NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?
第7話A 勇者はどうしても理解出来ない。みたい?
タリエルを落ち着かせるのにはだいぶ手こずったが、やっとまともに会話してくれる様になった。と言っても、体育座りのままの姿勢から動かなくなってしまったが。最初はその落ち込み様に段々と可哀相になり、ハーフプレートを返そうとしたが余計泣きじゃくって逆効果だった。
鼻水まで垂らしながら、「商人の端くれとして一度決まった商談は絶対に覆さない。これ以上私の尊厳を汚すのはやめて!」だそうだ。こちらとしても一度尊厳を汚された身である以上、彼女の決意に敬意を示し、心より感謝してアイテムを受け取った。
何というか、本当にすまん、タリエル。
そして、もっと落ち着かせなければならない人物がもう一人、ハックだ。
「頼む!お願いだ勇者殿、是非とも、是非とも『その』魔法の正体を教えてくれ!この通りだ」
いつの間にか勝手に気がつき起き上がってからずーっとこの調子で泣きついてくる。いい加減やめて欲しい。タリエルよりもこっちの方がやっかいだ。
「私は見た!アレは確かに魔法だ。あの強突張りで、金の為に全てを捨てた様な<現金の亡者>に・・・この世の天と地が決して逆さまにならないのと同じぐらいに不可能な『値切り交渉』を。しかもこの店はおろかここら一帯で最も価値のあるレアアイテム、『ミスリルのハーフプレート』をソナタは見事に成功させた。これは最早世界の理ですら曲げかねないような力を持つ、伝説の超越魔法であるに違いない!!たのむ!どの魔法大系であるかだけでもいいから教えてくれ!!」
「あーもーだからハックさんいい加減にして下さいってば!これはそんなんじゃ無いんですって。ただ・・・まぁ、ちょっとふざけただけみたいな物なんです!」
「一体どこでそれを学んだのだ?もしかしてその勇者という非常に稀な職業が関係しているのか!?自らの名に入っているぐらいだ、きっと特別な物に違いない!」
「いや、名前と職業がこうなのは・・・どうしようもないと言うか、言うに言われぬ事情がありまして・・・その」
「何故だ、何故教えてくれないのだ?どうしてそこまで拒むのだ!?」
「拒むも何も教えられるような物じゃないですし・・そもそも俺だってここまで事態が悪化するなんて思ってもみなかったんですよ。正直ちょっと・・・タリエルには悪かったと反省してます」
「奴の事はどうでもいい!!」
「ええぇ~~!?!?」
「アレは誰がどう見てもあやつ自らが招きこんだ・・・そう、まさに天罰!!」
「いや普通そこまで言います!?友達でしょ!?」
「これで少しはこの世の中に『金』よりも重い物があるという事を学ぶいい薬になっただろう。むしろ感謝している」
「え~・・・」
「そして、この私にとってこの世で最も重き物、それは 魔法の知識だ!それについてはあやつより執念深いぞ。さぁ!何の魔法なのかだけでも教えてくれ!」
「まいったなぁ~」
正直、なんと言っていいのか困る。まさか自分がウィンクひとつで人を溺愛させられるなんて言える訳がない。でも、何か取って付けたような理由でもいいから話さなければ、余計面倒な事になる。勇者は頭を悩ませた。
「何の魔法、ねぇ。うーん・・・ !そうだ、『恋の魔法』って奴。かな?なーんちゃってあはは~」
適当に口に出してしまったのが最後、取り返しのつかない事になってしまった。ハックの後ろから何かガラス状の物がたたき割られた様な音がした。それはまさに、ハックが生涯掛けてきたありとあらゆる物が崩れ去る音だった。
「こ、こい・・・ こいのまほう・・・。恋、だと?」
「あ、あのーハックさん冗談だからね?」
「恋!恋の魔法!!そう!!恋の魔法だ!この世の理を越えるのは、恋の魔法だ!!!何故、今までこんな事に気がつかなかった??おぉ、錬金術の神よ。あなたはなんと罪深い。この私から真理を遠ざけるとは・・・」
「えーっとハックさん?冗談だってば!ね?」
「そう・・・魔法とは心に流れる精神のエネルギー。すなわち『思いの力』!!これらをどのように発展させるかが魔法の大系!だが大系とは原初の始まりがあってこそ分流する。つまり!『思いの力』には始まりがある!!それはすなわち生命の始まり!全ての生命と繁栄には始まりがある。それは・・・まさに、他を想う、『想いの力』・・あぁ」
「ちょっとーハックさんカムバーック!!」
ハック目から一筋の涙がこぼれる。それは、窓から差し込む一筋の光に輝き、とても美しい物だった。
「人は、人を、想う。誰に教えられた訳でもなく。何故なら、それは命として正しき方向であるから。そしてそれは人だけでは無い。鳥も、動物も、虫でさえも・・・誰もが番う。命の流れる正しき方向へ。他を求めて一つとなり、新たな流れへと続く。『想いに引き寄せられし命』、それこそまさに・・・恋!」
「精神のあるべき方向、これらを操作し魂を惹き付ける。相手を求める事によって相手からも求められる。これぞまさに魔法の深淵であり頂き。それが・・・『恋の魔法』!!!」
や、やばい。止められる気がしない。ドンドンとおかしな方向へ転がり落ちていく。早くなんとかしないと。
「いや、あの。ハックさん?」
「勇者〇〇殿、そなたは・・・最初から真理を分かっていたのか。そうであるな・・・」
ハックが泣きながら握手を求めてきた。すまん。もう俺じゃどうにも出来ない。尊敬の眼差しを向けながらうんうんとうなずくハックから、必死に目を背けることしか出来なかった。
納得のいく答えまで自らを導き満足したハックは我を取り戻す。1つ咳払いをし、赤面し「これは失礼を」と取り繕う。ちょうどその時、足元に縮こまっているタリエルとぶつかる。持ってる杖でタリエルの頭をポンポンと叩く。
「これ、タリエルよ。起きなさい。いつまで塞ぎ込んでいるのだ?そなたは勇者殿によって恋の魔法にかけられた。それは・・・そう、それはとても清く尊き物。いい加減ゴールドへの執着はやめて、胸を張り前を向きなさい・・・目覚めの時間です」
「さっきから黙って聞いていれば!人のか弱き乙女心を弄んでなーにが『尊き物』だクソッタレ―!!!わたしの鑑定局員という尊厳を返してー!うわーん!!」
なんと二人は取っ組み合いのケンカを始めてしまう。お互い色々と物を投げつけ、話の通らない主張を繰り返す。
勇者の軽はずみな発言のせいでまたしても犠牲者がひとり。タリエルは純潔を汚され(?)ハックはあらぬ方向へと開眼してしまった。もうどうにでもなーれ!
Aパート終了→
鼻水まで垂らしながら、「商人の端くれとして一度決まった商談は絶対に覆さない。これ以上私の尊厳を汚すのはやめて!」だそうだ。こちらとしても一度尊厳を汚された身である以上、彼女の決意に敬意を示し、心より感謝してアイテムを受け取った。
何というか、本当にすまん、タリエル。
そして、もっと落ち着かせなければならない人物がもう一人、ハックだ。
「頼む!お願いだ勇者殿、是非とも、是非とも『その』魔法の正体を教えてくれ!この通りだ」
いつの間にか勝手に気がつき起き上がってからずーっとこの調子で泣きついてくる。いい加減やめて欲しい。タリエルよりもこっちの方がやっかいだ。
「私は見た!アレは確かに魔法だ。あの強突張りで、金の為に全てを捨てた様な<現金の亡者>に・・・この世の天と地が決して逆さまにならないのと同じぐらいに不可能な『値切り交渉』を。しかもこの店はおろかここら一帯で最も価値のあるレアアイテム、『ミスリルのハーフプレート』をソナタは見事に成功させた。これは最早世界の理ですら曲げかねないような力を持つ、伝説の超越魔法であるに違いない!!たのむ!どの魔法大系であるかだけでもいいから教えてくれ!!」
「あーもーだからハックさんいい加減にして下さいってば!これはそんなんじゃ無いんですって。ただ・・・まぁ、ちょっとふざけただけみたいな物なんです!」
「一体どこでそれを学んだのだ?もしかしてその勇者という非常に稀な職業が関係しているのか!?自らの名に入っているぐらいだ、きっと特別な物に違いない!」
「いや、名前と職業がこうなのは・・・どうしようもないと言うか、言うに言われぬ事情がありまして・・・その」
「何故だ、何故教えてくれないのだ?どうしてそこまで拒むのだ!?」
「拒むも何も教えられるような物じゃないですし・・そもそも俺だってここまで事態が悪化するなんて思ってもみなかったんですよ。正直ちょっと・・・タリエルには悪かったと反省してます」
「奴の事はどうでもいい!!」
「ええぇ~~!?!?」
「アレは誰がどう見てもあやつ自らが招きこんだ・・・そう、まさに天罰!!」
「いや普通そこまで言います!?友達でしょ!?」
「これで少しはこの世の中に『金』よりも重い物があるという事を学ぶいい薬になっただろう。むしろ感謝している」
「え~・・・」
「そして、この私にとってこの世で最も重き物、それは 魔法の知識だ!それについてはあやつより執念深いぞ。さぁ!何の魔法なのかだけでも教えてくれ!」
「まいったなぁ~」
正直、なんと言っていいのか困る。まさか自分がウィンクひとつで人を溺愛させられるなんて言える訳がない。でも、何か取って付けたような理由でもいいから話さなければ、余計面倒な事になる。勇者は頭を悩ませた。
「何の魔法、ねぇ。うーん・・・ !そうだ、『恋の魔法』って奴。かな?なーんちゃってあはは~」
適当に口に出してしまったのが最後、取り返しのつかない事になってしまった。ハックの後ろから何かガラス状の物がたたき割られた様な音がした。それはまさに、ハックが生涯掛けてきたありとあらゆる物が崩れ去る音だった。
「こ、こい・・・ こいのまほう・・・。恋、だと?」
「あ、あのーハックさん冗談だからね?」
「恋!恋の魔法!!そう!!恋の魔法だ!この世の理を越えるのは、恋の魔法だ!!!何故、今までこんな事に気がつかなかった??おぉ、錬金術の神よ。あなたはなんと罪深い。この私から真理を遠ざけるとは・・・」
「えーっとハックさん?冗談だってば!ね?」
「そう・・・魔法とは心に流れる精神のエネルギー。すなわち『思いの力』!!これらをどのように発展させるかが魔法の大系!だが大系とは原初の始まりがあってこそ分流する。つまり!『思いの力』には始まりがある!!それはすなわち生命の始まり!全ての生命と繁栄には始まりがある。それは・・・まさに、他を想う、『想いの力』・・あぁ」
「ちょっとーハックさんカムバーック!!」
ハック目から一筋の涙がこぼれる。それは、窓から差し込む一筋の光に輝き、とても美しい物だった。
「人は、人を、想う。誰に教えられた訳でもなく。何故なら、それは命として正しき方向であるから。そしてそれは人だけでは無い。鳥も、動物も、虫でさえも・・・誰もが番う。命の流れる正しき方向へ。他を求めて一つとなり、新たな流れへと続く。『想いに引き寄せられし命』、それこそまさに・・・恋!」
「精神のあるべき方向、これらを操作し魂を惹き付ける。相手を求める事によって相手からも求められる。これぞまさに魔法の深淵であり頂き。それが・・・『恋の魔法』!!!」
や、やばい。止められる気がしない。ドンドンとおかしな方向へ転がり落ちていく。早くなんとかしないと。
「いや、あの。ハックさん?」
「勇者〇〇殿、そなたは・・・最初から真理を分かっていたのか。そうであるな・・・」
ハックが泣きながら握手を求めてきた。すまん。もう俺じゃどうにも出来ない。尊敬の眼差しを向けながらうんうんとうなずくハックから、必死に目を背けることしか出来なかった。
納得のいく答えまで自らを導き満足したハックは我を取り戻す。1つ咳払いをし、赤面し「これは失礼を」と取り繕う。ちょうどその時、足元に縮こまっているタリエルとぶつかる。持ってる杖でタリエルの頭をポンポンと叩く。
「これ、タリエルよ。起きなさい。いつまで塞ぎ込んでいるのだ?そなたは勇者殿によって恋の魔法にかけられた。それは・・・そう、それはとても清く尊き物。いい加減ゴールドへの執着はやめて、胸を張り前を向きなさい・・・目覚めの時間です」
「さっきから黙って聞いていれば!人のか弱き乙女心を弄んでなーにが『尊き物』だクソッタレ―!!!わたしの鑑定局員という尊厳を返してー!うわーん!!」
なんと二人は取っ組み合いのケンカを始めてしまう。お互い色々と物を投げつけ、話の通らない主張を繰り返す。
勇者の軽はずみな発言のせいでまたしても犠牲者がひとり。タリエルは純潔を汚され(?)ハックはあらぬ方向へと開眼してしまった。もうどうにでもなーれ!
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