繋がりのその先で

Bolthedgefox

1-4テスト明け


教室の空気が酷く重い。周りのクラスメイト達は、時間が過ぎるにつれ顔色が悪くなっている。時計の秒針が頂点を通り過ぎ、同時に地獄の始まりを知らせるチャイムが教室全体を包んだ。一部で悲鳴があがる。そんな中、一際目を輝かせながらその時を待っている人、否、ロボットが2人いた。そう。今日のこの時間に、先週に行ったテストの結果が返却されるのだ。...そんなに楽しみなのか、と表では興味が無さそうに呆れ顔で待っているが、俺は早く返してくれと心の中で先生を急かす。正直、俺はそこまで興味があるわけではない。が、時雨さんがどこまで賢いのかが少し気になったのだ。

少ししてから、先生が教室に入ってくる。...この先生も先生で、テストの結果の返却方法が半端ない。とりあえずと言わんばかりに、黒板にクラス全員の成績を順位順に並べたものを張り出し、それから個人の成績表を個別で返していくので、周りの成績がどうであったかなどが容易にわかってしまう。だから、成績が低い者はその日から何週間か、話のネタにされてしまう。それはごめんだ、と俺は(約1日)猛勉強した結果、今に至る。

「...。」

「...。」

「...。」

俺、昴、時雨さんの三人は無言である一点を見つめていた。

「それでは、今回のテスト結果を発表します。」
先生がバサッという音と共に、成績表が黒板に張り出される。俺と昴と時雨さんは真っ先にその紙の上部分を見た。

「...えっと、、、」

俺は結果を見て、驚愕の事実に目を疑った。
俺は言うまでもなく1位なのだが、しかし、『同率1位』だったのだ。正確に言うと、俺と時雨さんが同率1位で、昴が3位だった。昴と俺達の点数の差がわずか3点差であることにももちろん驚いたが、1番はやはり、時雨さんが俺と同じ点数を取ってきたことだった。俺はテスト前日に珍しくテスト勉強をした。だからいつもよりも点数が高いはずなのだ。しかし、昨日この学校に来た時雨さんが同じ点数を取るのは正直信じがたいことだった。
横を見ると、昴が何とも言えない顔で悔しがっている。...そりゃ、3点差だ。一問のミスで俺や時雨さんと同じく1位を取れていたのだから。こりゃあ今日一日、無口になるんじゃないだろうか??そう思ったが、意外にもこの三人の中で一番早く言葉を発したのは昴だった。

「...クソっ、あと2問合ってたら二人に勝てたのに。悔しいや。」

...こいつ、時雨さんは置いといて俺に本気で勝とうと思ってたのか。俺は内心ヒヤッとするが、その気持ちが昴を成長させていくんだなと思い、心の中で小さく「頑張れ」と言ってやった。ちなみに昴のこの発言を聞いた時雨さんはというと、

「...まさか、昴さんに勝って春樹さんと並べるなんて思ってませんでした。...良かった。」

と、言葉では安堵の息を漏らしている。が、俺には時雨さんが自分の手を強く握りしめているのが見えた。多分、時雨さんも悔しいのだろう。二人の様子を見て、俺がまとめるような一言を言った。

「まー、いつも昴には結構な点差つけてるのに、今回は3点差まで縮められるわ、時雨さんには追い付かれるわで、悔しいのは俺も同じだ。ま、テストは次もあるんだ。今回は皆頑張ったってことで。」

「...そうですね、一応私たちで上位3位を占めてるわけですし。」

「...そーだね、次は絶対勝つよ。」

時雨さんと昴の目がいつも通りに戻った。...俺は二人に『1位は1位で辛いんだぞ??』と言ってやりたかったが、それを言わないのも1位としての礼儀だと心に言い聞かせ、言うのをやめた。

「...あと重谷は放課後、私のところに来い。」

長々と喋っていた先生の口から、俺の名前が聞こえ、俺は「え、俺、何かやらかした?」と思い、慌てて先生の顔を見るが、見た感じ怒っているようではなかった。ただ、不思議そうな顔というか...。
が、先生が教室から出ていってしまったことと、そんなことを考えていたところに昴と時雨さんが話しかけてきたことが重なり、そのことをあまり深く考えようとはあまり思わなかった。すぐに思考を切り換え、話に入っていく。

「...それで、今は3時間目だから昼休みに三人で集まって、願い事を言おうってことになりました。」

時雨さんが丁寧に説明してくれていたんだろうけど、俺はその話を8割聞いていなかった。

「...あぁ、了解です。」

何故かメールなどで使う言葉を言ってしまった。チラッと時雨さんの顔を見ると、「私の話聞いてなかったな、この人」というのが伝わってくるぐらいの呆れ顔をしていた。俺は心の中で謝りながらも、「お昼にあつまるんですよね??」とギリギリ聞いていた部分を確認する。それを聞いた時雨さんの表情が、少しだけ穏やかになった。

「そうですよ??本当、しっかりしてくださいね??」

だが言葉は鋭かった。

「...ごめんなさい。」

多分、今の俺の状況も時雨さんには読まれているんだろうな、と内心思いながら俺は時雨さんに謝った。内容はある程度は理解していても、やはりちゃんと聞いていなければ相手に失礼だなと思ったからだ。
今度はにっこりと笑い、時雨さんは自分の席に座った。

「...はぁ。」

とりあえず無事にテストが終わったことに俺は深い一息を吐く。まぁ結果がどうであれ、人生が明日で終わるわけではない。とにかく今は先生の呼び出しがどういう用件なのかについて考えよう。そう思った時、ふと俺は気づく。

「...何で先生は教室を出ていったんだ??」

心の中の独り言がつい口に出てしまった。

「そういえば、そうですね。まだ三時間目始まったばかりなのに、何故でしょう??」

俺の独り言に、当たり前のように時雨さんが入ってくる。...一人で考えたいところだったが、友達の少ない俺にとってはありがたい事だった。
ここで俺はあることを思い付く。時雨さんの学力が高いのはさっきわかった。そして俺への洞察力も凄いことがわかっている。だが、それ以外はどうなのだろうか。例えば、時雨さんは昴に対してはあまり鋭い洞察力をみせていない。
...少し、ためしてみるか。

「...トイレに行ったとかですかね??」

俺はごく自然に聞いてみる。が、俺は先生が教科書やその他もろもろを持って出ていくのを見ているので、トイレに行っているのではないことはわかっていた。

「それはないと思いますよ。教卓には先生が持ってきた教科書やその他の荷物が置いていないじゃないですか。ということは、持って出ていったということ。なので多分職員室に戻ったんじゃないですか??」

...俺が思ったように返してくる。

「職員室に戻ったってことは、もうこの時間は自習ってことなのかな??」

これは多分、正解だ。テスト明けということもあるし、流石に偏差値がバカ高い高校でも、ちゃんと休憩はあるのだ。
少し考えた後、時雨さんは答えをだした。

「...多分、そうなんじゃないですか??私はこの学校に来たばかりなのであの先生のことをよく知りませんが、基本的にこのような偏差値が異常に高い高校でも、休憩はあると思うので、先生が鬼のような人ではなければ自習だと思いますよ。」

...俺は時雨さんに尊敬の目を向けた。ここまで俺と同じ考えを持った人がいなかった(昴とは常に対立した意見を持っていた)ので、俺は心の中で多いに喜んだ。

「...時雨さん、やっぱり凄いんですね。」

その一言を聞いた瞬間、彼女は全てを察したようだ。少し赤面してから、時雨さんはまたしても少し怒った表情になり、

「わ、私をからかってたんですか!?本当は予想も出来ていたんですか!?」

と俺に問い詰めてくる。

「あ、いや、悪気はなくて。あの、もう少し時雨さんのことを知っておきたくて...」

時雨さんの顔がだんだん赤くなっていくのを見て、俺は言葉を止めた。あっ、いや別にそういう意味で言ったんじゃないんだけどな~。時雨さんの様子を見ていると、俺まで少し照れてしまう。

「...そ、そうですよね!!少し前に来たばかりですし!!ほとんど初対面みたいなものですし!!」

手で顔を隠しながら、時雨さんは裏返りそうな声で言う。
...ん??今何かおかしくなかったか??

「でっ!!その、私の予想は合ってたんですか!?」

疑問を頭の角に移動させ、まずは時雨さんを落ち着かせることに専念した方がいいと判断した俺は、思い付いたことをそのまま口にする。

「多分合ってますよ。俺も予想してたんですが、俺が考えていたのと全く一緒でし...」

...全く一緒??

そこまで言い終えた俺は、別の予想が頭に浮かぶ。...おい、まさか先生が呼び出した理由って。

「そーだったんですか!?よ、良かった~。」

時雨さんは急に力が抜けたように、机に身を任せた。それを見て、俺は二重のため息をついた。

























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