繋がりのその先で

Bolthedgefox

2-3騒がしい朝

「着いたぞ。ここがワシの家、『バルカル施設病院』じゃ。」

あれから20分くらい歩き、僕たちは大きな建物に着いた。そこは大自然の中に学校ぐらいの大きさの施設があった。辺りは暗いため今は何があるのかはわからないが、多分相当広いんじゃないだろうか⁇ここはまだ森の中っぽいけれど、こんなところにあるのか⁇

するとルヌフガは、ゆっくりとこちらを向き、「それも後で話す。」と言って、はぐらかされてしまった。なんなんだ⁇何かあるのか⁇僕は思考に意識を集中させた。
そうしていたからか、2秒後に来る上からの攻撃に僕は反応すらできなかった。
ドカッ。
「ウッ!?」と僕は上から降ってきた何かに押し倒され、コンクリートの地面で頭を強打する。
「だ、大丈夫か??」というルヌフガの声も虚しく、僕はそのまま気を失った。






「はっ!?」

暖かい日差しが僕の顔を照らし、外では小鳥が囀ずっている、心地よい朝。僕は半ば上半身の勢いで体が宙に浮くんじゃないかというほど飛び起きた。辺りはすっかりと明るい。

「...えっと。」

まず僕が第一に思ったこと。ここ、どこだ⁇
ええっと、なんで僕は寝ていたんだっけ⁇と必死に頭を回転させようと試みるも、起きたばっかりなのでまだ思考が働かない。とりあえず僕は辺りを見渡してみることにした。
まずドアの近くにキッチンがあり、収納棚、冷蔵庫、そして今僕が寝ていたベット。そして部屋の奥にはもう一つ、カーテンに仕切られているベットがあった。そして一番奥にでかい窓。よく外が見え、日差しもよく、快い景色が広がっている。...ここはどこかの二人部屋か⁇そう思った時、ふと記憶が蘇ってきた。あ、そういえば僕、ルヌフガに連れられて『バルカル施設病院』に来たんだった。玄関のドアを開けて入ろうとした...ところまでは覚えているんだけどな。そこからが思い出せない。僕はとりあえず起き上がり、ルヌフガかあの少女を探そうとベットを降りた時に気づく。
明らかな後頭部の痛み。これは別に後から誰かに事情を聞けばいい。そう思ってあまり気にすることはなかったのだが、問題はもう一つの方。さっきから聞こえて来る、謎の「スー、スー」という音。僕の脳が一つの解を導き出す。

「奥のベット、誰か寝てるんじゃないか⁇」

僕は見に行くか、見に行かずにそっと部屋を出るか迷った挙句、「看病してくれていたのだとしたら悪い」と思い、一声かけてからこの部屋を出ようと僕は音を立てないよう、慎重に奥のベットの方へと歩く。カーテンの前までたどり着いた僕は中の様子を伺う。が、やはりカーテンの外からでは中の様子がわからない。カーテンに手をかけ、ゆっくりと開けていく。僕はある一つの予想をしていた。僕の看病をしてくれたルヌフガが、疲れてここで寝たんじゃないかと。だが、僕の目に入ってきたのは僕を助けてくれた少女のパジャマ姿だった。瞬間、僕はカーテンを閉める行動へと切り替えたが、少女の寝顔に水滴がついていることに気がつき、手を止めた。

「泣いていたのか。」

何故だか全くわからなかったが、涙を拭って頭を撫で、「ありがとな」と一言かけておいた。僕はその場から静かに離れると、今が何時なのかを知るべく部屋から出てルヌフガを探すことにした。部屋を出る際に、「少女を一人にしておいても大丈夫なのだろうか」と一瞬動きを止めたが、「僕がいたところでどうにもならない」という結論があっさりと自分の中で出たため、せめて少女を起こさないようにとゆっくりと扉を閉めた。







部屋を出て真っ先に目に入ったのは、大きな窓の向こうに見えるものすごく広い庭だった。
草木は生い茂り、花は色合いのバランスがちょうど良く咲いていて、見ている人に印象深い華やかなイメージを与える。僕はその景色にほけぇ〜っと見惚れていたが、遠くから聞こえてきた音に反応し、ハッと我に返る。すぐさま頭をフル回転させながら情報収集を始める。窓から見える太陽の位置から今は真昼間だということがわかる。次に廊下を見渡す。僕が今立っている場所(つまり僕がさっきまでいた部屋の前)は、広い廊下の中央部分だった。廊下は南側が窓、北側が部屋になっていて、この廊下には『101』から『107』までの合計7部屋あることがわかった。ちなみに僕がいた部屋は104。「...なんでど真ん中なんだよ。」と内心思いながらとりあえず103に入ってみることにした。

「すみませーん、誰かいますか⁇」

「ひぇっ」

部屋に入った途端、女の子の悲鳴が聞こえた。視線は自然にその声の方へと向く。目の前の光景を見た瞬間、僕はノックをしなかったことへの後悔よりも、幻覚を見ているんじゃないかという驚きが先立った。僕の目に写っているのは、透明かつ巨大なガラス製の円柱型の中に青い液体と16歳ぐらいの女の子、いや違う、耳に特徴のある、いわば『エルフ』のような生き物が入っているというものだった。幸い、服(らしきもの)はきているみたいだ。

「...なんでいきなり入ってくるのよ!!おかげでザクレイルが割れるところだったじゃない!!てか、あんた誰っ!?」

彼女の怒鳴り声で僕はどこかに行きそうになっていた意識を取り戻す。なんなんだろう、朝からこんなに騒がしいのは初めてだった。なんでこんなことになったんだろう、僕はルヌフガを探していただけなのに、と思ったが、少し考えてみると入る前にノックをしなかった僕が悪いことに今更のように気がつく。やばい、究極に頭が働いていない。
てか、ザクレイルって何だ⁇

「ね〜あんた、私の話聞いてる⁇言葉が通じてますかぁ〜⁇」

ここでやっと僕は現状を把握する。この子、怒ってるのか。

「...あーごめんごめん、僕は昨日からここに泊まらせていただいてる者です。」

僕の言葉を聞いた途端、彼女は人が変わった。

「...あ、あなたが...あの。えっと、大丈夫だった⁇」

彼女はじっと僕のことを見つめている。僕の顔に何か付いているのだろうか。
というか、大丈夫とはなんのことだろう。

「今ですか⁇今は後頭部が少し痛むぐらいで。昨日の夜のことも思い出せないんですよね。気が付いたらもう朝になってました。」

それを聞いて、彼女は少しホッとしているように見える。何にホッとしてるんだか。

「...なかなか人が良さそうだけど、でも礼儀がなっていないわね。第一、ノックもせずに入ってくるなんて。しかもあんた、ルヌフガと同じ『人間』でしょ⁇」

あんたも十分に口が悪いよ、と心の中で思う僕。僕も何か反撃してやろうと思い、口を開く。

「君は若いのに、何故、畑仕事なんてしてるんだ⁇ ...ほほう。君はいつも子供達の世話をしているね。 君には兄がいる...が、今はもうここにはいないな。その他にも、料理ができない、運動は好きな方。そんな感じか。」

「...。」

彼女は驚いているのだろう。しかし、あくまでも顔には出さないらしい。負けず嫌いにもほどがある。彼女は僕を見つめ、観察しているようだった。

「...何者⁇」

やっと彼女が口を開く。

「...僕⁇僕はただの記憶喪失者だよ。僕は今ここにあるものだけで判断したまでだ。」

彼女にバレないように僕は心の中でドヤ顔をする。少しは僕のことをバカにするのをやめようという気になってくれたかな⁇ 僕が優越感に浸っていると、急に後ろのドアが開いた。

「お主、なかなかやるのぉ。何故わかったのじゃ⁇」

この声はルヌフガか⁇僕が振り向くと、そこにはルヌフガが立っていた。
あれ⁇でも何か、違和感があるような。
一瞬僕は思考に浸る。
...あぁなんだ、そういうことか。

「簡単なことだよ。まず彼女の手足のむくみ、何よりも奥に置いてある農作業用っぽい服で何日かに一回畑仕事をしていることがわかる。棚や机に置いてある本の対象年齢があまりにも低いことからは毎日子供の世話をしていること、赤と青のマグカップからは兄的存在が身近にいたこと、筋肉のつき方からは運動好きなことがわかる。まぁあくまでも全部予想だけど。」

彼女は無言だった。なので僕は話している途中に気づいた、もう一つのびっくりするようなことをいうことにする。

「あと、昨日よりも身長が2cm高いよ、ルヌフガさん。いや、No.717さん。」

僕は部屋にいた女の子が謎の円柱型の容器に青い液体が満たされた中で悠々と喋っているのを見てから、今この時代は『なんでもあり』なんだと理解した。だからどのような原理を使ったのかはわからないが、後ろに立っていたのがルヌフガではなく、僕を助けてくれた少女だという可能性を考えることができた。僕の後ろにいた老人も、今は可愛い少女になっていた。

「どうして私だってわかったの⁇」

少女の問いに、僕の心は少し揺れる。

「朝起きた時、寝息が聞こえて、君が奥のベットで寝ているのを見つけて、その時に泣いていたから涙を拭って頭を撫でたりしたから、その時の君の顔が印象深くて...」

少女は僕が言い終わる前に赤面しながら、「ル、ルヌフガを呼んでくる」と言って部屋を出て行った。キョトンとしている僕を、円柱形の容器の中の少女は「やれやれ」と呆れながら見ていた。

「繋がりのその先で」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く