NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第9話C 勇者はどうしても仕返しがしたい。みたい?


 「きっくんPAPA」の足首から下だけが石化し、転倒する。やばい、逃げられたらおジャンになるところだった。それにしても、まさか助けてくれるとはな。ハックさんよ。

「貴様等、先程勇者殿に向かって、仲が良く連携が良いから勝てないとか言ってなかったか?それとも、仲間を置いて先に逃げるのが貴様達の連携か。」

 コツコツと杖をつきながら群衆をかき分け、<錬金術の師マスターアルケミスト>が顔を出す。おいおい、そんな前から見てたんならさっさと助けろよ、まったく。

「すまぬ勇者殿、わざとやられているのを見ていて、勇者殿の計画を壊したく無かったのでな。しかし切りつけられるのを見たときはこちらも心の臓が跳ね上がったぞ!『そう』ならそうと先に言って欲しかったな!」

「ははは、そ、そりゃあすまんかった」

「やられ続ける勇者殿を見たタリエルが泣いて騒いで私のローブを鼻水まみれにしおった。これは後で勇者殿に請求するからな。」

「ぶぇっ!?!?べ、別に泣いてないし!!さっき私に変な魔法掛けたしいい気味だったし!!」

 タリエルがちょっと離れた所でひょっこり顔を出した。目には涙を流した様な後が残っている。

「差し出がましい真似だと思ったが、勇者殿の狙い通り、全員1キルした時点であやつに『通報』させておいたぞ。」

「マルたん!私がしっかりDM送っといたからね!『未成年』が街中で『PK』してるって!これが狙いだったんでしょ?」

 なんだあいつ等、プレイヤーに関わらないなんて言ってたくせに。しっかり自分から関わってんじゃねーか。それも頼みもしてないのにこっちの計画まで読みやがって。

「なんだよ、一体何だよコイツら!!ただのコンピュータじゃないのかよ!」

「いいや違う。私達は歴とした『キャラクター』だ!、そしてそこに居る勇者殿の仲間だ!お前達のようなみせかけではない、お互いを尊重する、な。」

「は、ははは、ハック・・いつ仲間になったんだよ?クク・・」

「何を言っておる?私達の間にはすでにコミュは発生しておるのだぞ?歴とした仲間ではないか」

「まぁ、そのコミュランクを勝手に操作してこなければ素直に仲間って認めてあげられるけどねー!」

「・・所で勇者殿、先程からずーっと刺さってる脇腹の剣、それも『計画の内』の認識で良いのだな?見るに耐えがたいのだが・・・」

 ハッとし、「すーぱーたくや神」は剣を抜こうとする。が、勇者は両手でその腕を止め、さらに奥に突き刺そうとしてくる。

「キモイ!なんだよまじきもいぞオイ!!助けろよオイ!」

「おっと無駄だ、もう一人の足にも石化呪文を駆けて置いたのでな。」

「あ、あぁ、ありがとうハック。もうちょっとなんだ。」

「マルマルさーん!連れてきましたー!!衛兵さんと一緒です!それと・・・『店の人達』に話したら全員ついて来ちゃいました~~!!!」

 マリーナが衛兵と、その後ろにごろつきの大群を従えてやってきた。良し、仕上げは終わりだ。

「さきほどマリーナ嬢から通報を・・って、何をやってるんだ君は!!」

「えっ?」

「『街中で戦闘行動は禁止』だぞ!、しかもPK(プレイヤーキル)するとは許せん!ファステ一帯に『警戒令』を出す!!」

 よし、決まった。これを待ってた。周りで見ているだけだった群衆が次々に武器をを構える。

「は?なんだよ!おい!俺達はプレイヤーだぞ!そんな事して良いと思っているのか!?」

「バーカ、だから剣を刺しっぱにしたんだよ。よっと」

 そうやって体から剣を引き抜くとぺたんと下に座り込む。出血でフラつき、顔を持ち上げるのが辛い。

「お前は『現行犯』だ。ただの通報なら衛兵の調査から始まるが、お前等はその現場を見られた。おおかた、物の盗み癖がある奴なんて、周りの住民に通報の属性があるかないかぐらい確認してこそこそやってたんだろ?今までお前等が捕まらなくて良かったぜ、この現行犯の制度知らないみたいだからな。『前作』でもちゃんとあったぞ?」

「う、うわあくるな!」

「ひいぃ」

「お、俺達は石化してるんだぞ!卑怯だ!」

「街中で現行犯が発見されれば『警戒令』が出される。それは犯した罪によって犯罪度が違うが、お前等が犯した罪は『街中でPK』、モチロン犯罪度MAX。犯罪度MAXで警戒令を出されると住人は『直ちに身を守る行動』を取る。わかるか?」

 3人は周りの住民を見渡す、一般人のキャラは農具を、冒険者風のキャラは各種武器を、大魔道飯店の常連はスパイク付きの棍棒を。辺り30人は居るかという大人数がじわりじわりとにじり寄ってくる。

「あばよ。クズのクソガキプレイヤー共。おめーらやっちまえ!!!」

 勇者の一声で辺りの暴徒は一斉に襲いかかる。物の数十秒とかからないうちに3人はあっという間にキルされた。怒りの収まらない住人(主に大魔道飯店常連)が死体蹴りを続ける。

「ぷっ!あーっはっはっは!!」

 腹を押さえて座り込んでいた勇者が笑いながら仰向けに倒れる。ソレを見てさっとタリエルとマリーナが近くに寄ってくる。

「大丈夫!?マルたん血を出しすぎておかしくなった??」

「うっく・・奴らのやられ方がおかしかっただけだよ、いちち・・」

「なんでこんな!どうしてこんな無理したんですかマルマルさん!!」

「いやーねぇ、なんだろうな。罪、滅ぼし、に、なるのかな?」

「マルたん!!」

「すまんね、もう目が利かない。二人とも、た、頼みがある」

目が見えないのでどちらかの手を握り、短剣を手渡す。

「か、かいふくはまにあわねえぇ。これで、とどめを。」

「そそんな!出来ません私!」

「いいから、お、おれはおんなのてきなんだろ?これでさせよ。きが、はれる」

「何ふざけた事言ってるんですか!!勝手に、自分で勝手に生き死にを決める人は大っ嫌いです!絶対許しません!だから、生きて下さい!」

「おいおい、ざんこくなこと、いう、な、よ」

「ダメです!!マルマルさん!!」

「くそ・・・タリ、エル。おまえが・・やれ」

「マルたん!!無理だよそんな事出来ないよぉ!!」

「ま、た・・まほう、かける、ぞ。」

「いいよ掛けても!ちゃんとマルたんの事好きになってあげるから!だから生きて!せっかく友達になれたのに!!!」

「お、まえら。さっきか、ら、か、勘違い・・・」


そこまで言うと勇者の手から力が抜け、傷口を押さえていた手と、短剣を渡そうとしていた手がだらりと地面に付く。瞳からは完全に生気が失われていた。

「いやぁぁぁ!!ゆうたーーーーん!!」

「だめぇぇぇ!!マルマルさーーん!!」









「いやだから勘違いしてるって」

「「ギャァアアァァアアァアァ!!!!!」」

 いきなり起き上がった勇者に勢い余って短剣を突き刺してしまう。どうやら二人は勇者が甦るのを見れてなかったようだ。

「いでぇっ!てめーらせっかく復活したのに怪我させんじゃねーよ!」

「ひ、ひぃぃゾンビ!!」

「おいおれだよ勇者だよ」

「あ、アンデット!!」

「だから生きてるって!!」

「落ち着きなさい二人とも」

「ハック!ありがとなさっきは!いやー流石だね<錬金術の師マスターアルケミスト>は。アイツらに走って逃げられたらちょっとキツかったんだけど、よく狙いが分かったな!」

「フ、伊達に<錬金術の師マスターアルケミスト>として尊厳を取り戻した訳じゃ無いからな。こちらこそ礼を言う勇者殿!」

「ん?まぁ、よく分からんが、これからはよろしくだ、ハック。」

「あぁ、友よ。共に戦う事を誓おう」

「ちょっと!!なーに男の友情ゴッコしてんのよ!!説明してよ!!!」

「つーかなんで知らねーんだよタリエル!多分お前の前で2、3回は復活してると思うんだけど!?」

「だって!あんなの・・!そ、そうよ。グロくて見てらんなかったわよ!」

「タリエルは勇者殿がトドメを差されそうになる度に顔を覆っていたのではないか?多分それで見ていないのだろう。」

「おあぁぁ!!ハックさん!!空気読んでよぉぉ!!なんでそんなこと今言うのさぁぁぁ!!」

「ふーんそうなんだ??あれれー信頼度解除した筈なんだがなー。なんか勝手にすげー勘違いして、とんでも無いこと口走ってた奴が・・」

「や、やめろぉぉぉ!!私はマルたんの事なんか全然これっぽっちも・・」

\テテーン/ NPC タリエルとのコミュが上昇しました。ランクは、3です

「ひ、いひひ!殺して、もういっそ殺して!!鑑定員としての尊厳も、女としての尊厳も失ったわ!もう、もうころしてーー!!」

「おいおい落ち着けってタリエル。ん?随分静かだなマリーナ。お前の事だから又ビンタでもしてくるのかと身構えてたが・・」

「ひぐっ、ぐすっ!マルマルさん、良かった、よがっだぁ~~!!」

「お、おおう。意外なリアクションありがとう・・抱きつくのはちょっと恥ずかしいからやめてくれ」

「ぼんどに、ぼんどにいぎでるの?」

「えーっと、はい。何故か死なない身体です。」

「違うぞ勇者殿、アレは私の見る限り『即時復活』だ。だから、死なない身体という表現は間違っているな。死んだままにならない身体、というのが正しい。」

「空気読めよハック!今結構良い感じだったろ?」

「これは済まない事をした。だが、こうでもしておかないと嫉妬の炎に狂う奴が現れかねんからな。」

「ちょっとハックさん、もういい加減私と『ケリ』付けません?今ならこれ以上失う物無いのでサクッと刺せますから私。」

「おぉ恐ろしい!金の無くなった<現金の亡者キャッシュグ―ル>は捨て身の攻撃をするのか。また一つ勉強になったな。」

「よがっだー!まるまるざんいぎででよがっだ-!!」

 なんだかもう、ひっちゃかめっちゃで笑ってしまう。なんだろう、色々大変な一日だったけど、なんか久しぶりにゲームが楽しいって思ったな。レッツエンジョイ『サウタナ』ライフ!!って感じだった!後は・・・


 \ リンゴーン リンゴーン / 重大な プレイ違反 が 発覚しました。未成年者のアカウント を 破棄します。

システムから警報が聞こえ、石化したまま死んだ3人の足下からデータが消えていく。ザマーミロ、だ。

「あ!アイツらのアイテム!!一個も取り返してない!! あー損しちゃったよ・・・勿体ない。」



第9話 END

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