NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第30話 『ゆうべはおたのしみでしたね』



*注:未成年者閲覧注意??
作者補助席より



「「おぉ〜〜」」


 勇者とタリエルが宿屋で予約した部屋に入っての第一声は、そんな声だった。

 あの後もう少しみんなで酒を飲み、食事をしながら明日の行動について話あった後お開きとなり、今この場には2人だけとなっていた。

「へ、へぇ〜〜シャワーやトイレ、あと洗面所も一応完備されてるんだぁ〜」

 誰に言った訳でもなく、勇者は独り言のようにあちこちを見回って口に出した。…と、言うよりも何かしていなければこの気まずい空気に押し殺されそうだったからだ。

 部屋の中は小さなソファー、机と椅子、窓際に置いてある花瓶と花、簡易的な寝間着やタオル類が2組、そして簡素なダブルベッドが中央にあった。

 勇者はどうしてもそのダブルベッドに腰を降ろす気になれなくて、椅子に座ってしまう。タリエルは部屋に入るなり無言で、ソファーに深く腰を降ろして座り込んだ。

「さ、さーて、部屋の中で鎧来てても仕方ないしな。脱ごうっと!」

 わざとらしく声に出し、勇者はミスリルのハーフプレートを装備から外す。正直言って、今タリエルの顔を直視することが出来ない。


「お風呂、どうする?マルたん。」

「ヒェグワゥ!!」ガタッ

 タリエルの放つ、『お風呂』というパワーワードに、勇者の心は激しく揺さぶられた。

「そ、そうだな!えーっと!!さ、先に入ってくれ!!」

 背中を向けたまま勇者はそう答える。それが、今できる精一杯の反抗(?)だった。


 不意に、後ろに居るはずのタリエルの気配が消え、振り返ろうとした瞬間に反対側の耳元で近付いて来たタリエルが囁いてくる。

「一緒に入っても、良いんだよ?」

「ば!ば、ば!!何馬鹿なこっとと、言ってんだよ!そんな事すっする訳ねーし!」ビグゥッッ

「コーフンしちゃって、マルたん可愛いんだから!でも残念。」

 いつもと違う、大人なオーラ全開のタリエルに戸惑う勇者。

(なんだ?何なんだよ!アイツ、酒に酔ってるからあんな感じなのか!?)ソワソワ

「んじゃ、先に浴びるねー!」

 そう言ってシャワー室に入っていくタリエルの姿を、勇者は視界にすら入れる事が出来ないぐらいに動揺していた。


「ええーいくそぉ!!落ち着け俺!なに動揺してんだよ恥ずかしいなぁもー!」バタッ

 タリエルが居なくなってから初めてベッドに横たわる勇者。恥ずかしさのあまりベッドでゴロゴロと寝返りを繰り返す。

「落ち着け……冷静さを取り戻すんだ…俺は大人…大人の男……奴は仲間だ………仲間にそんな事するなんてサイテーだろ!た、たまたま今回は奴と一緒の部屋なだけだ……そうだ!たまたまだ!…………たまたま、仲間とそんな関係になる事だって、絆が深まれば………いやいやダメだ!落ち着け!!冷静に…冷静になれ………心を深く落ち着かせろ………そうだ…心を深く……リラックスして…………深く………グゥ…………」

 なんとも情けない事に、我らの勇者は寝息を立ててしまった。






「うーん…うん?」

 どれくらい寝たのだろうか?いつの間にか寝落ちしてしまったらしい勇者は、現状を確認しようと起き上がろうとした。

「あ、起きちゃった。」

「ん?タリエ…どわぁぁぁあ!!」ガバッ

 タリエルはベッドに横たわる勇者に馬乗りの姿勢で、勇者の顔を覗き込んでいた。しかもよく見ると、用意されていた寝間着にきがえていたのだが、サイズが全然あってないらしくブカブカのユルユルだった。あまりの無防備さに思わず勇者は臨戦態勢(??)を取ってしまう。

「なんなな、何してんだよ!タリエル!!」

「えーだってマルたんったら、せっかくこれからお楽しみって所なのに寝ちゃうんだもん。イタズラして起こしちゃった〜てへぺろー」

「やめろ!タリエル!俺達は同じパーティだ!プラトニックな関係でいよう!」

「なーに言っちゃってんのよウブなネンネじゃあるまいしぃ」ズイッ

「く、来るな!やめろ〜」

「せーっかくいい『おもちゃ』持ってきたんだからァ。ねぇ?」ズイッズイッ

「おも!おもちゃだって!?さ、最初からそんなのダメだろ!風紀的に…風紀的に!!」

「さ、私と堕ちるところまで堕ちましょ?私とチンチ「みなまで言うな!そういう事!!だからダメだって!!!」

 悪い顔をしているタリエルに思わず胸がときめく。

「さぁ。全てのしがらみから解放されて…互いの欲望の深ーい所まで探り合いましょう?」

 タリエルの柔らかな指先が、勇者の頬を撫でる。その愛おしく美しい切っ先に、思わず心を奪われる。

「あ、あうぅ…」

 さらにタリエルは顔を近付ける。吐息どころか、鼻先でさえ触れてしまいそうな距離だ。

「いいのよ?好きにしても。私達以外ここには誰も居ないわ」

 もはや勇者の視界にはタリエルしか映らなかった。彼女の目の奥に静かに燃える赤黒い欲望に、勇者は心まで焦がされる。

「う、うあぁ…」

「さぁ…全てを解き放って…私を受け入れて…もっと、深くまで…」

 タリエルの顔がゆっくりと離れて行き、下腹部の方へと移って行く。

「い、いやぁ」

「共に、堕ちて行きましょう。コレで…」

 身体を起こし後ろ手にゴソゴソと何かを取り出そうとするタリエル。その手にもつナニカを見た途端、完全に理性を失ってしまいそうな…そんな背徳感が勇者を襲う。ハッキリ言って勇者の我慢は軽く限界突破していた。




「準備出来たわよ。さぁ……一緒に………」




「い、いやぁぁぁぁ堕ちちゃらめぇええぇぇええぇぇ〜〜〜〜!!!!!」











「さ、コレを使って遊びましょ!!!!」コトッ チャラン

















「……………ん?………え?」
















 タリエルが取り出したのは、薄汚い『茶碗』だった。中にサイコロが入っている。









「チ、チンチって……『チンチロリン』の事?!?!」

「え?『チンチロリン』だけど…どうかしたの?」







 チンチロリンは、日本の大衆的な博戯(賭博・ゲーム)の一種である。数人程度(理論上は2人以上何人でも)が通常は車座になって、サイコロ3個と丼(ないし茶碗)を用いて行う。名称はサイコロが丼に投じられたときに生じる音を擬したもので、「チンチロ」と省略されることや「チンコロ」と呼ばれることもある。

──みんめー書房発刊『サイコロ賭博、チンチロリンのルーツについて』より抜粋─





「ぷ!プークスクス!!なーに言っちゃってんのマルたん?もしかして、えっちな事と勘違いしたぁ??ざーんねんでした!!いつぞやの変な魔法掛けてくれたお返しだもんね〜!!べーだ!!キャハハ何勘違いしちゃってんの恥ずかしぃ~〜〜!!」




 全てを理解した勇者は、耳まで真っ赤にし、ただただシーツの海に顔を埋め涙を流すしか出来なかった。








第30話 END

みんな!サイコロ賭博は違法だよ!未成年者は気を付けようね!!補助席との約束だよ(すっとぼけ)


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