NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第15話B そして勇者は装備を強化する。みたい?
「うぃーっす。仕事もらいに来ました〜。」
「おー兄ちゃん、この前の仕事じゃ熊に襲われたらしいな。災難だったの。」
相変わらず協栄ギルドの方は閑散としていた。ギルド内も受付のじーさんただ1人。まぁここに来て仕事受けるような人は朝イチに来て、1番利率のいい仕事を取っていくから午後に来たってほとんど人が居ないのは当たり前の事なのだが。
「そうですよ〜今度はちゃんと安全が確保されてる奴を受けたいんですけど。」
「うーんそうなると、隣の工房内での物作りする仕事になるが、それでいいかの?」
「お!そういうの結構好きっスよ自分!適当に見繕って下さい。」
「ほい来た、これが納品書と材料じゃ。受注した人は無料で機材使えるから、自分で作りたい物あったら作ってってもええぞ。」
「マジすか!?あざーっす!」
早速隣の工房へ移動する。中には木工用の機材や作業台、鋼材加工用のグラインダーやら色々な機材が所狭しと並んでいる。既に何人か居て作製作業をしていた。
「へぇ〜結構凄いのなぁ〜。どれどれ、納品書は…」
けいぼう+1 3個
ダガー 2個
グローブ(革) 1個
簡単な仕事なんだろうけど、どれもやった事が無いし作り方も分からない。とりあえず渡された素材を持って作業台に行く事にした。
「とりあえずはグローブ作ってみるか…おぉ!?」
グローブを作ろうと手近にあった工具を触ると、自然と身体が動き、テキパキと作業がすすむ。
「おーなるほどこりゃ面白い。流石ゲームの世界だな。製作はとりあえず素材が揃って作業台の前にいれば自動的に作れるのね。」
特に意識する事が無くても手は進み、必要な工具を掴んで一通りの作業をこなしていく。あっと言う間に革のグローブが完成した。
「出来た出来た。でも雑ってのが気になるな。」
勇者の作製したアイテム名に(雑)という項目が付いている。どうやら熟練度次第で製作したアイテムの効果が上がるらしい。
「アイテムクリエイト好きにはたまらんだろうな、こう言う細かい所。さーて次は…あ?」
ダガーを作ろうと鉄の素材を取り出そうとしたが、アイテム欄にはまだ革の素材が残っていた。貰ったのは1つ分の材料だけのはずだった。
「アレ?いや、間違いない。確かに1つ分の材料だけだったはず。うぉ!」
久し振りの感覚に驚く。上着にしまってある黒いメニューボードだ。強く振動している。
「おいおいまさか…ウォォ!!こりゃまじかよ!」
新たに読める部分が追加されていた。そこに表示されたのは『クリエイト:消費なし』の文字だ。早速試してみるもやはり素材は減っていない。
「すげぇ!アイテム作り放題だぞ!!ってアレか、素材は最低でも作製に必要な分は揃えなきゃならないのか。成る程ね〜」
2つ3つ革のグローブを作って試してみたが、やはり素材は消費されてない。勇者は小さくガッツポーズをした。
「熟練度上げはまた今度にして、残りをささっと作り上げちまおう。次はダガーにけいぼうか。」
グラインダーの前に移動して、パパッとダガーを完成させる。次は木工作業台に移った。
「えーっと…何々?+強化は同じ武器を素材として更に追加素材が必要なのね。ここら辺は前作と変わらないな。」
勇者は試しでけいぼう+1を作ってみる。この場合は、元となるけいぼうと素材となるけいぼう、更に木の素材が必要になる。作製と同時に黒いメニューボードが振動する。
「素材消費しないのはいいけど、モノ作る度に毎回振動されるのもびっくりするなぁ。しかし、木のけいぼう2本使ってんのに出来上がるのがけいぼう1本ってなんだか面白いな。」
別にゲームの粗を探している訳ではないが、こう言う部分はやはり体感型ゲームだと表現に違和感を感じる。面白いけどやはりゲームには限界があるのかと考えてしまう。
「えーっと確か3本作るんだったよな?あれ、4個作っちゃったか。今はこんぼうの方を装備してるからいくら+装備でもけいぼうはいらんな。売るか誰かにくれてやるか…」
素材は消費しないので、間違えて惰性で4つ作ってしまったけいぼうを並べて見る。
(ハックは魔術系職業だから使わないだろうし、そもそもこんなFランク装備必要とするレベルの仲間いるか?いてもせいぜいマリーナ?いや、要らんだろう。作るより買う方が安いアイテムなんて。)
けいぼうを処分しようと考えたが、ふと面白い事を思いついた。
(アレ?これ武器も素材として扱われているから、これも消費されない?って事は初級レベルでの強化制限までは大概の武器強化出来るかも?)
サウタナの設定では、+3までならどの武器及び防具も素材さえ集められれば強化できる。それ以上強化したい場合は装備強化の制限を解除するパッシブスキルが必要だった。
ただし、そのスキルを得られるのも並大抵の努力だけでは出来ず、手に入れたとしても各ランク毎に別スキル扱いになっているので、Dランクの武器だけ+4、Eなら+5、防具はFの+5までといったようにそれぞれで強化制限は異なる。しかも正直言って+5にしたからと言って凄まじく性能が上がるわけでもなかったのでほとんどのプレイヤーはやっても+2ぐらいで止まっていた。
「よーし本当だったらこんな事勿体無くてしないけど、最弱武器けいぼうの+3作ってみるか。」
シンプルに、強化制限限界のけいぼうがどれ程攻撃力が上がるのか見てみたかった。ただそれだけだった。勇者は『3回』けいぼうを強化した。また黒いメニューボードが振動する。
「よーし出来た、けいぼうの…+4!?はぁ!?!?」
事は単純だった。勇者は制限MAXの+3にするつもりで『3回』強化したが、元に使ったのは納品の為に間違えて余計に作った+1のけいぼう。つまり合計で『4回』強化された。ただそれだけだった。
「え?なんで4?あれ??あぁそうか、4になるのか。で?強化制限は??」
まさかと思いデバッグメニューを開く。さっき表示されていたメニューのすぐ下に、『クリエイト:制限なし』の文字が。流石にこれは小さなガッツポーズだけで止まらなかった。
「うぉぉおぉ!!マジで!?これ、資金無限どころの騒ぎじゃないぞ!?素材も消費しないし強化もし放題!?お、俺の勝ちだぁぁ!!」
あまりの喜びに謎の勝利宣言をしてしまう。周りで作業していた他の人達が痛々しい視線を送ってきていたが、そんな事は気にしていられない。これはゲーム内生活においてとてつもない可能性を示していた。
「よし、すげぇモン作ってハックに見せびらかそう!うくく!」
そう言って勇者はひたすらにけいぼうを強化し続けた。
Bパート終了→
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
4
-
-
104
-
-
127
-
-
22803
-
-
2265
-
-
75
-
-
52
-
-
59
-
-
1
コメント