神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)と報酬



  ノギス郊外東側丘。『蓮』の長時間使用と土壁の魔術により、かなりの魔素を使用したようだ。丘の一部が禿げており、そこが肌色に光っている。触れると手から光は吸い込まれるように消えた。


  あとは徒歩で街に戻るだけだ。






  ギルド到着!相変わらず賑やかな様子だ。


  戸をくぐるとルルさんが受け付けにいた。


「ルルさん、クエスト完了しました」


  ピリスの角をカウンターに置く。


「あら、圭介さん。早かったですね。もう少しかかるものかと思いましたよ」


  ルルさんはピリスの角を手にとる。


「はい、確かに受けとりました」






それをカウンターに仕舞い、一つの箱を取り出す。


「それはなんすか?」


「圭介さんもこれからソルバーとして活躍するための儀式みたいなものですよ。少し利き腕を出していただけますか?」


  俺は腕を捲り右腕を差し出す。


  ルルさんは俺の右腕に小箱から取り出したハンコみたいなものを押し付ける。


  腕を見ると見たことのない紋様が桃色に光っている。


「何か見えるんですか?」


「…ええ、見たことない紋様が」


  俺の言動にハッとするルルさん。その仕草も可愛い。


「実は、それ私には見えないんです」


「え?」


  ルルさんに見えなくて、俺には見える?


  つまり、還元能力を持つ俺だから見えるのか?


「右腕をこの中に入れてください」


  次に取り出したのは腕がすっぽり入りそうな木箱。言われるがまま俺は腕を入れる。


  箱の中が何度か瞬くと、腕を出すようルルさんに言われる。


  箱と底は分離できるようで、上部を取り外す。


  そこにあったのは、一枚の紙だ。少し焦げたような臭いがする。紙には


『ノムラ ケイスケ
ノギス
ソルバーE』


そう書かれていた。


「これは?」


「先程押した印を読み取る魔具です。印には簡単に名前、所属、職業が記載されます」


「ソルバーの隣のEというのは?」


  指差し尋ねる。


「これはその人物の信用度です。ギルドに加入して間もない圭介さんは最下位のEランクです。ランクを上げるためにはクエストやワークをこなす必要があります。ただし、あくまで信用が第一です。いくらたくさんのクエストを達成しても、同じくらい失敗するとランクは上がりませんのでご注意ください」


  ふむ。信用が第一か。


「今は父がいないので仕方がありませんが、父にはこのことを話させていただきますね。その印を見れる人は数少ないです。もしかしたら、圭介さんは魔眼持ちなのかもしれませんね」


(―――魔眼…ね…)


  いよいよファンタジーだ。


「これは成功報酬です」


  手渡されたのは銀貨3枚。


「あれ?ピリス退治は試験なんじゃ…」


「試験を兼ねたクエストですよ」


  その一言で諭される俺。


「では、ありがたく」


  コートに仕舞う。そのとき、指先に何かが触れる。取り出すと木片だった。


(ああ、香水の…、…?)


  今、報酬を受け取った俺。予約の割符を持つ俺。これは簡単な因果線で結べそうだ。


「すみません。香水っていくらぐらいするもんなんですかね?」


「なになに?もしかして、私にプレゼントしてくれるのかな?」


  身を乗り出すルルさん。先程までとはうって代わって、事務的な対応ではなく好奇心を全面に出した表情をするルルさん


(おいおい!可愛いじゃねぇか!)


  しかし、平静を保とうと努める。耳が熱いのはこの際無視だ!


「そういうわけじゃないですよ。今お世話になってる人にお礼として送るんですよ」


なーんだと呟いて、身を引く。


「相場だと銀貨8枚かな」


  ふむ。足りないな。


「明日またおいで、なにかいい依頼がないか見繕ってあげるから」


「お願いします」


  頭を下げ、きっちりと礼を述べる。






  今日はこんなところか、家に帰ってウリクさんに色々と報告しないとなー

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