神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)は久々の再開ができるのか?3

  午前中は三人に付き合ってもらったため、午後は全部三人のために費やした。カンナのための服やカンナのための靴やカンナのための帽子。買い物してる姿は各々が想像してくれ。
「だいぶ買っちまったなぁ」
  最寒時期も通りすぎ、段々暖かくなることを見越して今まで着ていたものよりちょっぴり薄手のものを選んだ。カンナにスカートを着させたいという要望はニーナ嬢に却下されたのは秘密だ。
「私が馬車まで運びましょう」
  そう言う凛ちゃん。今の彼女はそこいらに在りそうな服装をしたそこいらにいない美人だ。
「じゃあ、よろしく頼むよ」
  俺は持っている二つの内の一つの袋を手渡す。
「そちらは?」
  俺が左手で持っている荷物。中身は"三人が脱いだ衣類"に視線を向ける。
「いや、洗濯しておこうかと」
「せ、洗濯!?貴方がですか!」 
  いつになく驚く。
「違うよ。宿のおばちゃんに頼もうかと思ってね」
  俺の言葉を一字一句を吟味して胸を撫で下ろす。
「それでしたら、私がしておきますよ」
「いや、宿にいるときぐらいはくつろぎなよ」
  夜営で造れるのは家や風呂、簡易ベッドであるが現代洗濯機といった家電は作れないし稼働できない。そういった便利な生活を送ってきた俺には生活スキルなんてものはなく結果的に凛ちゃんやニーナ嬢、屈辱的だがケアに頼らねばならない。
  結果として俺は水を生成して寒い時期に皹を起こさないように暖かい水を用意したり、手動回転式洗濯機を作るしかないのだ。
  余談だが洗濯されたものは俺が魔術で瞬間脱水する。これで翌日の朝でも生乾きなんてありえない
(おっと、無駄な回想してる場合じゃなかった)
  ひとしきり凛ちゃんを言いくるめて休ませることに成功した。


  宿に帰ってからは適当に時間を潰して夕食を摂ったあとは凛ちゃんと軽く体を動かして風呂に浸かり就寝した。






「すーっ、朝だぞー!早く起きんか!このバカたれがー!」
  ドキッとして眼が覚めた。携帯のアラーム音声によって起こされたらしい。携帯を開いてみると久しぶりのメール。何かの記念らしいが無視して添付ファイルを開く。中身は何故かグローブ。グローブといっても野球で捕球するためのグローブじゃなく殴るためのグローブだ。色は黒で指が露出するタイプ。
(そういや、サンドバックを買ったときに付いてきたんだっけ)
  久しぶりにそれを手に装着してみる。
<シュッ!シュッ!>
  軽くシャドウボクシング風に拳で空を切ってみる。「これはこれでいいな」
  しばらくグローブを見て思案する。このグローブも魔具にしたいからだ。
(魔具、魔具…、魔具に詳しいのは魔具師…。魔具…師?)
「そうだよ!あの人がいんじゃん!」






  再び訪れてみても異様な光景が広がっていた。吐き気がするほど甘い匂いと視覚障害を起こしそうなほどの色彩。ルゥさんのお店だ。
「お邪魔します」
  何故か客であるはずの俺が気を遣っている気がする。
  カウンターに伏せている少女がいた。ルゥさんの傀儡魔具だ。ゆっくりと近づきルゥさんの分身の頭をコンコンと叩くとムズムズと動き出す。
「誰ですかぁ~。私の頭を叩くのは~」
  間延びした幼い声を上げながら顔をあげる。
「あー、圭介お兄ちゃんいらっしゃーい」
  トロンとした眼をキラキラとさせる。この子が魔具で操り人形と分かっていても不思議と崩顔する。
「ルゥさんは今どこにいるのかな?」
「ルゥは私だよ?」
  ふむ。困った。
「これを見てほしいんだけど」
  鞄の中に入れてあったグローブを取り出しカウンターに乗せる。
「これは何かな?手袋?」
「んー、簡単に言うと何かを殴っても自分の腕を痛めないようにするものかな」
「私はこれをどうすればいいのかな?」
「端的に言うとコレを魔具にしてほしい」
「…ちょっと待ってね」
  そう言ったルゥちゃんは糸が途切れた人形のように再びカウンターに俯せになった。しばらくしてから店の奥から髪を乱したまま眼を擦りながらやってきた。
「…こんな朝早くからきてんじゃないよ小僧…」
  ダルいという言葉の権化がここにいた。
「私に何を魔具にしてほしいって?」
  椅子に腰かけて太股まで露出した長い足を伸ばす。「このグローブを魔具にすることはできませんか?」
  俺の言葉を聞くとルゥさんはおもむろにグローブを手に取る。
「あのなぁ、私だって暇じゃないんだ。私を動かしたかったら金貨の一枚でも持ってきな。そうしたら、このグローブだけしゃなく他の道具も魔具にしてやるよ」
<ピクッ!>
  金貨という単語に反応する。
「ホントに俺が金貨を用意したら魔具にしていただけるんですね?」
 そういう俺に対して鼻で笑いながら
「ああそうさ、坊やが金貨を提示してくれるなら魔具を作ってやろうじゃないか」
 おっしゃ!
 そっと一枚の金貨をカウンターの上を滑らせる。
「ん?なんだいそりゃ?」
「どうぞ、手にとって確かめてください」
 ルゥさんはその金貨を実際に手に取りじっと見つめる。
「確かに本物だな。約束は約束だ。まさか坊やが本当に金貨を持ってるとは思わなかったよ」
「それは良かった。魔具にしてほしいのはそのグローブと鞄の中身なんですが」
 俺が取り出したのは携帯、ノートPC、iPod、ライト付きソーラーパネル充電器。
「おいおい、こりゃ多すぎやしないか?」
「でも、いくらでも魔具にしてやるって言ったのはルゥさんですよ?」
「そりゃそうだが」
 そう言いながら、ノートPCを手に取る。
「…これは何かしら、みたことない素材が使われているみたいだけど」
「それはノートパソコンっていって、高性能な精密機械なんですよ」
「…ノートパソコンねぇ…機械ってのはもっとデカイんじゃないかしら」
 そう言いながら入念にノートパソコンを観察する。その後に携帯、iPod、充電器の順番に見る。
「そうね、一ヶ月もあれば全部魔具にできるわ」
「マジっすか!?」
「マジよ」
 本当は魔具にできるとは思ってなかったから思わず驚く。ノートパソコンの魔具ってなんだよ?携帯の魔具ってなんだよ?
「とにかく魔具が完成したら、連絡を入れるわ。坊やが今滞在してる場所を教えてくれるかしら?」
 その後、ルゥさんに今滞在してる宿を教えることとなった。


―――NPCの魔具ってなんぞや?

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