NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第14話A そして勇者は仕事を見つける。みたい?
時間もだいぶ遅くなり、辺りはすでに薄暗くなっていた。勇者は女の子2人をこのまま歩いて帰らせる訳にも行かなかったので、家まで送る事にした。ハックの家は魔法の実験をする為に街中から歩いて10分程の、少し離れた外柵沿いの場所にポツンと1つだけある。そこから街中までは特に視界を遮るような物もなく、危険だとかは全く無いのだが。
道中3人の間にはほとんど会話が発生しなかった。みんな、疲れ切っていたのだ。賢人会議に。
「…すっかり、遅くなっちゃいましたね。」
「そうだな。」
「……。」
さっきからこの様な取り留めのない話が出ては、誰かが相槌をする。またしばらくの無言。これを繰り返していた。タリエルに至ってはほぼ終始無言だった。
鑑定局ファステ支店の前に着くと、タリエルは挨拶もなく小走りで店の入り口に駆けていく。正直、また明日とか、バイバイとか何か挨拶があってもいいだろうと思った。が…
「私、本気だから」
ドアを開けて中に入る直前に、勇者を見据えて一言だけ話した。その目にはうっすらとゴールドの色が見えていた。バタンと音がしてタリエルの姿が消える。
「本気に、されちゃいましたね。」
「勘弁してくれよ…」
思わず崩れ堕ちて膝に手を着く。タリエルに振り回されっぱなしなのにはいい加減疲れてきた。しばらく距離を置いた方がいいかもしれんなこりゃ。
「あいつは、俺じゃなくて俺のサイフと結婚したいんだよ。自分に正直なのはいい事だと思うけど、正直すぎるのもなぁ」
「そうですか?案外、本当にマルマルさんの事好きになったかもしれませんよ?」
「ハハハッないない。考えて見ても、俺アイツには酷い事しかしてないんだよなぁ〜。せめて普通の女の子に好きとか言われたら嬉しいと思うけど、下心丸出しじゃあねぇ。」
「フツーの、女の子に、ですか??」
「うん?あぁ、まぁそうだな」
なんか、マリーナモジモジしてない?心なしか顔赤くないか??
「あ、あの…マルマルさん。ちょっとお話しが…」
そんな事言いながら、マリーナが俺の服の袖の辺りをちょこんと摘んでくる。なんだ!?どうしたマリーナ??
「ど、どしたの?」ドキドキ
「あ、歩きながら聞いて下さい!あの、私、冒険とか旅ってした事無くて、その…色々と不安なんです。だから…」
「あぁ、それで?」
「相談したい事があるんです。その…2人っきりで。」
「相談?2人っきりで!?」ドキッ
「ハイ、その…ダメですか??」
なんだ?本当に訳がわからないぞ!?俺はウィンクしてないし、こんなイベントが発生する訳がない。
「いや、駄目では無いけど、夜になったし辺りも暗いよ?明日にでも…」ドキドキ
「そっちの方が…都合良いかな〜なんて、アハハ」カァァ
えー!?なんなの!?コレ、シンプルに俺モテてるの?嘘だろ??
「いやいやいやマリーナ!もう暗いから、ね!お家の人も心配するし!さ、帰ろう!!」
「でしたら、ちょっとあそこで…『休憩』とか、して行きません??」
「きゅ!休憩!?!?」ドキッ!
思わず声が裏返った。耳まで真っ赤にして恥ずかしがり、顔を背けるマリーナが指すピンク色のネオンの看板の先を見ると、そこには…
*☆まさかの大魔道飯店☆*
「へぇっ?」
「野郎ども!いまだかかれッッ!!」
「て、てめぇら!店のゴロツキ共!!マリーナ、ハメやがったなぁ!!」
「すまんなぁ勇者のあんちゃん。あんたを生きて連れて来れば、『依頼主』がたんまり報酬を払ってくれるんでな。ま、お互いビジネスだ。割り切って行こうやぁ」
「ちきしょー!マリーナァ!!」
「ごめんなさい!マルマルさん!!ウチも家計がかかってるんです!ってちょっと皆さん!乱暴しないって約束したじゃないですかぁ!!やめて下さい!!」
ズタ袋を被らされた勇者は、ボコボコにされながら締め上げられ、闇夜に引き摺られていく。
しばらくしたら冷たい場所に放り出された。辺りは物音せず静まり返っている。ズタ袋を取り辺りを見回すと、食料品倉庫のような所だった。まぁ、この場所にしても依頼主にしても、大凡で予想は付くのだが。
「よぉ、『トンマ』ぁ。先ずは復活おめでとう、と言っておけば良いか?」
Aパート終了→
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