神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)の混乱

奇妙な胸騒ぎと奇妙な悲鳴、そして奇妙な熱気に俺は起こされた。




  外は夜になったのか、空は暗い。それに反して、村は異様に明るい。




(…!?)




  あ、なんとなく分かったぞ。盗賊が村を襲うイベントか。




  でも、なんで急にこんなイベントが…




  窓を開けて広場を見渡す。広場には盗賊から逃げる村人達の姿。俺は広場の一角に目を奪われる。




  そこで俺が目にしたのは…












  子供を庇う母親の姿だった。




(ダメだよ…。俺にそれを見せちゃダメだよ…。)




  一瞬にして動機は激しくなり、呼吸は荒く、頭の中は白くなった。




  それは単に俺に母親がいないことと関係があるのか…。




  気付けば俺は二階の窓から身を踊らせていた。




  剣も持たず、魔具も持たず。




  ただ、一刻、一瞬でも早くあの親子を救う。救いたい。 




  なんだろう、普通なら臆するか、逃げるかするのだろう。




  それでも…それでもさ…助けたいと思ってしまったんだ。




  シュッ!




  その時、盗賊の放った矢が母親の背中に刺さる。




「…ッ!」




  母親性は少女に覆い被さるように倒れた。








































































  気付けば、豪雨が降っていた。




  村は半壊しており、明らかに焼け落ちた風ではなく、圧倒的な暴力によって壊されたようだ。




(…えーっと、どうなってるんだ?)




  豪雨はしばらくすると止んだ。




  なんとなく気付いた。




  魔人化。




  忘れていた。




  この力に慣れたつもりだった。




  なのに、自我を失った。




  俺は一体、何をしたんだ?




  周りに人がいない…。




  ………イナイ?




  そうだ、いないんだ。




  生きた人間も死んだ人間も…。




  周りを見渡す。




  村の広場にデカイクレーターができていた。




  それは丁度、俺が最後に意識を保っていられた場所だ。




(ッ…、そうだ!あの二人!)




  最後の情景。少女と母親ががいた場所に向かう。




  母親が流した筈の血は先程の雨で流れていた。




  少女と母親の姿もない。












  ………?




  近くから息遣いが聞こえる。






手元には魔具がないため感知術式「水面」は使えない。
  俺は仕方なく、ずぶ濡れのまま手探りで探す。




  すぐ側の家に勝手に上がり込む。




  そこには…




(………ッ!良かった…。生きてる!)




  荒くもキチンと息をしている女性がいた。ベッドは血で汚れてはいたが出血は止まっているようだ。


  正直ホッとした。




 ベッドの向こう側には女の子が震えて縮こまっている。


「えーっと、ケガとかしてないかな?」


 声をかけられた少女はコチラを見ると息を止めて、


 ・・・いや、息ができないのか?


 コチラをじっとみつめて、血の気が失せたようにして、今にも死にそうな。死の恐怖にさらされているような?




 思わず俺は少女に駆け寄った。




 その瞬間、彼女は倒れ俺は少女を抱きとめる形になった。




 脂汗をかいており、息も荒く。よほど、盗賊達に恐れているのだろう。




 俺は彼女をその場で横にして、とりあえず宿に戻った。












 店は荒らされていて、気のよさそうな店主の姿はなかった。




 俺は階上に向かい部屋に入る。




 中は荒らされていない様子。




 窓辺が少し濡れており、店主には申し訳ないと思った。




 魔具と剣、そして鍋付きの鞄を肩から下げ外に出た。


 結果から言うと屋内までは分からないが、倒壊した家屋に生き物がいることは分かった。


 その倒壊した建物はついさっき訪れた村長さんの家だった。




 村長さんは瓦礫の下敷きになっており、意識があるのかないのかよく分からない状態だった。声をかけるが、返事かうめき声か判断のつかない声を上げる。




 力づくで瓦礫をどかせるか、どかせた表紙にもっと悲惨になる可能性もある…。




 その時、ひとつの案が浮かんだ。




 土の魔術でどうにかならないか?




 土を使いご老体を包むように守り、その間に瓦礫を撤去する。




(ん?俺、こんなに力あったっけ・・・?)




 普段なら無理そうな瓦礫の撤去も力ずくで撤去可能だ。




 ご老体を引きずり出せるだけの隙間を造り、なんとか救出する。


「ふぅ…」


  ご老体は擦り傷や痣は見受けられるが一応は命に別状はなさそうだ。息はあるが意識がなく気絶しており、それが頭部による外傷ならば危険ではるが…。とりあえず、倒壊の恐れのない場所で横にさせる。


(さてと、どうしたもんか…)


時刻は午後7時45分夕飯の時間は過ぎ、空腹を感じ…。


  不思議とお腹は空いてなかった。


(…どうなってんだ?俺の体は?)


  欠けた記憶に一体何があるのか?


  まずは現状の把握が大事だ。


  今確認できる人間は少女と母親、それと村長。


  まだどこかに村人がいるかもしれない。


  倒壊した家屋を抜け出ると、早速村人発見。


「こ、こんにちわ~」


  俺は恐る恐る声をかける。


  ダッ!


  村人は肩をビクンッ!と跳ねさせてこちらを一瞬視界に入れると逃げ出した。


  もしかすると俺が盗賊の仲間かと思われてるのか?


(あー、これか…)


  腰から下げた一振りの剣。


(普通の人は武器なんて持たないし、今は神経過敏なんだ。仕方ないか)


  俺はショートソードを外す。


  次は失敗しないぞ


  『水面』を発動する。


  屋外にちらほら気配を感じる。中でも一つ、かなりの早さで動く点がある。先程の村人かな?


  追いかけるか。


  錯乱しているかもしれないが、紳士に対応すればなんとかなるだろう。


  と決まれば、『蓮』発動。


(お?おー、オー!!)


  いつもと同じ手順で魔術行使をしてみるが、いつもとキレが違う。


雨上がりのため、操作が楽なのもあるが、それ以上に歴然とした違いがある。


  先程の村人はすぐに見つかった。


  村人さんと並走するように声をかける。


「あのー!すみません!」


  こちらに気付いたよ様子。


  逃げる。


(えー…)


  こっちは武器も持たずに話しかけたのに…。


  もう一度!!


再び追跡。追われていると気付いたのか、コチラを振り向き


「来るな!人殺し!!」


  へ?

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