NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第53話A 『ハック先生の魔法講座』




「うー…ん、くぁ!はぁぁ〜〜」



 草原にある小高い丘に寝転ぶ勇者が大きく欠伸をした。


「うん、大分休んだし…そろそろ気合い入れるか!」

「マールた〜ん!!ハックさん呼んでるよ〜!」

「おータリエル!今行くよ〜!」




 ここはファステの街より少し離れた位置にある、冒険者用の野営地だ。ここでしばらく泊まり込み、冒険者としての技術を磨く。

 まずは教え慣れているハックが魔法の授業をしてくれるのだが、それ以降はそれぞれのパーティーメンバーが交代して先生を務め、各人の得意な事をみんなに教え合う。それでパーティとしての行動力を底上げするというのが今回の作戦だ。






「わりぃ!お待たせ!」

「ユーシャ!遅い!!」

「うむ、それでは全員揃ったのでこれより私の授業を開始する!」

「「「わー!!!」」」パチパチパチ


「この中には既に魔法の基礎を学び、応用も出来ているものも居るが基礎の中の基礎から始めさせてもらう。分かりにくい点があったら遠慮なく質問して欲しい。」

「「はーい」」


「それではまず…魔法がどう言った物か理解しているかを聞く。この中で魔法の使えない者は?」

 勇者、アンジェラ、マリーナの3人が手を上げた。


「え!?タリエル魔法使えるの!?」

「あったりまえじゃん!美少女鑑定士だよ?アイテム識別だったりダメージを修復する魔法ぐらい使えるよ!」

「へー知らんかった。ってか、『元』鑑定士だろ?」

「うるさい!マルたんのばーか!」




「ゴホン!では話を続けよう。…マリーナ嬢、魔法とは何か分かるかな?」

「はい!えーっと…肉体の内側に宿るエネルギーを、より明確な概念をもって外に放出するもの…です!!」

「素晴らしい。君は本当に優秀な生徒だ」ニコッ

 辺りからも拍手が起こり、マリーナは赤面し照れていた。


「それでは次に、どうやって魔法を習得するのかを答えて貰おう。勇者殿、答えられるか?」

「そんなの簡単だよ。図書館行って金払って呪文買うんだろ?」


 辺りからは小さくクスクスと笑い声が上がった。

「な!違うのか?」

「うむ…流石に外の世界から来た勇者殿に聴いたのが間違いだったか。アンジェラ殿は答えられるか?」

「あー、知ってる人に教えてもらう。」

「なんだそんなの当たり前…」

「正解だ、アンジェラ殿。」
「何っ!!」

「ユーシャがさっき言ってた奴って何?ま、これぐらい冒険者やってれば答えられても『普通』だけどね!」フンスッ

 アンジェラが全力のドヤ顔で鼻息を吹きかけてきた。

「キ、キィィー!!前作のゲームじゃそうだったんだよ!!」

「マルマルさん落ち着いて…」


「基本的に魔法及び魔術と言われる分野の知識を学ぶには、自分より上位のスキル保有者に教えて貰わなければならない。これはこの世界で共通の知識であるから、覚えておくように。」

「「はーい」」

「では次に、初級魔法を一通り覚えた後の事についてだが、中級に上がるためには何が必要か分かる者は?」


 魔法の使えない3人は頭を悩ませたが、答えは出なかった。


「はい、自ら魔法を作り出すことです。」

「うむ、流石はサイカ殿。我々の中での最年長者だけはあるな!」

「ちょ!ちょっと!ハック君!変なタイミングで歳の事ばらさないでよ!!」


「えぇ?ハックより年上!?なーんだサイカも結構おば…」



 冷たい感覚に、一瞬気を失いかけた。勇者の首筋には、凄まじい鋭さの包丁が当てられていた。


「なに、かな?勇者君??」ゴゴゴゴゴ…

「ひぇっ!な、なんでもありま…せん…」ゴクリ




「貴様ら…折角錬金術師が教えてるんだから真面目に聞いたらどうなんだ!?」

「サ、サイカさん!リーダー!どちらも落ち着いて!」

「やーい怒られてやんの〜キャハハ!」



「はぁ〜…こうなる事は分かっていたが…どうも締まらないなぁ。」

「先生!頑張って下さい!」



Bパートに続く→

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