NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第8話A 勇者はどうしても取り返したい。みたい!!
体感型ゲームというのは普通の画面越しのゲームと違い、完全にその世界観に全ての感覚が支配されるゲームだ。まるでフィクションの世界に入り込む、初めてプレイした人は誰でもそれが現実なのではと錯覚してしまう。
新作ソフトの発売とは現代科学の高度な技術と、新たな挑戦にたゆまぬ努力を続けるゲームメーカーとの結晶だ。だが体感型だからこその問題がある。
どのような作品であっても、それに登場するキャラクターに全く人間味が無ければ、プレイした人は一気に現実に引き戻される。目の前のキャラクターがどんなにリアルでも、同じ内容の会話を延々と続けていれば気味が悪くなりこれはプログラムで予め決められた事しか話せないと興ざめしてしまう。
そこで開発されたのが体感型MMORPG用人格シミュレータ。ゲームの登場人物に人間味を持たせるために、簡単な雑談や挨拶、一般的な喜怒哀楽からなる表現などを演出し、あたかも人と話をしているかのように感じさせるソフト。各メーカーがドンドンと精度を高め、今ではほとんど違和感を感じない程に成長している。
ハックやタリエルに人間味を感じてたのは、新作ソフト用に開発された人格シミュレータの出来がとても良いからだとなんの疑いも無く思っていた。だがそうでは無いらしい。彼らだけ『特別』だと言う。
「ハッキリといつからとは言えないんだけど、ある日急に『自覚』したの。これはゲームの世界なんだって。自分はNPCと言われる存在だーってのが、ビビビーっと頭に響いたのよねぇ。」
「私も似たようなものだ。魔法の研究中に突然『理解』した。疑問は一切無く、ここは仮想現実なんだとわかった。ただ、不思議なことが一つ。それはあやつと顔を合せた途端、お互いをそうだと認識出来たことだ。」
「いつもお店に来てたしもっと前から顔なじみだったのね。で、その『自覚』症状が現れて次の日ハックさんが店に入ってきた瞬間、あ!ハックさんも一緒!!って思ったの。なんでって言われても、そうだとしか言えないのが困るのよね。」
ハックもそれに同意しうんうんと頷く。ふたりは当然のごとく納得しているのだ。自分達がNPCだと言うことに。
「ちょっと待ってくれよ二人とも!それって・・・とてもおかしいことなんだ。ゲーム内で制作された人格シミュレータは、現実やゲーム以外の情報は全て弾いてデータを収集する。そのはずなんだ。だから、そもそも『NPC』という言葉自体も発することは出来ない設定なんだよ。」
「そういわれても・・・ねぇ。ハックさんやっぱりこれプレイヤーさんに言わない方が良かったんじゃないですか?」
「しかし貴様も見ただろう?勇者殿のアレを、アレはおそらく開発者専用端末である可能性が極めて高い。なぜそれが『アイテム』化してるのは分からないが・・・」
「開発者専用だって!?ますます混乱してきたよ。なんでそんなことになってんだ。」
「まーいいじゃないマルたん。それよりもさー、それ使ってみてよ?」
「はぁ!?」
「あ!さっきの私に使った奴のことじゃないかんね!一応言っとくけどまた私に変な魔法かけたらそん時はぜーったい許さないんだからね!!」
「私からも頼む勇者殿、それを使うところを是非見せてほしい。そうすれば何故私達がこのようにしてゲーム内に存在しているのかが分かるかも知れないんだ。」
「いやそんな詳しい設定とか書いてないと・・でも気になりますよね?わかりました。」
勇者は二人に少し離れるようにジェスチャーして距離をとらせた。二人は一応身構えてこちらを見ている。
「はぁ・・・『黒いメニューボード』起動!」
机の上に置いたまま指で触り起動させた。机の上にいつも通り文字化けされたメニューが表示される。
「おおぉ!!」「うわきもーい」
二人は表示されたメニューに食いつくも、それは全く読めないので調べようもない。角度を変えてのぞき込んだり、手でメニュー画面を触ろうとしてみたり、裏側に何か書いてないか探してみたりした。だが分かることはなかった。
「ねぇマルたんなんなのこのきもーい文章は?全然読めないんだけど??」
「勇者殿はこれが解読出来るのか?」
どうやら解除したメニューの内容ですらも二人には読めてないようだ。資金無限なんて文字が読めた途端に強攻に走る人物が大人しくしているのを見てほっとする。
「それが読めれば苦労してませんよ。推測ですけど、多分デバッグメニューです。」
「「デバッグメニュー??」」
「ゲームを作る課程で、うまくストーリーが進むかとか、ギミックだったりフラグ管理だったりをテストしなければいけないんですけど、そのテスト用に作られた進行措置のためのチート機能、みたいです。ただし何かの理由でデータが壊れている、そうだと俺は思ってます。」
ハックの顔が少し暗くなり、顔に手をついて考え込む。タリエルは全然話について来られず、飽きたのか別の本を読み始めた。黒いメニューボードを閉めてポケットに戻す。
「勇者殿、一つ、大事な質問をさせてもらう。君は・・・『開発者』なのか?」
「いや、全然違います。ただの一般人で、テストプレイに選ばれたうちのプレイヤーの一人ってだけです。ゲーム開始と同時にデータがバグってて、なぜかデバッグ専用のキャラでログインしちまったんです。ポケットには黒いメニューボードが入ってたけど、それ以外自分が置かれた状況すらも全く分かってないのが現状です。」
「そうか・・・それは、残念だったな」
今の『残念』と言う言葉、ハックさんはどんな意味で使ったのだろうか?俺に対して言ったのか?それとも自分に言ったのだろうか。タリエルにしてもハックさんにしても、なかなか人が良さそうだから彼等の為に何もしてやれないのが歯痒く思う。
Aパート終了→
新作ソフトの発売とは現代科学の高度な技術と、新たな挑戦にたゆまぬ努力を続けるゲームメーカーとの結晶だ。だが体感型だからこその問題がある。
どのような作品であっても、それに登場するキャラクターに全く人間味が無ければ、プレイした人は一気に現実に引き戻される。目の前のキャラクターがどんなにリアルでも、同じ内容の会話を延々と続けていれば気味が悪くなりこれはプログラムで予め決められた事しか話せないと興ざめしてしまう。
そこで開発されたのが体感型MMORPG用人格シミュレータ。ゲームの登場人物に人間味を持たせるために、簡単な雑談や挨拶、一般的な喜怒哀楽からなる表現などを演出し、あたかも人と話をしているかのように感じさせるソフト。各メーカーがドンドンと精度を高め、今ではほとんど違和感を感じない程に成長している。
ハックやタリエルに人間味を感じてたのは、新作ソフト用に開発された人格シミュレータの出来がとても良いからだとなんの疑いも無く思っていた。だがそうでは無いらしい。彼らだけ『特別』だと言う。
「ハッキリといつからとは言えないんだけど、ある日急に『自覚』したの。これはゲームの世界なんだって。自分はNPCと言われる存在だーってのが、ビビビーっと頭に響いたのよねぇ。」
「私も似たようなものだ。魔法の研究中に突然『理解』した。疑問は一切無く、ここは仮想現実なんだとわかった。ただ、不思議なことが一つ。それはあやつと顔を合せた途端、お互いをそうだと認識出来たことだ。」
「いつもお店に来てたしもっと前から顔なじみだったのね。で、その『自覚』症状が現れて次の日ハックさんが店に入ってきた瞬間、あ!ハックさんも一緒!!って思ったの。なんでって言われても、そうだとしか言えないのが困るのよね。」
ハックもそれに同意しうんうんと頷く。ふたりは当然のごとく納得しているのだ。自分達がNPCだと言うことに。
「ちょっと待ってくれよ二人とも!それって・・・とてもおかしいことなんだ。ゲーム内で制作された人格シミュレータは、現実やゲーム以外の情報は全て弾いてデータを収集する。そのはずなんだ。だから、そもそも『NPC』という言葉自体も発することは出来ない設定なんだよ。」
「そういわれても・・・ねぇ。ハックさんやっぱりこれプレイヤーさんに言わない方が良かったんじゃないですか?」
「しかし貴様も見ただろう?勇者殿のアレを、アレはおそらく開発者専用端末である可能性が極めて高い。なぜそれが『アイテム』化してるのは分からないが・・・」
「開発者専用だって!?ますます混乱してきたよ。なんでそんなことになってんだ。」
「まーいいじゃないマルたん。それよりもさー、それ使ってみてよ?」
「はぁ!?」
「あ!さっきの私に使った奴のことじゃないかんね!一応言っとくけどまた私に変な魔法かけたらそん時はぜーったい許さないんだからね!!」
「私からも頼む勇者殿、それを使うところを是非見せてほしい。そうすれば何故私達がこのようにしてゲーム内に存在しているのかが分かるかも知れないんだ。」
「いやそんな詳しい設定とか書いてないと・・でも気になりますよね?わかりました。」
勇者は二人に少し離れるようにジェスチャーして距離をとらせた。二人は一応身構えてこちらを見ている。
「はぁ・・・『黒いメニューボード』起動!」
机の上に置いたまま指で触り起動させた。机の上にいつも通り文字化けされたメニューが表示される。
「おおぉ!!」「うわきもーい」
二人は表示されたメニューに食いつくも、それは全く読めないので調べようもない。角度を変えてのぞき込んだり、手でメニュー画面を触ろうとしてみたり、裏側に何か書いてないか探してみたりした。だが分かることはなかった。
「ねぇマルたんなんなのこのきもーい文章は?全然読めないんだけど??」
「勇者殿はこれが解読出来るのか?」
どうやら解除したメニューの内容ですらも二人には読めてないようだ。資金無限なんて文字が読めた途端に強攻に走る人物が大人しくしているのを見てほっとする。
「それが読めれば苦労してませんよ。推測ですけど、多分デバッグメニューです。」
「「デバッグメニュー??」」
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ハックの顔が少し暗くなり、顔に手をついて考え込む。タリエルは全然話について来られず、飽きたのか別の本を読み始めた。黒いメニューボードを閉めてポケットに戻す。
「勇者殿、一つ、大事な質問をさせてもらう。君は・・・『開発者』なのか?」
「いや、全然違います。ただの一般人で、テストプレイに選ばれたうちのプレイヤーの一人ってだけです。ゲーム開始と同時にデータがバグってて、なぜかデバッグ専用のキャラでログインしちまったんです。ポケットには黒いメニューボードが入ってたけど、それ以外自分が置かれた状況すらも全く分かってないのが現状です。」
「そうか・・・それは、残念だったな」
今の『残念』と言う言葉、ハックさんはどんな意味で使ったのだろうか?俺に対して言ったのか?それとも自分に言ったのだろうか。タリエルにしてもハックさんにしても、なかなか人が良さそうだから彼等の為に何もしてやれないのが歯痒く思う。
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