神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)と魔具化術式

 宿に戻った圭介達は宿の亭主の制止の声を耳にした。
「野村さん、お客さんが訪ねてきましたよ?それも二人」
「二人?えーっと、名前か何か聞いてませんか?」
 そういうと、亭主は一枚の紙を差しだした。
「ちっちゃな女の子がこの紙を野村さんに渡してくれって言付かってるよ」
 圭介はその紙にさっと目を通すとどうやらルゥさんからの呼び出しのようだった。
「もう一人のほうは?」
「もう一人はあの薬屋の女の子だよ。ほら、むこうのミクの祝福の店番してるあの子だよ」
「ああ、ジルか」
 治療の件もこの町にいる間に片づけないといけない。圭介がこの町でやりのこしていることは多い。それにしてもジルとルゥのどっちを先に訪れるか悩む圭介。どっちにしろ、ケアがいない以上はジルちゃんの治療はできないため、すぐにルゥさんの下へ向かうことにした。
 ニーナやカンナに先に部屋に戻るよう言い、圭介は一人でルゥの店にやってきた。
(あいも変わらずド派手な店だな・・・・・・)
 店の戸をくぐり、中に入る。いつも通りルゥ(小)がカウンターで俯せになっており、文字通り糸の切れたマリオネット状態だった。
「ルゥさん、来ましたよ」
 そういうと、ルゥ(大)が店の奥から歩いてくる。
「やっと来たか。あの青くて小さいやつが仕上がったから持っていっていいぞ」
 そういって圭介の携帯を気軽に放るルゥ。
「そこいらの魔具とは比べものにならん性能を持たせたから使って見ろ。連絡性能に長けた道具のようだから、それに沿った能力とエネルギーを蓄える力もあったようだからなそれを改造して魔素を蓄えれるようにした。これでお前の魔素を流すだけでその道具は動くようになったぞ」
 圭介は自らの携帯を扱う。重さも形も変わっておらず、変な機能が組み込まれたようには見えない。
「時間があったらお前に魔具の製作法を教えてもいいんだがな、魔具の調整ぐらいは自分でできたほうがいいだろう?」
「そうですね。時間があれば是非教えてもらいたいです」
 そう答える圭介を残してルゥは奥へと引っ込む。そして奥からルゥの声が聞こえてきた。
「なにしてんだ。さっさと入れ」
 どうやら今から教えるようだ。圭介はルゥの言葉に逆らうことなく店の奥へと入っていく。
 店の奥はかなり散らかっており、まるで人工物が溢れる獣道といった様子だ。なんとか歩けるスペースはあるが、かなり難しい。なんとかルゥの背中を追いかけて圭介はさらに奥にある一室へとたどり着いた。
「ここが私の工房だ。あいにく客人をもてなすような道具はココには置いてないからそこらに立ってろ」
 こんな調子である。椅子も一人分しかなく、その椅子にルゥは座っていた。圭介は仕方なく十夜を抜き魔素を流す。イメージは折りたたみ式のパイプ椅子。
「器用だな」
「まぁこれぐらいしか取り柄がないんで」
「ふん・・・・・・」
 圭介の作った椅子を一瞥するとルゥは机上に置いてあるいくつかの器具を紹介する。
「これが魔素の濃度を計るための石だ。周囲の魔素が濃ければ濃いほど石は強く明るく光る。そしてこっちが魔素の流量を計測する装置だ。この装置は急激な魔素の変化に敏感に反応するから結構便利なんだよな。変化の度合いが少なければ少ないほど精度が高いってことだからな」
 と、いつになく饒舌になるルゥ。そんな雰囲気に飲まれた圭介は相づちを打ちながら考える。
(それって俺の目を使えばこういうのっていらないんじゃ・・・・・・)
 ただし、圭介はそれを言わなかった。水を差すのは悪いと思っている。それにルゥも圭介にこういう道具があることを紹介しても圭介には不要ということを分かっているだろう。
「こういった器具を使って本来なら魔具を作るんだがな。お前には不要だろう。まずは、魔具を作るための座学から始めようか」
「はい、よろしくお願いします」
 圭介は一言一句逃さないように耳を傾ける。
「魔具が魔具たる所以は性向魔素と呼ばれる魔素を纏うことで現象を引き起こすんだ」
「性向魔素ですか?」
「簡単に色で例えると赤い性向魔素に魔素を流すとその魔素は赤くなる。赤に近づけば朱に染まるってことだよ」
「じゃあ、ルゥさんがくれたこのペンダントも?」
 そういって首から下げたペンダントを見せる。
「そうだ。そのペンダントに埋め込んだ石がお前の魔素を土に対して影響力を持つ色に染めるんだ」
「前にやったブレスレットも同じだ。ありとあらゆる魔具はこの性向というのが大事なんだ。どんな複雑な魔具もこの性向魔素の組み合わせで編まれている。一部の例外を除いてな」
「・・・・・・ちょっと、質問良いですか?」
「なんだ?」
「・・・・・・人間は魔具にできるんですか?」
 緊迫した空気が一瞬だけ流れた。
「無理だな」
 そう切り捨てるように言った。
「まず、人間の魔具化は禁忌だ。この禁忌に触れることがあれば間違いなくお尋ねものになるだろう。そして、二つ目は人間は脆い。その人間に沿った性質を理解して性向魔素を纏わせなければいけない。魔素というのは個人個人で異なるものなんだ。医術を使う人間も一度は自らの魔素を万人が受け入れられるように精製し直さなければならない。性向魔素は間違いなく拒絶反応を示すだろう。魔素ってのは相手に直接働きかけるってことが一番難しいんだ。人間ほど多種多様な魔素を持つ存在を私は知らない」
 そういってルゥは机の上にあったらキャンドルに火を灯す。爽やかな薫りが漂う。
「すまんな。熱くなりすぎた」
 おそらく気分を落ち着けるアロマ的な何かなのだろう。
「あの、もう一つ聞きたいんですが・・・・・・」
 圭介はルゥにテイラーという賞金首を追っていること。そのテイラーのレポートから人間の魔具化の糸口を思いついてしまったこと。そして、その中身を伝えた。


「・・・・・・そうか、いや、でもそれは・・・・・・でも、それが現実的か?」
 ルゥは自問自答を繰り返す。そんなルゥをじっつ見つめる圭介。
「ああ、すまんな。お前が言っていることなんだが、まだ不確実だがその魔具化は有力な話だ」
 そうルゥさんに言われた。魔具化のプロが『有力』といったこの内容。
「しかしだ。もし仮にそれが成功するとしても被術者は選ばれるだろう。適合者がいることが前提だからな」
 そうなのだ。この推測が正しいとすれば適合者を探す必要がある。圭介は色々な思考を巡らせながらもルゥから魔具の術式を学ぶのだった。

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