神が遊んだ不完全な世界
主人公(仮)と朝練
  畑に到着した俺は二人から山田さんを紹介してもらった。
「この方が山田さんだ。この土地の管理と耕作を担ってもらっている」
  紹介された山田さんは背丈の低い小太りの男だった。西洋の言い方だとブラウニーというのが似合いそうな小柄で筋肉質な人物だった。
「初めまして、昨日から若草道場にお世話になっている野村です」
「おう」
  軽い返しだった。山田さんはこういう人物だと思うことにしよう。
「今日の分はあれでいいな」
  山田さんは遠くに積まれた俵を指差す。
「はい、今日もありがとうございます」
  雪村君が礼を述べる。
  そのとき浄花さんは俺に耳打ちをした。
「ここの米や野菜は魔素を多く含んでいるから栄養満点だぜ」
  なるほどと思った。
  師範曰く、魔素の取り入れ方は呼吸、食事、瞑想などだ。つまり、よい食事はよい鍛練に繋がるわけか。
「野村さん、これらを道場まで運んでください」
  まぁ、そうだよな。そのためにここにいるわけだから…。でもさ、一俵がまるでデカイ干し草ロールのようあるんだぜ?直径が俺の足先から肩ほど。奥行きは2メートル。
  大まかにいって、3立方メートル。
  持てるはずねぇよ!
  そして、俵にはご丁寧にも背負うための肩掛けがあった。
「あの…これ…」
「ああ、野村さんはこっちですよ」
  雪村君はデカイ俵と比べると子供みたいなサイズの俵を指差した。
「初日から僕らと同じのは無理だろうという師匠の判断で、このサイズになりました」
「そ、そうなんだ」
  それでも、これを持って走るのは無理がある気もするが…。
  二人は既に俵を担ぎ上げ、俺を待ってくれている。
(…っおっしゃ!気合入れるか!)
  腰を据え、一息に俵の重心と自分自身の重心を地面に対して一直線上に載せるように担ぎ上げる。
  俵は思った以上に軽かった。
  持ち上げることには対して苦労しなかった。
  俺はいまだに勘違いしていたらしい。
  ここは俺の常識を覆すことに溢れている。
  故に、自身の常識とこちらの常識との認識摩擦で力をセーブしていたらしい
  先程のランニングもそうだ。
  掴みかけた解答を手放すところだった。
  俺は強くなれる!
  今の俺とあの二人の差はきっとこの俵の差だろう。もしかしたら、それ以上かもしれない。
  それでも、無理じゃない。
「野村、大丈夫か?」
  浄花さんが心配そうに声をかけてくれる。
「あ、はい。大丈夫です」
  なぜか答えたときには口角が上がっていた。
「じゃあ、帰るか」
「帰りましょうか」
「はい」
  三者三様で山田さんに別れを告げ、帰りは行きの半分ほどの速さで走り抜ける。
「野村、山田さんを見てどう思った?」
「んー…、ちっさいおっさんかな?」
  それを聞いた二人は急に笑い出した。
「そうかそうか、お前にはそう見えたか。いや、確かに小さいおっさんだな」
  笑いながら、言う浄花さん。雪村君も忍び笑いをしているが、だだ漏れしている。
  ひとしきり笑うと
「心の中でそう思っても絶対に本人に聞かれたら駄目だからな」
  そう忠告された。もちろん言うはずかない。失礼に当たるからな。
  到着。
  行きに比べて、荷物を背負っているため時間はかかったが、力の使い方が分かった。
  いや、使っているのが分かった、かな?
  普通に体を動かす延長上に体術はあった。
「俺らは道場の裏手にコレを置いてくるから。野村はそれを屋敷の裏手に回って倉に入れて置いてくれ、鍵は開けてあるはずたから」
「わかりました」
  俺は俵を置くため、二人と別れ、倉に向かった。
  倉の前には皐月ちゃんと凛ちゃんがいた。
  二人とも顔が真っ青だ。
「あ、野村さん!ちょっとこっちに来てください!」
  皐月ちゃんから呼ばれたからには行くしかない。
「どうかしたんですか?」
「あの、野村さんは虫は平気ですか?」
  嫌な予感。
「少なくとも、顔を真っ青にするほど苦手ではないよ」
「なら倉に入って退治してください!」
「なにを?」
「コロチです!」
  コロチ?聞いたことのない名前だ?
「どんな虫なんだい?」
「言いたくもありません!思い出させないでください!」
  軽くパニックになっている。皐月ちゃんはもっとおっとりしていると思ったんだけどな。
  その隣ではいまだに顔を青ざめさせたまま、腰が抜けたように動かない凛ちゃんがいた。
「よくわからないけど、待ってて。今片付けるから」
  俺は倉庫の中に入る。中はひんやりとした空気が漂い、中は薄暗かった。
  カサカサ…。
(!?)
  カサカサカサ…。
(!!?)
  カサカサカサカサ…。
  嫌な予感は的中した。
  茶色くテカるそれは倉の中を這い回っていた。
  さすがにないわー、まじないわー、ありえねー、むりやわー、あれはないわー。
  スリッパ大のゴキブリだった。
  とにかく二人の手前、倒すしかない。
  さすがに素手はない。そして、触れずに倒す手段を俺は持っていた。
「覆え!」
  首元に魔素を流す。倉の外には十分な土がある。そして、間髪入れずに唱える。
「来い!」
  少し離れた井戸から水を呼び出す。その水を土に掛ける。
  そして、一度だけ足をならす。
  その瞬間、水は一瞬のうちに蒸発した。
  あとはコロチを覆ったカピカピの土があるだけだった。
  殺さなかったのは仲間を呼ぶフェロモンを出されたら阿鼻叫喚の地獄絵図になりそうだと思ったからだ。
  瞬間乾燥はよく使うため、シングルアクションで行使できるようにしていた。
  あとはカピカピの土をコロチごと遠くに持っていくだけだ。
「箒と塵取りあるかな?」
  まるで、同級生の女の子に尋ねるように言った。
「あ、はい。今持ってきます」
  皐月ちゃんは屋敷に向かって走り出した。
  俺は未だに腰を抜かした凛ちゃんに手を差し伸ばした。
「あ、ありがとう…」
  手を掴み立とうとするが上手くいかないみたいみたいだ。
  こんなときに男だったらどうするよ?
  目の前には年下の金髪美少女が腰を抜かして立てないでいる。
  だったらこうするしかない。
「あ、えっ…、なっ!ええっ!?」
  お姫様だっこしかないだろ!!
「このままだと、朝の鍛練に差し支えますよ」
  そのまま俺は木陰に彼女を連れ、懐から『森の雫』の薄液を取り出し、木にかける。
  イメージは祖母の家にあったウッドチェア。
  幹はうねり徐々に形を整える。
  少しだけイメージとは齟齬があるが概ね想像したものを創造できた。ついでに木櫛を作り手渡す。
「魔術が使えるのは便利ですね」
  椅子に座らせた凛ちゃんはそう呟く。
「凛ちゃんは魔術使わないの?」
「日常生活における魔術なら私にも使えますが、木をこのような形に変えることはできません」
「そうなの?」
「ええ、そこまで器用に魔術を扱えるのは、ある程度の努力か才覚、あるいは両方を必要とします」
「じゃあ、氷川さんも魔術を練習すれば、」
「そのような時間があるならば私は剣術を鍛えます」
  ご立派だこと。
「器用貧乏よりはいいよね」
  俺には無難に答えるしかなかった。
「野村さん!持ってきました!」
  箒と塵取りを持った皐月ちゃんが走ってやってきた。
「ありがとう、柑納さん」
  それらを受けとり、倉の中でカピカピの土を回収する。
  あとは地中奥深くに封印するだけだ。
「おっしゃ、終わったー!」
「ありがとうございました」
  頭を下げて、礼をしてくれる皐月ちゃん。
「いえいえ、どういたしまして。そういえば、これはどこに置けばいいかな?」
  未だに背負ったままの俵を指差す。
「あっ、はい。貸してください」
  背負った俵を皐月ちゃんに手渡す。それを平然と受けとる。
「…」
「どうかしましたか?」
「世の中おかしい」
  と俺は言わなかった。
「いや、なんでもないよ」
  言葉を濁して誤魔化す。単に自分と彼女の差を悔しく思ったが故だろう。
  俺たち二人は倉の中に入り米を蓄えるための瓶を教えてもらい、他にも様々な種類の瓶を教えて貰った。
「だいたいはこんなところです」
  丁寧に教えてくれる皐月ちゃん。先程のバタバタした姿とはかけ離れている。まぁいいけど。
  そのあとは回復した凛ちゃんと一緒に屋敷に戻り、浄花さんと雪村君な合流して食卓につきましたとさ。
  余談たが、以前にも現れたコロチを浄花さんが叩き潰したことが事の発端だと考えられる。
「この方が山田さんだ。この土地の管理と耕作を担ってもらっている」
  紹介された山田さんは背丈の低い小太りの男だった。西洋の言い方だとブラウニーというのが似合いそうな小柄で筋肉質な人物だった。
「初めまして、昨日から若草道場にお世話になっている野村です」
「おう」
  軽い返しだった。山田さんはこういう人物だと思うことにしよう。
「今日の分はあれでいいな」
  山田さんは遠くに積まれた俵を指差す。
「はい、今日もありがとうございます」
  雪村君が礼を述べる。
  そのとき浄花さんは俺に耳打ちをした。
「ここの米や野菜は魔素を多く含んでいるから栄養満点だぜ」
  なるほどと思った。
  師範曰く、魔素の取り入れ方は呼吸、食事、瞑想などだ。つまり、よい食事はよい鍛練に繋がるわけか。
「野村さん、これらを道場まで運んでください」
  まぁ、そうだよな。そのためにここにいるわけだから…。でもさ、一俵がまるでデカイ干し草ロールのようあるんだぜ?直径が俺の足先から肩ほど。奥行きは2メートル。
  大まかにいって、3立方メートル。
  持てるはずねぇよ!
  そして、俵にはご丁寧にも背負うための肩掛けがあった。
「あの…これ…」
「ああ、野村さんはこっちですよ」
  雪村君はデカイ俵と比べると子供みたいなサイズの俵を指差した。
「初日から僕らと同じのは無理だろうという師匠の判断で、このサイズになりました」
「そ、そうなんだ」
  それでも、これを持って走るのは無理がある気もするが…。
  二人は既に俵を担ぎ上げ、俺を待ってくれている。
(…っおっしゃ!気合入れるか!)
  腰を据え、一息に俵の重心と自分自身の重心を地面に対して一直線上に載せるように担ぎ上げる。
  俵は思った以上に軽かった。
  持ち上げることには対して苦労しなかった。
  俺はいまだに勘違いしていたらしい。
  ここは俺の常識を覆すことに溢れている。
  故に、自身の常識とこちらの常識との認識摩擦で力をセーブしていたらしい
  先程のランニングもそうだ。
  掴みかけた解答を手放すところだった。
  俺は強くなれる!
  今の俺とあの二人の差はきっとこの俵の差だろう。もしかしたら、それ以上かもしれない。
  それでも、無理じゃない。
「野村、大丈夫か?」
  浄花さんが心配そうに声をかけてくれる。
「あ、はい。大丈夫です」
  なぜか答えたときには口角が上がっていた。
「じゃあ、帰るか」
「帰りましょうか」
「はい」
  三者三様で山田さんに別れを告げ、帰りは行きの半分ほどの速さで走り抜ける。
「野村、山田さんを見てどう思った?」
「んー…、ちっさいおっさんかな?」
  それを聞いた二人は急に笑い出した。
「そうかそうか、お前にはそう見えたか。いや、確かに小さいおっさんだな」
  笑いながら、言う浄花さん。雪村君も忍び笑いをしているが、だだ漏れしている。
  ひとしきり笑うと
「心の中でそう思っても絶対に本人に聞かれたら駄目だからな」
  そう忠告された。もちろん言うはずかない。失礼に当たるからな。
  到着。
  行きに比べて、荷物を背負っているため時間はかかったが、力の使い方が分かった。
  いや、使っているのが分かった、かな?
  普通に体を動かす延長上に体術はあった。
「俺らは道場の裏手にコレを置いてくるから。野村はそれを屋敷の裏手に回って倉に入れて置いてくれ、鍵は開けてあるはずたから」
「わかりました」
  俺は俵を置くため、二人と別れ、倉に向かった。
  倉の前には皐月ちゃんと凛ちゃんがいた。
  二人とも顔が真っ青だ。
「あ、野村さん!ちょっとこっちに来てください!」
  皐月ちゃんから呼ばれたからには行くしかない。
「どうかしたんですか?」
「あの、野村さんは虫は平気ですか?」
  嫌な予感。
「少なくとも、顔を真っ青にするほど苦手ではないよ」
「なら倉に入って退治してください!」
「なにを?」
「コロチです!」
  コロチ?聞いたことのない名前だ?
「どんな虫なんだい?」
「言いたくもありません!思い出させないでください!」
  軽くパニックになっている。皐月ちゃんはもっとおっとりしていると思ったんだけどな。
  その隣ではいまだに顔を青ざめさせたまま、腰が抜けたように動かない凛ちゃんがいた。
「よくわからないけど、待ってて。今片付けるから」
  俺は倉庫の中に入る。中はひんやりとした空気が漂い、中は薄暗かった。
  カサカサ…。
(!?)
  カサカサカサ…。
(!!?)
  カサカサカサカサ…。
  嫌な予感は的中した。
  茶色くテカるそれは倉の中を這い回っていた。
  さすがにないわー、まじないわー、ありえねー、むりやわー、あれはないわー。
  スリッパ大のゴキブリだった。
  とにかく二人の手前、倒すしかない。
  さすがに素手はない。そして、触れずに倒す手段を俺は持っていた。
「覆え!」
  首元に魔素を流す。倉の外には十分な土がある。そして、間髪入れずに唱える。
「来い!」
  少し離れた井戸から水を呼び出す。その水を土に掛ける。
  そして、一度だけ足をならす。
  その瞬間、水は一瞬のうちに蒸発した。
  あとはコロチを覆ったカピカピの土があるだけだった。
  殺さなかったのは仲間を呼ぶフェロモンを出されたら阿鼻叫喚の地獄絵図になりそうだと思ったからだ。
  瞬間乾燥はよく使うため、シングルアクションで行使できるようにしていた。
  あとはカピカピの土をコロチごと遠くに持っていくだけだ。
「箒と塵取りあるかな?」
  まるで、同級生の女の子に尋ねるように言った。
「あ、はい。今持ってきます」
  皐月ちゃんは屋敷に向かって走り出した。
  俺は未だに腰を抜かした凛ちゃんに手を差し伸ばした。
「あ、ありがとう…」
  手を掴み立とうとするが上手くいかないみたいみたいだ。
  こんなときに男だったらどうするよ?
  目の前には年下の金髪美少女が腰を抜かして立てないでいる。
  だったらこうするしかない。
「あ、えっ…、なっ!ええっ!?」
  お姫様だっこしかないだろ!!
「このままだと、朝の鍛練に差し支えますよ」
  そのまま俺は木陰に彼女を連れ、懐から『森の雫』の薄液を取り出し、木にかける。
  イメージは祖母の家にあったウッドチェア。
  幹はうねり徐々に形を整える。
  少しだけイメージとは齟齬があるが概ね想像したものを創造できた。ついでに木櫛を作り手渡す。
「魔術が使えるのは便利ですね」
  椅子に座らせた凛ちゃんはそう呟く。
「凛ちゃんは魔術使わないの?」
「日常生活における魔術なら私にも使えますが、木をこのような形に変えることはできません」
「そうなの?」
「ええ、そこまで器用に魔術を扱えるのは、ある程度の努力か才覚、あるいは両方を必要とします」
「じゃあ、氷川さんも魔術を練習すれば、」
「そのような時間があるならば私は剣術を鍛えます」
  ご立派だこと。
「器用貧乏よりはいいよね」
  俺には無難に答えるしかなかった。
「野村さん!持ってきました!」
  箒と塵取りを持った皐月ちゃんが走ってやってきた。
「ありがとう、柑納さん」
  それらを受けとり、倉の中でカピカピの土を回収する。
  あとは地中奥深くに封印するだけだ。
「おっしゃ、終わったー!」
「ありがとうございました」
  頭を下げて、礼をしてくれる皐月ちゃん。
「いえいえ、どういたしまして。そういえば、これはどこに置けばいいかな?」
  未だに背負ったままの俵を指差す。
「あっ、はい。貸してください」
  背負った俵を皐月ちゃんに手渡す。それを平然と受けとる。
「…」
「どうかしましたか?」
「世の中おかしい」
  と俺は言わなかった。
「いや、なんでもないよ」
  言葉を濁して誤魔化す。単に自分と彼女の差を悔しく思ったが故だろう。
  俺たち二人は倉の中に入り米を蓄えるための瓶を教えてもらい、他にも様々な種類の瓶を教えて貰った。
「だいたいはこんなところです」
  丁寧に教えてくれる皐月ちゃん。先程のバタバタした姿とはかけ離れている。まぁいいけど。
  そのあとは回復した凛ちゃんと一緒に屋敷に戻り、浄花さんと雪村君な合流して食卓につきましたとさ。
  余談たが、以前にも現れたコロチを浄花さんが叩き潰したことが事の発端だと考えられる。
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