運命には抗えない

あぶそーぶ

ep.if 16話 真正の悪魔

「構うな、続け!」

 硬直するアネモニーに言うヴァルキリー。今も尚高笑いを続ける海賊に2人同時で切りかかる。

「ハハハ、遅いぃ!」

 音速にも迫る速さの斬撃を簡単にいなしてみせた。

「これが天使の力!神の啓司!お前らのような下衆には到底辿り着くことのない領域!」

 自身の力に酔いながら話す間にも数え切れない程の剣戟が繰り広げられていた。だがやはりそのどれもがいとも容易く受け流されていた。

「さて、いい加減うるさいな。そろそろ静かにしてもらおうか!」

 サーベルを振り払い幾度も攻撃を繰り出していた二人を同時に吹き飛ばした。二人が体制を整える前に彼は武器を振り下ろす。

 そう思われたが、直後片膝をついた。彼自身は何が起こったか分からないようだった。

 逆に二人はその訳を理解していた。今彼の後ろに立つ人影、それが海賊に片膝をつかせたのだろうと。

「クソ、誰だァァァ!」

 無闇にサーベルを振り回し出す海賊。無闇と言ってもそこらの軍人では手も足も出ないほどではある。

 だが、人影はその剣の嵐を掻い潜り確実に海賊に傷を負わせていった。その事実に海賊は焦りさらに剣は乱れ、人影の攻撃を確実なものへとしていく。

 もはや勝負はあったかと誰もが思った時人影は正体を現した。

 2メートルは越えようかという体躯、それはさながら鬼のような高身長で、右手に大剣を持つ大男。

 ヴァルキリーが見ればスミスだとひと目でわかる容姿だった。しかしそれは彼女の知っている姿ではなかった。

 なぜならその背には黒々しい悪魔のような羽、その頭には捻れ曲がった巨大な角があったからだ。

「スミス、卿、、、なのですか?」

 震える喉でどうにか伝えたいことを伝えるヴァルキリー。それに対し一言だけ応えた。

「ああ」

 迷いなく答えたその声に彼女は何を思ったのだろう。

 恩人が人間ではなかったのだと悲しんだのだろうか。

 それとも助かったと思ったのだろうか。

 いいや、そのどれともないだろう。

「オレが相手だ。今度は本気で行かせてもらう」

 彼女はただありがとうと感じるだけだった。








 気づいている方もいるかもしれませんが、今回のタイトルは前回のタイトルと比較して付けました。

 だからと何か意味がある訳ではありませんが、、、。

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