんな風に泣いたらまるで本当の事の用に聞こえてしまうでは無いか!!」
「ハックさんさいてー」
「女の、敵…」
「ハック君、真面目な人だと思ったのに…」
「うぅ、違う!こんなの、私のキャラでは無い!」
ポン
勇者が優しくハックの肩に手を乗せる。
「ちゃんと責任、取ってやるんだぞ。」
「うわぁぁぁ!!!!」ガクガク
「…ねぇ?誰かツッコミ役居ないの?あんまりにも見てられなくて出てきちまったよ。」
ナユルメツが、やれやれと言った表情で現れた。
野営地では、丁度荷物をまとめあげて馬車が出発する所だった。最初の御者見習いはやってみたいと要望があったサイカ。その隣に補佐をする形でアンジェラが御者席に乗っている。
「それにしても、『カッポン』かぁ。1回も行った事なかったよぉ〜。」
「領主家の屋敷があるシャイガルとちょうど真反対方向にも街があるなんてな。」
「うむ、馬車なら山沿いに進めば半日程で着くだろう。かく言う私も幼少の頃に1度訪れただけで、父が良く話していた。」
「騎士殿、あそこも一応ザゥンネ領に入るのか?」
「大昔はそうだったらしいが、あまりにもファステから離れすぎているし、今は自治区という名目で半独立しているとの事だ。弟ダスキドに聞けばその辺りの歴史を詳しく知っているだろうな。」
「成程。そっちの方は自分も特に用事が無かったので行った事はありませんね。」
「私もない。でもたまにそこから来た人が喫茶店のお客さんにいる。」
「私はずーっと昔だけど、仕事の用事で行った事があるくらいね。まだ冒険者だった頃の話だけど。」
「しかし…『温泉の街カッポン』か…」
勇者は湧き上がる笑いを堪えるのに必死だ。
(来たか…ついに来たか!この手のゲーム恒例の、温泉イベント!!たまんねぇぜ…うくく…)
第56話 END
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