繋がりのその先で
1-14普通じゃない僕ら
「…なるほど。つまり相手の潜伏先は、この公園の地下に作られた秘密基地の様なところだと?」
昴の話を聞き、僕は驚いていた。何回もマフィーさんに視線を向けた。昴の口から出たそれは、到底信じがたい物だったからだ。公園は僕らがいたあの海からそう遠くない場所にあった。一見何の変哲もない、名も知れない公園だが、時雨を襲った犯人達は、その公園へと向かい、何らかの仕掛けを使い、その公園の地下へと続く道を開いた。 犯人達が地下へと降りて行ったあと、入口がまだ開いていたため、昴は単身でそこに乗り込もうとしたらしい。が、昴が入る寸前、扉が閉まり始め、危うく昴がその扉に押しつぶされそうになった所をマフィーさんが助けてくれたらしい。
「公園の地下に基地を作ってるってのが、もう相手の規模の大きさを物語ってるよね。そもそも、あんな所の公園に、地下へと続く道を作れるとか、どんだけ大きな組織なんだよ。」
昴は自分の見た信じられない光景に、ひたすら驚いている。俺は昴から聞いた情報を、頭の中で整理しようとする。が、情報自体のインパクトが強すぎるため、上手く細部まで気を配ることが出来ない。公園の地下に基地?いくら名の知られていない公園とはいえ、そんなところに基地なんか作ったらニュースになるはずだ。だが、俺が生きている間にそんなニュースはなかった。ということは生前か?いやそもそも、国がそんな事を許可するか?今の国家でさえ、地下に基地を作ったという事例は1度もない。なのに、それを誰だかわからないやつが基地を作ることを了承するだろうか?ということは、この件について国が関与していて、これが地下に基地を作る最初の事例だってことか?だが、俺の頭はすぐにNoという答えを返す。そもそも、地下に巨大な基地を作れるだけの技術や、強度のある物質がまだ発明されていない。家に地下室がある家はあるにはあるとは思うが、それらを作るのとは訳が違う。今の技術力では到底不可能だろう。
色々とわからないことが多い。ごちゃごちゃしているものを、一つ一つ取っては潰し取っては潰しを繰り返す。 このような単純作業は、俺の頭の中をよりシンプルにしようと働きかけてくれる。
そして、俺はやっと原点に帰ることが出来た。
「…なぁ、昴。どうして時雨が狙われたんだと思う?」
犯人らはスタンガンを所持していた。ということはやはり「計画的」な犯行であったことがわかる。スタンガンはロボットを無力化する方法として、様々な物がある中、1番安全かつ、外面に傷を残さない無力化方法だ。だがその分、至近距離からしか使えないので大抵のロボットは危険物を感知し、避けることが出来る。今回、時雨はたまたま首、手首、足首などに黒い線が浮き出るほど疲労が溜まっていて、破損も激しかったから、危険物を感知するセンサーが反応しなかったので「不意をつかれる形」になったんだろう。
「…僕にもわからない。ただ今は、僕らが時雨ちゃんの事を知らなさすぎたことを実感するばかりだよ。」
しかし、時雨は疲れが出ていることを隠していた。俺でさえ、ショッピングモールで彼女の首を至近距離から視認することでやっと発見できたレベルだ。ましてや、遠くから彼女を監視し、首に黒い線が浮き出ているのを発見するのは不可能だと言っていいだろう。ということは、相手は時雨がそもそも疲労が溜まっていて、破損していることを、知っていた事になるんじゃないか?
少しずつではあるが、頭の中に散らばった情報が、薄らと線で繋がれていく。
「…ねぇ春樹。今の僕のしみじみした言葉、聞いてなかったでしょ?」
そもそも、昴の話やマフィーさんの行動にも引っかかる点がいくつかある。当の本人達からするとそれがあくまでも自然な行動であったことは確かだが、第三者という俺の立場から見ると違和感を覚える。相手は巨大な組織であり、計画的な犯行であったなら、その時とった相手の行動がいくら何でも手際が悪く、欠点が多すぎる。精密に練られている訳でもなく、どっちかというと雑だ。それを安易に行動に移してしまうということは、案外相手は手練ではないのではないか?
「春樹…。」
ところで、この状況、俺達はどうやって時雨を助け出せる?俺たちはあくまでも、相手のテリトリーである地下へと潜入しなければならない。となると、身の安全は保証されない。身の安全…。
…ん?
ここで、俺は奇想天外な仮説を思いつく。
「誰の」身の安全だ?
俺はここからさらに思考スピードを早める。
…というか、そもそも俺達は大きな勘違いをしているんじゃないか?何故俺達は「助け出す」という思考に思い至った?それは浜辺で時雨が連れ去られたからだ。でも、それだけだぞ?俺達は時雨のことをよく知らない。そしてそれは、時雨の周りのことも知らないということだ。
もし、俺の仮説が正しければ…。
「春樹!!!!!」
しびれを切らした昴が、僕の頭にチョップを入れながら怒声を飛ばす。チョップの衝撃で、自分の思考と共に、自分の頭自体が揺れる。その影響で、俺の目が少し横へとズレる。この状況を静かに見つめるマフィーさんが目に入ってくる。…マフィー、さん?
「あ。」
俺が馬鹿みたいな声を出す。昴とマフィーさんは「え?」と馬鹿を見るような顔で俺を見る。一瞬の沈黙。俺には、その沈黙が心地よかった。
「この事件、何となくわかったかも。」
俺がまた、馬鹿みたいな発言をした。昴とマフィーさんは「え?」と馬鹿を見るような顔で俺を見る。そして再び一瞬の沈黙。俺には、その沈黙が心地よかった。
「少しだけ、昴とマフィーさんに質問させてください。」
俺が「何となくわかった」と口にした後、昴とマフィーさんは文字通り言葉を失っていた。そりゃそうだ。普通に考えると今の状態では情報が少なすぎるし、わからないことが多すぎる。そのため、真っ当な仮説など立てられない。ましてや立てれたとしても、それはその個人の妄想の域を出ず、現実に沿っていることは滅多にない。
ま、普通はね。
昴とマフィーさんが言葉を失っていたのは、俺が単なるバカ発言をしたからではなく、『普通じゃない俺が、今の情報量だけで、「何となくわかった」と言った』からだ。昴とマフィーさんは、内心は半信半疑にしろ、なんだかんだ言って俺の事を信用してくれている。
俺の予想(というか期待)通り、2人は俺の事をバカにすることなく、俺の方をただ見つめていた。「わかったってどういう事なの?」と昴に聞かれたが、俺にもまだわからないことがあるので、「説明はするけど、その前に質問してもいい?」と昴に返したところで、今に至る。
「まず昴に質問。相手を尾行してたんだよな?その尾行、何度か見失ったりしなかったか?」
昴は首を横に振る。
「いや、尾行自体は僕の完璧な尾行センスのお陰で、1度も見失うことはなかったはずだよ。」
尾行なんて今までした事ないくせに良く言うよ。俺は昴の発言を聞きながら呆れる。
すかさず俺は疑問を口にする。
「相手は誰にも知られることなく、名も知れない公園の地下に基地を作ったんだ。それが出来るようなやつが、なぜ俺達の尾行を許した?」
昴は、急な俺の発言に少し首を傾ける。
「そもそも、おかしくないか?相手は地下に基地を秘密裏に作ることが出来る組織。当然時雨を拐う時にだって計画を練ったし、情報を集めたはずだ。それは俺と昴の情報も、って意味だ。」
昴は頷く。
「なら、浜辺で時雨を拐ったら、俺と昴が後をつけてくる事なんて容易に予想できるはずだ。だから相手は、いくら昴の初めての尾行が上手いとはいえ、尾行を巻く工夫ぐらいはしてくるはずなんだよ。でも、昴の話を聞いている限り、相手は昴を巻く気が無いように思える。」
「…確かに春樹様の仰る通り、相手がプロの犯罪集団であった場合、誘拐の際に素人の尾行で追跡するのは不可能です。」
今度はマフィーさんが頷いた。
「え、ってことは相手はプロの犯罪集団とかじゃないってこと?」
「そうですね。その可能性は低いように思われます。」
「その点に関して補足すると、相手は昴に『隠していた地下の基地に入る所を見られている』わけだ。普通そんな事有り得るか?地下に基地がある事なんて、相手の隠すべき最優先事項だろ?」
俺の説明に自分自身も納得したのか、昴は安堵の息を漏らす。そう。相手がプロの犯罪集団じゃないことがわかっただけでも、こちらとしてはかなりの安心になるんだ。
「次に、マフィーさんに質問良いですか?」
自然な流れで、僕はマフィーさんに質問を振る。
「良いですよ。春樹様。」
相手もあくまで自然な反応を返す。
が、それも最後だ。
「マフィーさん、そもそも何で昴を助けることが出来たんですか?」
話は、「話せば話すほど、考えれば考えるほど、その前提が揺るがない物になっていく」ものだ。だから、嘘を混ぜるとしたら、「複雑になりそうな話の根本」の部分だ。いや、正しくはマフィーさんは嘘をついてはいなかった。ただ誤魔化そうとしていただけだ。一見不自然な行動も、周りのインパクトの強い不確かな情報に紛らせることが出来れば、わからなくなる。
「まさか、このマンションの管理人であるマフィーさんが『名も知れない公園』の近くをたまたま通りかかって、たまたま死にかけの昴を見つけて、たまたま助けた、なんて苦しい言い訳をしたりはしませんよね?」
ただでさえ、昴は相手を尾行していたんだ。素人とはいえ、相手だけでなく周りに尾行を気付かれないように気を配っていたことだろう。
「マフィーさんはこのマンションの管理人ですから、ここに住んでますよね?そしてその公園の周辺は住宅街。たまたま行くにせよ、わざわざそんなところに行く理由がないんですよ。」
俺のこの発言で、昴は察したみたいだ。恐怖のあまり、少し身体が震えているのがわかる。俺は相手を見極めるため、思っていることを口にする。
「マフィーさん、もしかしてその基地の組織の仲間なんじゃないですか?」
俺はマフィーさんをじっと見つめる。マフィーさんは驚く顔ひとつせず、ポーカーフェイスを貫いていた。が、マフィーさんは少し笑いながら今までとはニュアンスが少し違う言い方でこう言った。
「ご名答です。春樹様。」
昴の話を聞き、僕は驚いていた。何回もマフィーさんに視線を向けた。昴の口から出たそれは、到底信じがたい物だったからだ。公園は僕らがいたあの海からそう遠くない場所にあった。一見何の変哲もない、名も知れない公園だが、時雨を襲った犯人達は、その公園へと向かい、何らかの仕掛けを使い、その公園の地下へと続く道を開いた。 犯人達が地下へと降りて行ったあと、入口がまだ開いていたため、昴は単身でそこに乗り込もうとしたらしい。が、昴が入る寸前、扉が閉まり始め、危うく昴がその扉に押しつぶされそうになった所をマフィーさんが助けてくれたらしい。
「公園の地下に基地を作ってるってのが、もう相手の規模の大きさを物語ってるよね。そもそも、あんな所の公園に、地下へと続く道を作れるとか、どんだけ大きな組織なんだよ。」
昴は自分の見た信じられない光景に、ひたすら驚いている。俺は昴から聞いた情報を、頭の中で整理しようとする。が、情報自体のインパクトが強すぎるため、上手く細部まで気を配ることが出来ない。公園の地下に基地?いくら名の知られていない公園とはいえ、そんなところに基地なんか作ったらニュースになるはずだ。だが、俺が生きている間にそんなニュースはなかった。ということは生前か?いやそもそも、国がそんな事を許可するか?今の国家でさえ、地下に基地を作ったという事例は1度もない。なのに、それを誰だかわからないやつが基地を作ることを了承するだろうか?ということは、この件について国が関与していて、これが地下に基地を作る最初の事例だってことか?だが、俺の頭はすぐにNoという答えを返す。そもそも、地下に巨大な基地を作れるだけの技術や、強度のある物質がまだ発明されていない。家に地下室がある家はあるにはあるとは思うが、それらを作るのとは訳が違う。今の技術力では到底不可能だろう。
色々とわからないことが多い。ごちゃごちゃしているものを、一つ一つ取っては潰し取っては潰しを繰り返す。 このような単純作業は、俺の頭の中をよりシンプルにしようと働きかけてくれる。
そして、俺はやっと原点に帰ることが出来た。
「…なぁ、昴。どうして時雨が狙われたんだと思う?」
犯人らはスタンガンを所持していた。ということはやはり「計画的」な犯行であったことがわかる。スタンガンはロボットを無力化する方法として、様々な物がある中、1番安全かつ、外面に傷を残さない無力化方法だ。だがその分、至近距離からしか使えないので大抵のロボットは危険物を感知し、避けることが出来る。今回、時雨はたまたま首、手首、足首などに黒い線が浮き出るほど疲労が溜まっていて、破損も激しかったから、危険物を感知するセンサーが反応しなかったので「不意をつかれる形」になったんだろう。
「…僕にもわからない。ただ今は、僕らが時雨ちゃんの事を知らなさすぎたことを実感するばかりだよ。」
しかし、時雨は疲れが出ていることを隠していた。俺でさえ、ショッピングモールで彼女の首を至近距離から視認することでやっと発見できたレベルだ。ましてや、遠くから彼女を監視し、首に黒い線が浮き出ているのを発見するのは不可能だと言っていいだろう。ということは、相手は時雨がそもそも疲労が溜まっていて、破損していることを、知っていた事になるんじゃないか?
少しずつではあるが、頭の中に散らばった情報が、薄らと線で繋がれていく。
「…ねぇ春樹。今の僕のしみじみした言葉、聞いてなかったでしょ?」
そもそも、昴の話やマフィーさんの行動にも引っかかる点がいくつかある。当の本人達からするとそれがあくまでも自然な行動であったことは確かだが、第三者という俺の立場から見ると違和感を覚える。相手は巨大な組織であり、計画的な犯行であったなら、その時とった相手の行動がいくら何でも手際が悪く、欠点が多すぎる。精密に練られている訳でもなく、どっちかというと雑だ。それを安易に行動に移してしまうということは、案外相手は手練ではないのではないか?
「春樹…。」
ところで、この状況、俺達はどうやって時雨を助け出せる?俺たちはあくまでも、相手のテリトリーである地下へと潜入しなければならない。となると、身の安全は保証されない。身の安全…。
…ん?
ここで、俺は奇想天外な仮説を思いつく。
「誰の」身の安全だ?
俺はここからさらに思考スピードを早める。
…というか、そもそも俺達は大きな勘違いをしているんじゃないか?何故俺達は「助け出す」という思考に思い至った?それは浜辺で時雨が連れ去られたからだ。でも、それだけだぞ?俺達は時雨のことをよく知らない。そしてそれは、時雨の周りのことも知らないということだ。
もし、俺の仮説が正しければ…。
「春樹!!!!!」
しびれを切らした昴が、僕の頭にチョップを入れながら怒声を飛ばす。チョップの衝撃で、自分の思考と共に、自分の頭自体が揺れる。その影響で、俺の目が少し横へとズレる。この状況を静かに見つめるマフィーさんが目に入ってくる。…マフィー、さん?
「あ。」
俺が馬鹿みたいな声を出す。昴とマフィーさんは「え?」と馬鹿を見るような顔で俺を見る。一瞬の沈黙。俺には、その沈黙が心地よかった。
「この事件、何となくわかったかも。」
俺がまた、馬鹿みたいな発言をした。昴とマフィーさんは「え?」と馬鹿を見るような顔で俺を見る。そして再び一瞬の沈黙。俺には、その沈黙が心地よかった。
「少しだけ、昴とマフィーさんに質問させてください。」
俺が「何となくわかった」と口にした後、昴とマフィーさんは文字通り言葉を失っていた。そりゃそうだ。普通に考えると今の状態では情報が少なすぎるし、わからないことが多すぎる。そのため、真っ当な仮説など立てられない。ましてや立てれたとしても、それはその個人の妄想の域を出ず、現実に沿っていることは滅多にない。
ま、普通はね。
昴とマフィーさんが言葉を失っていたのは、俺が単なるバカ発言をしたからではなく、『普通じゃない俺が、今の情報量だけで、「何となくわかった」と言った』からだ。昴とマフィーさんは、内心は半信半疑にしろ、なんだかんだ言って俺の事を信用してくれている。
俺の予想(というか期待)通り、2人は俺の事をバカにすることなく、俺の方をただ見つめていた。「わかったってどういう事なの?」と昴に聞かれたが、俺にもまだわからないことがあるので、「説明はするけど、その前に質問してもいい?」と昴に返したところで、今に至る。
「まず昴に質問。相手を尾行してたんだよな?その尾行、何度か見失ったりしなかったか?」
昴は首を横に振る。
「いや、尾行自体は僕の完璧な尾行センスのお陰で、1度も見失うことはなかったはずだよ。」
尾行なんて今までした事ないくせに良く言うよ。俺は昴の発言を聞きながら呆れる。
すかさず俺は疑問を口にする。
「相手は誰にも知られることなく、名も知れない公園の地下に基地を作ったんだ。それが出来るようなやつが、なぜ俺達の尾行を許した?」
昴は、急な俺の発言に少し首を傾ける。
「そもそも、おかしくないか?相手は地下に基地を秘密裏に作ることが出来る組織。当然時雨を拐う時にだって計画を練ったし、情報を集めたはずだ。それは俺と昴の情報も、って意味だ。」
昴は頷く。
「なら、浜辺で時雨を拐ったら、俺と昴が後をつけてくる事なんて容易に予想できるはずだ。だから相手は、いくら昴の初めての尾行が上手いとはいえ、尾行を巻く工夫ぐらいはしてくるはずなんだよ。でも、昴の話を聞いている限り、相手は昴を巻く気が無いように思える。」
「…確かに春樹様の仰る通り、相手がプロの犯罪集団であった場合、誘拐の際に素人の尾行で追跡するのは不可能です。」
今度はマフィーさんが頷いた。
「え、ってことは相手はプロの犯罪集団とかじゃないってこと?」
「そうですね。その可能性は低いように思われます。」
「その点に関して補足すると、相手は昴に『隠していた地下の基地に入る所を見られている』わけだ。普通そんな事有り得るか?地下に基地がある事なんて、相手の隠すべき最優先事項だろ?」
俺の説明に自分自身も納得したのか、昴は安堵の息を漏らす。そう。相手がプロの犯罪集団じゃないことがわかっただけでも、こちらとしてはかなりの安心になるんだ。
「次に、マフィーさんに質問良いですか?」
自然な流れで、僕はマフィーさんに質問を振る。
「良いですよ。春樹様。」
相手もあくまで自然な反応を返す。
が、それも最後だ。
「マフィーさん、そもそも何で昴を助けることが出来たんですか?」
話は、「話せば話すほど、考えれば考えるほど、その前提が揺るがない物になっていく」ものだ。だから、嘘を混ぜるとしたら、「複雑になりそうな話の根本」の部分だ。いや、正しくはマフィーさんは嘘をついてはいなかった。ただ誤魔化そうとしていただけだ。一見不自然な行動も、周りのインパクトの強い不確かな情報に紛らせることが出来れば、わからなくなる。
「まさか、このマンションの管理人であるマフィーさんが『名も知れない公園』の近くをたまたま通りかかって、たまたま死にかけの昴を見つけて、たまたま助けた、なんて苦しい言い訳をしたりはしませんよね?」
ただでさえ、昴は相手を尾行していたんだ。素人とはいえ、相手だけでなく周りに尾行を気付かれないように気を配っていたことだろう。
「マフィーさんはこのマンションの管理人ですから、ここに住んでますよね?そしてその公園の周辺は住宅街。たまたま行くにせよ、わざわざそんなところに行く理由がないんですよ。」
俺のこの発言で、昴は察したみたいだ。恐怖のあまり、少し身体が震えているのがわかる。俺は相手を見極めるため、思っていることを口にする。
「マフィーさん、もしかしてその基地の組織の仲間なんじゃないですか?」
俺はマフィーさんをじっと見つめる。マフィーさんは驚く顔ひとつせず、ポーカーフェイスを貫いていた。が、マフィーさんは少し笑いながら今までとはニュアンスが少し違う言い方でこう言った。
「ご名答です。春樹様。」
「繋がりのその先で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
2.1万
-
7万
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
176
-
61
-
-
66
-
22
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
5,039
-
1万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
3,152
-
3,387
-
-
2,534
-
6,825
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
3,548
-
5,228
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
1,295
-
1,425
-
-
2,860
-
4,949
-
-
6,675
-
6,971
-
-
3万
-
4.9万
-
-
6,044
-
2.9万
-
-
344
-
843
-
-
76
-
153
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
1,863
-
1,560
-
-
3,653
-
9,436
-
-
14
-
8
-
-
108
-
364
-
-
2,951
-
4,405
-
-
2,629
-
7,284
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
88
-
150
-
-
51
-
163
-
-
2,799
-
1万
-
-
42
-
14
-
-
614
-
1,144
-
-
164
-
253
-
-
220
-
516
-
-
2,431
-
9,370
-
-
9,173
-
2.3万
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
4,922
-
1.7万
-
-
614
-
221
「SF」の人気作品
-
-
1,798
-
1.8万
-
-
1,274
-
1.2万
-
-
477
-
3,004
-
-
452
-
98
-
-
432
-
947
-
-
432
-
816
-
-
415
-
688
-
-
369
-
994
-
-
362
-
192
コメント