NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?

激しく補助席希望

第23話A #1 『残念勇者の伝説』



 勇者がこの『大陸』に来て15日が経過した。




「ねぇ、マルたんまだあのままなの?」

「あぁ。しばらく経つな。ダンジョンから帰ってきた夜に何かあったみたいだが、本人は口を開いてくれないのだ。」

 錬金術工房に納品の用があって来たタリエルが勇者の様子を遠目に伺う。ため息をつき、どんよりとした目つきで外を眺めては、またため息をつく。それを午後からずーっと繰り返している。

「大魔道飯店で働いている時もああらしい。マリーナ嬢も心配していた。…店長殿も、怒鳴り甲斐が無くて一応心に留めているらしいな。」

「何があったんだろうね。ちょっと心配。」

「…想い人、だな。あの反応は。」

 急にコーヒーをこぼしてしまうタリエル。

「どうした?いつものソナタならタダで出された物は一滴も残さずに飲んで帰るではないか?」

「何言ってるんですかハックさん。てか、何言ってるんです?ハックさん。」

「おぉ動揺しておるな!そんなに気になるか勇者殿の事が!」

「うる!うるっさいわね!なんなのよ!!」

「今抱きしめなければ勇者殿が遠い所に行ってしまうとしたらどうする?」

「は、ははぁ?意味わかんないんですけど〜??」



「…ハァ…」



「また一つため息をついたぞ?あのため息一つ一つで勇者殿の心がだんだん離れて行くとしたら…どうだ?」

「意味わかんねーし!!うるさい!!」

 そう言いつつ、カップを持つ手の震えを抑える事が出来ないタリエル。

「今声を掛けなければ…彼は永遠に…」

「ま、マルたん!どったの元気無いねぇ!アハハ!!」

「ふぅ。やっと行ったか。」



「ん、あぁタリエル。なんか用か?」

「いや〜マルたん最近元気無いな〜って思ってさ!何かあったの??」

「いや…別にないよ。」

「良かったら話聞くよ?ね?」

「いいよ。構わんでくれ。」


 涙目になったタリエルがハックの元に帰って来た。

「で。どうだった?勇者殿のハートは動かせたのかな?」

「全部見てんじゃん!知ってるくせになんでそんな事聞くのさー!!」

「すまない。からかい過ぎたな。ソナタでも無理となると、勇者殿の悩みは相当重い物なのだろうな。」

「なんとかしないとマルたんが別の女の所行っちゃう〜!うぇ〜〜ん!!」

「ごめん下さーい!ハックさん居ます〜?あれ?タリエルさん?てか泣いてるんですか!?」

「ハックとマルたんに泣かされた〜」

「何を言う。ソナタが勝手に泣き始めたのではないか?」

「だぁって〜マルたんが他の女の所いっちゃうって〜〜びぇ〜〜ん!」

「うるっさいなぁ〜なんでタリエル泣いてんだよ?」

「マルたんお願い!私だけをみて〜!!」

「お前ついに頭の中までイカレちまったのか?マリーナなんとかしてくれ。」「ヒドイ!」

「私に言われても…今来たばかりだし。」


「今日はどうしたんだマリーナ?配達かい?」

「いえ、それが…ハックさんに呼ばれてまして…」



「オース、ハックいる?」

「ハック導師!お久しぶりです」

「はぁい!勇者君にハック君!」

「おぉ〜3人組も来たのか!今日はどうしたんだ?」

「私が呼んだのだよ、勇者殿。其方の落ち込み具合を心配して皆で一緒に話をしようと思ってな。」

「…わざわざすまなかったな。ありがとう。みんな。」

「何を言いますか!リーダーは自分達にとって大切な存在です。」

「私は別に報酬さえ貰えるなら何でもいい。」

「いいのよ勇者君!私達もう家族みたいな物だものね。いつでもサイカ母さんを頼ってちょうだい。」

「うん…すまん。」


(ねぇ!ねぇねぇマリリーたん!!)ヒソヒソ

(何ですか?ヒソヒソ声で?)

(なーんか仲良すぎじゃない?冒険者の人達とマルたん!)

(それは…一緒にダンジョン攻略したって言ってましたし、絆が深まったんじゃないですか??)

(怪しい…)「ねぇ!マルたん!」

「ん?なんだよ?」

「ダンジョンで何かあったでしょ?」

「はぁ?何って何が!?」

「なんか狼狽えてるし!コレは…主にエロい方向でなんかあったでしょ!!!」

「お前何言ってんだ!?」

「確かにあった」「じ!自分も見ました!」「あったわねぇ!あつーい奴が♪」

「な、何言ってんだみんな…うぁ」

 タリエルは猛禽類の如く勇者を、睨みつける。

「ギギギィ!私というものがありながら…」

「なんでそんなにお前が怒ってんだよ!てか!いいだろ?例えそんな事があってもよ!」

「あーらじゃあ本人の公認って事で良いわねェ?」

 勇者の真後ろにふわりとナユルメツが降り立つ。そして緩やかに勇者の首に後ろから手を回す。

「ゲェ!!ナユルメツ!!やめろ!絡み付くな!!」「あん」


「あー!またそうやってすぐボインと絡む!!」

「俺は拒否ってるだろ!むしろ助けてくれよ!」

「良いじゃないかブレイブハート。別に減るもんじゃないしさァ。」

「ナユ!マジで止めろって!あれホント身体にダメージあるんだよ!」

「何よ!ボインと何したらダメージ受けるって訳!?もう、信じられない!!」

「だぁ〜〜!!もう良い加減にしろッッ!!!」


 勇者の大きな怒鳴り声で辺りが一瞬静かになるも、みんなにこやかにしている。

「な、なんだよ…」

「嬉しいのだよ。勇者殿がいつもの調子に戻ってくれてね。」

「ちょっと私は全然納得してな…フガッッ」

「タリエルさん!今は少し空気読んで!」

「はーいタリエルちゃん。おばちゃんと向こうでお話ししましょうねぇ〜」

「まーたサイカが子供扱いしたー!!」

「お主ら、せっかく勇者殿が気を良くしたのに良い加減に静まらないか。」

「せっかくリーダーがまた明るくなってくれたのに…コレじゃあみんなで励ます計画が台無しですよ?」

「ヤンド、それ言っちゃダメな奴。」

「し!しまった!!」

「あんた達ホ〜ントおかしな集団だよねェ。」

「回復する死体に言われたくない」

「それもそうか。キャッハッハ!」



「ぶっ、クク…あっはは」

「お?今日初めて笑ったな?勇者殿。」

「なんかどーでも良くなったよ。ありがと、ハック。」

「いやいや、コレも勇者殿の人徳だと私は思うぞ?」

「戦闘では役に立たないけど、ユーシャは良い奴。」

「ありがと、アンジェラ。それ本人の前で言うセリフじゃ無いけどな。」

「さて、勇者殿のご機嫌も取れた事であるし、せっかくここに皆一同集まってもらったので第3回、賢人会議を取り行う!!」


「「「えぇ〜〜」」」



Aパート終了→

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